The Maid (A Molly the Maid mystery)
- HarperCollins (2022年1月20日発売)
- Amazon.co.jp ・洋書 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9780008435721
感想・レビュー・書評
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別の著者による同じタイトルの作品で、Netflixのシリーズになっている本(こっちはメモワーで、タイトルは”Maid”と冠詞無しのもの)も気になっていたんだけど、こっちの”The Maid”を本屋で見かけて「表紙の緑色が綺麗だなぁ」と思って覚えていたのと、友達が「次はこのオーディオブックを聴くつもり」と教えてくれたことから、私もこっちを聴いてみることに。どうやら、この著者のデビュー作にして、今年の期待作として注目を集めているみたい。
ハイエンドなホテルの清掃を担当するメイドである主人公Mollyは、周りからは変わり者と思われているけれど、一番の理解者である祖母と2人で質素ながらも幸せに暮らしていた。でも、そんな祖母の死をきっかけに一人ぼっちになってしまった彼女。人の気持ちを汲むのが苦手で、頭に浮かんだことは咄嗟に口に出してしまうし、潔癖なところや自分なりの固定観念もあるMollyは、職場のホテルでも一握りの心優しい従業員以外には陰で”Robot” “Freak”と呼ばれ、邪見にされる存在になってしまっている。そんな中、Mollyの清掃担当のスイートルームで、ホテルのVIP顧客である裕福な男性が死体となって発見され、彼女が第一発見者となってしまったところから、彼女の人生が大きく変わっていく。
どこかでこの本が”Crime & Thriller”や”Comedy”のカテゴリーに属しているのを目にしたけど、どっちでもないと思う(笑)周りとは違う、というだけで他人からレッテルを貼られ、そんな彼女を自分より劣っていると決めつける人達から虐げられていた彼女が、本当の意味で彼女を尊重し理解する優しい人達の助けを借りて、自分という存在を再発見し、居場所を見つける…という、1人の女性の心の成長と、人に優しくすることの素晴らしさ、そして他人を知った気になってその人の何もかもを簡単に決めつけてしまうことの愚かさを描いた本だと思う。なので、たとえ作中で人が殺されようと、これはヒューマンドラマ的作品だし、聴き終わった後に優しい気持ちになれる本だった。といっても、Mollyが弱いだけのキャラクターとして描かれているかといえばそうでもなく、密かに(というかかなりオープンな態度で)想いを寄せている同僚バーテンダーに積極的にアプローチするし、人にどう思われるかを気にせずに言いたいことは発言するし、そんな彼女のあれこれにハラハラさせられたりするんだけど(ナレーターの朗読がMollyのキャラクターを良い感じに演じていて◎。全体的にこのナレーターがいい仕事をしてた)。この本を通して、少しくらい人と違う言動を取っていたとしても、一人一人にその人なりの良さってものが必ずあるはずだから、変わった部分を鼻からマイナスフィルターを通して見る代わりに、そのユニークな点をプラスな視点で見られる人間になりたいなぁと思わせてもらった。そして、何度か作中でMollyの祖母が言っていたセリフとして登場する”Everything will be okay in the end. If it’s not okay, it’s not the end”という言葉は、以前何回かどこかで耳にしたことがあるけれど、改めて良い言葉だなぁと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
No wonder it won The Goodreads Choice Award for Best Mystery/Thriller. The Main character, Molly is just fascinating, so you will like her for sure. A film adaptation of the novel was announced. Yes, you cannot put it down until you finish reading!
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Audible。ナレーターはLauren Ambrose。
NY Timesのベストセラーリストに入るなど話題の作品で、洋書ファンクラブでも好意的に取り上げられていたので購入。
主人公のMollyは、はっきり言及されないもののおそらく自閉スペクトラム症で、「人とは違う」ことで誤解されがち。愛情深い祖母にアドバイスを受けながら暮らしていたが、祖母が亡くなって心細い一人暮らしをしている。ルールがしっかり示されているホテルのメイドの仕事は大好きで、誇りを持って働いているが、ある日長期逗留中の富豪が殺害されて、第一発見者のMollyの態度が不信感を招いて容疑者になってしまう…。
自閉スペクトラム症なのかな、と思われるような主人公が、実は気づいている以上に周りに好かれていて、といった小説を最近いくつか読んで、どれもよい話だけど主人公が完璧すぎ?というか、定型発達ではないから失礼なことを言ってしまったり想定外に人を傷つけてしまったりすることはあるけど、悪意とか妬みとかとかが全然ない人ばかりで、いや発達障害があってもなくても誰でもちょっとくらいずるい弱いところはあるし、それでいいでしょ、という気がしてちょっと気になってきてしまいました。定型でない主人公が増えていけば、もっと複雑なキャラクターも増えていくのかなとは思います。
とはいえ、面白いミステリーかつ心温まる小説で楽しく読みましたが。 -
いや、面白いよ。結構捻るし。ただねえ、最近読んだだけども「はっきり言わないけど発達障害のステレオタイプ的な”ちょっと人と違う”人物が初めは偏見から辛い目に合うけど徐々にその強みを生かして最後には真の友人・恋人に出会う」的な話2、3冊あって…。あまりに同じタイプの人物描写なんで「いやASDの人みんなこんな感じじゃないですからああああ!」と全力で主張したくなります。話は面白いんですけどね。