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Amazon.co.jp ・洋書 (100ページ) / ISBN・EAN: 9780008532819
感想・レビュー・書評
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どうしても数年前に生じた一連の盗作、詐称、虚偽にまつわる事件を思い出す。
研究論文・データの捏造・偽造、現代音楽作曲家のゴーストライティング、経歴職歴学位を詐称してニュースなどに出演していたコメンテーターなど…
このひとたちに起きた事も、ひょっとしたら日常の中で生じた大きな事象を小さな意図で掴んだことに起因してしまったのではないか、と。
主人公June(白人女性)もまた同じく、「優秀で成功している美人のアジア人」作家の友人に起きた事故を契機に盗作に手を伸ばしてしまう。
盗んだ作品のテーマが第一次大戦に巻き込まれ、参画を余儀なくされた中国人労働者階級(苦力)移民の物語となる。
June自身にはアジア系、中国系とのバックグラウンドはない。旅行さえしたことない。
作品が成功するにつれて情緒的連帯、共感と親密といったアイデンティティを「創作」し、その創られた仮面を基に話し、感じ、振る舞わざるを得なくなる。
この仮面ももちろん、友人から「拝借」したものでしかない。
出版社、映像制作プロダクションとの折衝、大学での講師活動、アジア人作家協会での講演などなど活動をこなすうちに、虚像としての仮面が成長する。
およそこの高度資本主義社会において、移民大国において、アイデンティティ(社会・経済・情緒全て)の分断が生じている時代で、自ら作り上げたはずの仮面は、営利・非営利、個人・集団を問わずさまざまな主体との関係性の中で肥大化してゆく。
全てが借り物の肥大した虚像は簡単に崩れうる。
アジアフェティッシュ批判、ホワイトウォッシュ、人種差別とそのカウンター。
彼女にとって借り物で競走するにはテーマがあまりにも複雑に、相互に与え与えられる影響は大きすぎていたかもしれない。
守るためには徐々に猜疑心を強めるしかない。
いつしかJune自身は盗作の加害者たる罪悪感よりもむしろ、人種差別をめぐる被害者としての意識の方が強まってしまう。
P.147 I am the victim here.
現実世界で露見したあのひとたちも、ひょっとしたら、同じようなことを、同じように体験していたのだろうか…
そして、そういうひとたちの罪とは、いったい何だったのだろう。
June はと言えば、本来は読書が好きで、書店が好きで、物語を書くという行為が「生きること」そのものだった。(引用.ページ数忘れ)
それは姪に対して、スマホ依存、tiktok中毒のバカ女になるより本好きになってほしい(P.165〜 iPhone addict TikTok obsessed bitch 〜)と願ってしまうことにも顕れるし、何よりも P.318 I am innocent.my only sin is loving literature too much.というこの本最大の苦虫潰し顔にならざるをえない履き違えてしまった罪悪感に現れる。
このJuneの語り口からは確かに純粋に読書好きである一方で、しかしやっぱり本を読まないひとたちや本好きを理解しないひとたちへのうっすらとした小馬鹿にする態度と、成功している(と感じさせる)ひとたちへの劣等感も感じさせるし、これは原初的には妹(優秀で仕事に恵まれ家族もいる。
そして本は読まない)や母親(読書好きや作家になりたい夢に否定的)、早期に亡くしている父親対象の不在といった源泉を見出せる。
しかし、June自身も本当はものすごく優秀で魅力的なはずなのだ。自分自身の能力・魅力をうまく使うことができなかった女性と言えるかもしれない。
そして、このことは、あのひとたちにも生じていたことなのではないか?
元来は純粋に研究が好きで誰かを助けたいと、音楽が好きで世界を変えたいと、スピーチや会話が好きで誰かを喜ばせたいと、感じていたのではないか?
現在、あのひとたちは今、笑顔を取り戻せたのだろうか?
さらに言えば自分はどうだろう。
本を読まないひとたちをうっすら下に見ていないだろうか?
洋書をオーディブルで「読む」というひとたちのことをうっすらと(時として明らかに)認めていないのではないだろうか?
このような自分の偏狭さは、外国の文学を原書でもなるべく読む、世界のさまざまな物語に触れるという「多様性に触れ、洗練された教養で共感する(恥)」みたいなものとは逆向ではないか?
そして自分に課したスローガンの背景に、やはり、劣等感と羨望、嫉妬と軽蔑が、奥底で蠢いているのではないか。
こんなことを思ってしまう。
本邦未邦訳なので誠に勝手ではございますが邦題を付けさせて頂くとしたら『黄色の仮面』ではいかがでしょう。
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不愉快だけど気になる本でした。
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