Girl Who Loved Wild Horses, The
- Atheneum/Richard Jackson Books (1982年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・洋書 (32ページ)
- / ISBN・EAN: 9780027365702
感想・レビュー・書評
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胸が締めつけられるくらいにこのPaul Gobleという作者の絵がすばらしい。色鮮やか。太陽に使われている朱色がとくに効いている。
ネイティブ・インディアンの衣装やテント、蝶や月や草花の色もいい。そして何と言っても動物。バッファローや馬の躍動感といったらない。
本書は馬と人間の女の異類婚姻譚。
柳田國男の「遠野物語」の”おしらさま”にちょっと似ている。
馬といるのが何より幸福な少女が、馬とともに遠出をした日、嵐から逃れるようにして駆けていくと、白い斑点のある野生の雄馬と出会う。
いったん村に戻りはしたものの、その馬が恋しいがため少女は病気になってしまう。
仕方がなく両親や村人たちは彼女を野生の馬たちがいる場所へと送り出してやる。
その後も少女は定期的に村に仔馬を連れて戻ってきていた。
しかしある時その習慣も途絶えてしまう。その少女がすっかり馬になったことが終わりに示唆される。
たしか”おしらさま”では、すでに馬と契りを結んだ(タブーを破った)娘に激怒した父親が、馬の首を斬ってしまう。それで馬と娘はともに空に上がっていくという展開だったと思う。
どうなんだろ、文化人類学的に見たら、「野生の馬」と「家畜化された馬」という違いが重要になってくるんだろうか。
野生の馬というのはたぶん外部の集団のメタファーだ。
一方、家畜化された馬というのは家族や自集団のメタファー。
異類婚姻譚はしばしば自然の恵みや豊穣を暗示するが、同じ馬との婚姻譚でも、前者にはあまり抵抗がなく、後者にはあるというのは、集団の内か外かが多かれ少なかれ関係してるのかも。もちろん、その他の環境条件などもあるから一概には言えないけど。
ところで本書の最後のページにはナヴァホやスーの馬にまつわるこれまたすばらしい歌が2つ掲載されている。詳細をみるコメント0件をすべて表示