シンガポール建国の父、91歳 2015年没。本書ではシンガポールという国をどういう理念で作ったかを、回想と雑感を交えて率直に語っている。
汚職をさせないために役人の給料は高くする、貧しい住民を団地に移住させ近代化をはかり、批判は許さないなど、反発を招くカ技を連発してきた。 民度の低い国民を育てるために、建国の父は厳しい躾が必要だったのだと言う。
シンガポールは華僑がマレー人の上位にたつ植民地であり英国連合のー員で、独立時60年代の立位置は微妙であった。マレーシアとの摩擦、水の確保、駐留英軍引き揚げ後の軍事の問題など、建国から生存の難しい事態が続いた。そして開かれた国として繁栄させるべく、現代までの大決断を繰り返した歴史は大河ドラマのようだ。
国をグローバル化して競争力をつけるため英語を公用語としながら、母国語で育てたほうが文化伝承を伴って子どもの人間形成にはよい、と正直なところを述べている。自分の息子は中国語で教育、あとでやはり英語教育を受けたほうが学業や仕事では有利であったろう…、と言う。国の大方針を決めるにあたり、葛藤はしても妥協無く決断してきたリー・クアンユーの人間らしさがこんなエピソードにあらわれている。 批判も多いが魅カ的な人物だったのだろうと思う。
シンガポールという位置から世界を見渡した各国への感想や意見は新鮮だった。英語の本だが読みやすい文で書いてあるので、中学英語でも大体は読める。