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本 ・洋書 (515ページ) / ISBN・EAN: 9780099134015
感想・レビュー・書評
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ジョン・グリシャムの代表作というと、やっぱりこの本なんだろうと思うので、読んでみた。少なくとも、映画化された彼の作品でおすすめは?という問いにはたぶんこのタイトルが一番最初に挙げられると思う。
映画はずいぶん大昔に見たが、何かが火事になってマシュー・マコノヒーが慌てているシーンがウッスラ思い出されるくらいで、どんな話だったかは全く記憶にない。なので、ほぼまっさら状態でかなり期待して読んだ。
うーん。
私の中ではこの本はグリシャムの一番ではないなぁ。
人種差別がまだ残るミシシッピーの片田舎の町で、10歳の黒人の少女が地元の白人2人に暴行されて死にかけ、怒りに燃えた父親が2人を計画的に銃殺、主人公の若い弁護士ジェイクがその父親の弁護を引き受けて無罪判決を勝ち取ろうとする、という話。
冒頭、幼い子が暴行を受けるシーンは本当に辛いものだった。
10歳の子をレイプ?まさか?と思うけれども、現実にそういうことはある。先日見たNHKの沖縄の米軍基地に関するドキュメンタリーが思い出された。特に返還前は多くの米軍による暴行事件(レイプに限らず)が裁かれず闇に葬られたというドキュメンタリー。小さな女の子の爪の間に土がいっぱい入っていて、地面をかきむしっていたのがわかる、という証言があったのが胸をかきむしりたくなるほど辛く、忘れられない。
犯人が許せない気持ちはとてもわかる。
それでも、この小説の中で娘のために復讐を果たした父親に対しては、どうしても私は無罪とは思えなかった。
ましてこの本では、無罪どころか「ヒーロー」と称える人が多くいて、最後までひっかかった。
白人が黒人を殺しても、その逆ほどのインパクトはなく、有罪となったとしても数年で赦されて釈放されるという見通しが父親には許しがたく、二人を殺害するに至るわけだけど、だからと言って、ヒーローって・・・・
みな当然のように「俺もそうする」と父親をほめ称えていることに違和感しかなかった。判決で無罪になった後に復讐する、とかなら分からなくもないのだけれど。
銃撃の巻き添えを食ってエライことになった警察官(本当にエライことになる)までが彼のことをヒーローとし無罪を望む。
その警官に父親は涙を流して謝罪し、謝罪された警察官はまったく気にしていないようにあっさり受け入れるのだけど、彼の負った傷の深刻度を思うと、そんな楽しい和解はありえない気がした。相手の無罪を応援するどころか、激烈な銃規制運動家になってもおかしくないレベルの被害だと思うのだけど。
この警察官だけでなく、脇役はみんなこの事件のおかげで大変な目に遭うのだけど、なんかエライ目に遭うだけ遭って物語はそのまんまスルーしていくので、読んでいてすごくストレスがたまった。元秘書とかミッキーマウスと名乗る謎の人物とか気の毒すぎるよ。
フィクションなんだから、もちょっとそのあたりうまく納得いくように回収してほしかったなぁ。
程度の差はあれ、アメリカは銃を手にして人を殺害するということにあまり抵抗感がないのだな、とアメリカの小説を読んでいるといつも思うことをまた思った。
この、手段を問わず復讐は正義とする考え方、ご都合主義も含めてイスラム過激派と同じ価値観じゃないか、などとつい思ってしまうのだけどな~。
しかし、いろいろもやもやするけれども、グリシャムにはやはりぐいぐい読んでしまうおもしろさはあります。
夜、バイトの美人大学生を連れて町外れにある隠れ家的ダイナーに行くシーンには魅了されてしまった。読んでいてとてもおなかがすいた。車をとめたときに店内から聞こえてくるピアノの音。大騒ぎしている他の常連客。肉々しくて油ギッシュな南部料理。
うらやましすぎる。私もイケメン上司からそういうご褒美をもらいたい。イケメン上司なんかいないけど。
仕事はあるけれどもキャリア志向ではない美しい妻と、一見従順そうだけど、フェミニストでノーブラで、きっと鼻っ柱は強い(と主人公の弁護士がひそかに観察している)女子大生との対比もおもしろかった。ナンシー・レーガン対ヒラリー・クリントンみたいな単純な感じじゃないところがリアルでおもしろい。ジェイクが自分の妻について、自分のキャリアにあんまり興味ないところが気に入った点、と言い切るあたり、今では逆に新鮮に感じますね。
主人公のジェイク自身はそんなに魅力的なキャラではなかった。
たぶんマシュー・マコノヒー演じる映画の中のジェイクの方が魅力的に描かれているのではないだろうか。もう一度見たいな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
法廷もの。10歳の娘がレイプされた復讐に2人の若い白人男性を射殺した黒人の裁判を巡って様々な出来事が起こる。OJシンプソン事件を思い出させた。数年前私自身オーストラリアの法廷で陪審員をやった経験があるのだが、その時に法廷とは事実がどうのよりいかに陪審員を丸め込むかで判決が決まるものだと思った。この物語もまさにその通りのことが書かれていた。オーストラリアとアメリカの裁判制度を比較しながら興味深く読んだ。
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