The Summing Up

  • Vintage Classics
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  • Amazon.co.jp ・洋書 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780099286899

感想・レビュー・書評

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  • サマセット・モームの「サミングアップ」。

    昔は「要約すると」というタイトルで出ていたので、そちらのほうがなじみが深い。といって中身を知っていたわけではなく、読むのは今回が初めてである。

    昔は大学受験で、この本の英文が良く出ると言われていて、それでタイトルを知っていたわけであるが、たしかに、そんなに凝った英文ではないものの、しかし、そんなに易しくもない。

    私の場合は辞書を引き引きだからいいけれども、試験でこんな文章を出されて、短い制限時間のなかで答えろとなると、さすがにつらいだろうなと思う。そう考えると、大学受験の英語のレベルは相当高いと思う。

    たとえば次のような文章は、いくつかの単語は注がいるだろうけれども、そこまで難しい単語は使っていないし、ややこしい文法もない。

    And yet, though I have read so much, I am a bad reader. I read slowly and I am a poor skipper. I find it difficult to leave a book, however bad and however much it bores me, unfinished. I could count on my fingers the number of books that I have not read from cover to cover. On the other hand there are few books that I have read twice. I know very well that there are many of which I cannot get the full value on a single reading, but in that they have given me all I was capable of getting at the time, and this, though I may forget their details, remains a permanent enrichment. I know people who read the same book over and over again. It can only be that they read with their eyes and not with their sensibility. It is a mechanical exercise like the Tibetan’s turning of a praying-wheel. It is doubtless a harmless occupation, but they are wrong if they think it an intelligent one.
    (The Summing Up, ch.25, p.89)

    (試訳)
    わたしはたくさん本を読むけれども、悪い読み手である。わたしは読むのが遅い。めったに飛ばし読みしない。どれだけひどく、どれだけ退屈な本であろうと、読み通さずにはいられない。最後まで読まなかった本は十指に満たない。

    一方、二回読んだ本はほとんどない。一回読んだだけではその価値を十分理解できない本がたくさんあることはよくわかっているけれども、そのときわたしが得ることができるものを与えてくれたのであり、細かいところは忘れてしまうかもしれないが、わたしの中に永続的な豊かさを残してくれているのである。

    同じ本を何回も何回も読む人々がいることは知っている。それが可能なのは、感受性をもちいてではなく、眼だけで読んでいるからである。それは機械的な運動であって、チベット人がマニ車を回すのとなんら変わりがない。無害な活動であることに疑いないが、知的な作業だと考えるのは間違いである。
    (サミング・アップ 第25章)

    マニ車:チベット仏教で用いられる仏具。内部に教文が納められており、回転させた数だけ経を唱えるのと同じ功徳があるとされている。(wikipediaより)

       ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

    しかしこういう文章は、娯楽として読む分にはいいけれども、試験で読むとなると頭が痛くなるだろうな。文章・文法は簡単だけれども、なんかややこしいことを言っているし。

    そもそも、大文豪モームの意見とはといえども、再読に関するこんな見解にはまず同意できない。かれには、「学まなびて時に之を習う。またよろこばしからずや」という孔子の言葉を教えてあげよう(笑)。

    最近の受験英語には、「サミングアップ」は使われなくなったようである。文学趣味が強すぎて、実用的な英語が求められる今の時代向きではないからだろう。大学生でも英文科の学生でもなければ読むような本ではないし、本書を読んでTOEICの点数が上がるとも思えないので、それももっともである。(使われている単語の種類が違う)。

    わたし自身は、もっとモームの読書歴とか、ほかの作品や作家の評がたくさん書いてあるのかと思ったが、意外とそれほどでもなかった。

    60歳になったかれが、自分の人生を振り返り、人生や芸術やさまざまな物事に対して、自分の考えを述べた本。

    わたしとしては非常に面白かったので、抜き書き集を作ってみた。

    http://ravenclaw.blog59.fc2.com/?tag=The_Summing_Up

    暇な人は覗いてみてください。(翻訳は保証の限りではありません)

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