- Amazon.co.jp ・洋書 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9780099289524
感想・レビュー・書評
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Davidは生徒と性的関係を持ったために大学教授の職を追われ、田舎に住む娘Lucyのところに身を寄せる。そこで事件に遭ったDavidはその事件への対処の仕方でLucyと対立してしまう。南アフリカの転換期を背景に経験・世代・性などから来る二人の視点の違いが浮き彫りにされる。文書は読みやすいが、内容は複雑で、解釈も、人によって分かれそうだ。最後にDavidが取った行動をどう受け止めたらいいのか。現状を受け入れて、前に進むのか、諦めたのか、もう少し考えてみたい。
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南アフリカについての物語が読みたくて。
アパルトヘイトを過去にもつ南アフリカの地が舞台。セクハラ騒ぎを起こして職を失った大学教授が娘の住む田舎へ逃避し、そこで恥辱を味わいます。転落、転落、転落。
父と娘、男と女、白人と黒人、人間と動物、都市と農村・・・という見事な対称世界が、感情の渦でぐちゃぐちゃになるお話、と言ったら怒られるだろうか。
タイトルの持つインパクトそのままに、非常に印象的・・というか衝撃的。なのに、「理解」できない。
南アフリカという地がわからなければ、父と娘どちらの感情により共感するのだろうということさえもわからない。読者としての立ち位置を失う。「人間って結局何なんでしょうか」「恥辱ってそもそもなんでしょうか、尊厳ってどこにあるんでしょうか」と哲学的なことにまで想いが及ぶ。
でもふと頭を上げて、じゃぁこの物語が自分にとってforeignすぎるのかと思うと、そうでもないような気がする。自分の生活する社会で、同じ根っこから派生した芽を見た気もする。
頭の中がぐちゃぐちゃしてきちゃったのですよ、要するに。
単に現地について知識がなさすぎるからなのか、人間としての経験地が足りないからなのか、読解力不足なのか・・それともこれがクッツェーの力なのか?読者に対するものすごく挑戦的な気配は感じる。
結局「理解」はできてないけれど、ただ、この本を読み終わった後のとてつもない疲労感をもって、ほんの僅かにでも、登場人物の目線に立つことができたのかなとは思います。
南アフリカの人種差別の歴史だけでなく、アパルトヘイト廃止後から現代への流れ、現在の南アフリカの経済・社会情勢等、ある程度知った上で読むと話が浸透しやすいかなと思う反面、
歴史を理解したからといって「あー、そういう歴史があったんじゃこういうことも起こるよね。歴史の傷跡は深いよね」と片付けられるほど簡単な話でもない。
改めて、南アフリカの遠さを想うと同時に、それだけかけ離れた社会で生きる人々について考える余白を与えてくれる、文学ってもんに感謝。
至極平易な言葉で書かれているのに、これほど扱いの難しい本も久しぶりです。
主人公は、その地で生きていく痛みを知っているから、give up して起こること受け入れる。その痛みを知らない遠く離れた地で本を読む私には、give upせずに「理解しよう」という傲慢さと紙一重の感情を追求するエネルギーがあるから、またいつか読み返そうと思います。 -
何の予備知識も無く読んだら、ものすごく面白かった。後から知ったんだけどノーベル文学賞作家だって、やっぱすごいね。