Tin Drum, The (Vintage War)

著者 :
  • Vintage
4.00
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 1
感想 : 0
  • Amazon.co.jp ・洋書 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780099597575

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 第一次世界大戦の傷跡も未だ生々しく、次の大戦の足音が忍び寄る…そんな時代に生まれ落ちた少年オスカルは、三歳を最後に成長する事を止めた。見た目は子供、頭脳は大人、そんな彼が戦火に呑まれたダンツィヒをブリキの太鼓を片手に行進する。

    ヤバイ、凄い、ヤバイ、本当にヤバ凄い作品だった。実は第一章のジャガイモ畑のシーンがあまりにつまらないわ訳分かんないわで挫折すること実に10回以上、50ページ程読んでは諦めるを何度も繰り返した本だったのだけど、いつの間にか面白過ぎて逆に置くタイミングを失する程に。人間の深淵が知りたくてホロコースト文学は様々な視点からの物を読んできたつもりだけど、蓋を開けてみればナチスやユダヤ人を主眼に置いた作品が多かった。しかしこの作品は、それ以外の人々、市井の人間の微妙な心理の変化を的確に捉え、彼らがいかに戦争に加担したかを描いている。当時のドイツ社会を具現化しているかのよう、とにかく空気感が凄い。今まで何の軋轢もなく共に暮らしていた人々を徐々に無視し、迫害し、ついには殺すようになるまでが極めて自然に描かれていて、ゾッとする。これも自分達がしでかした事を絶対に忘れさせないぞ、というかつてナチ武装親衛隊に所属していた作者の執念が成せる技なのかも。

    魚を食べ過ぎて死ぬ母親に船首像と性交する男など、嘘だろ、と思うような奇行に次ぐ蛮行に次ぐ淫行、何が何だか分からない!ただ、そんなエピソードに紛れて、水晶の夜やソ連軍による侵攻など、それこそグロテスクな現実が容赦無く挿し挟まれる。オスカルが愛読していたゲーテの教養小説とラスプーチンの性生活を描いた猥雑な小説をちょうど混ぜた様な奇書の体を成しているのだが、それこそ我々の20世紀の歴史こそがこの小説以上に「野蛮で、神秘的で、退屈」だったのかもしれない。忘れたくても忘れようにないエピソードばかりの強烈な長編だった。

全1件中 1 - 1件を表示

Gunter Grassの作品

最近本棚に登録した人

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×