Modern Classics Down and Out in Paris and London (Penguin Modern Classics)

著者 :
  • Penguin Classic
3.50
  • (0)
  • (1)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 11
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・洋書 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780141184388

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ジョージ・オーウェルといえば、ディストピア小説のはしりである「1984」、共産主義社会のカリカチュア「動物農場」、スペイン内戦のルポルタージュ「カタロニア讃歌」で有名な作家だが、高校生のころSF小説として読んだ「1984」はなんだか暗くてぱっとしない印象で、ブラッドベリの「華氏451度」や眉村卓の「幻影の構成」のほうがよっぽどエキサイティングで優秀な作品に思えたし、「動物農場」は大学の英語の教科書として使われたのだと思うが、あまり授業に出なかったのでほとんど記憶にない。「カタロニア讃歌」は、そういうあまり興味をひかれない作家による地味な戦争ルポということで、読まないできた。

    印象がガラリと変わったのは、小野寺健編訳による「オーウェル評論集」(岩波文庫)を読んでからである。非常に面白い。「チャールズ・ディケンズ」と「鯨の腹の中で~ヘンリーミラーと現代の小説」という批評を読んで、とても気に入った。どの点が気に入ったのかはもう覚えていないが。
    以来、オーウェルを一度ちゃんと読んでみたいと思っていた。
    本書は作者の最初の作品である。小説ではなくて、パリとロンドンにおける貧窮生活のルポルタージュである。

    貧窮生活といってもなまやさしいものではなく、いまでいえばホームレスの生活を送っているわけだが、イートン高というイギリス第一のパブリックスクールを出た青年が、なんでそういうはめになったのかはよく分からないけれども、そんな境遇の中で、当時の浮浪者たちはどういう状態にあるか、貧しいということはどういうことであるかを、「内側から」報告している。いわば自分自身を貧窮生活報告のための実験材料としている。

    And there is another feeling that is a great consolation in poverty. I believe everyone who has been hard up has experienced it. It is a feeling of relief, almost of pleasure, at knowing yourself at last genuinely down and out. You have talked so often going on the dogs ーand well, here are the dogs, and you have reached them , and can stand it. It takes off a lot of anxiety.(p18)

    (試訳)それともうひとつ、別の感覚があって、貧窮生活にあってもそれがおおきな慰めを与えてくれる。生活に行き詰まったことのある人間なら誰だって経験したことがあるはずである。それは安堵感で、ほとんど喜びといってもいいくらいだ。自分自身がついにいくとこまでいってしまったという自覚からくるものである。人々はよく落ちぶれることについて語るけれども、そう、ここがその場所で、自分はそこにたどりついてしまったのだ。しかしそれでもなんとか生きていける。その事実が不安の大半を取り除いてくれるのである。

    ここでは"hard up"とか"down and out"とか"go to the dog"とか、貧乏な状態になるという意味の見慣れない言葉が出てくるが、全体的にはオーウェルの文章はかなり読みやすい。ふだんは面倒くさいこともあってなるべく辞書は引かないけれども(それが英語の本を読むための第一の秘訣であるとどの本にも書いてありますね)、彼の文章には不思議な魅力があって、知らない単語をそのままにして進むのがもったいなくて、おもわず辞書を引いてみたくなる。辞書を引くのが苦にならないという珍しい文章であり作家です。

    ただしパリが舞台である前半では、フランス語がときどき出てきて、さすがにそれはスルーしたけれども、雰囲気でなんとなく分かるものです。

    日本語では「パリ・ロンドン放浪記」として、同じく小野寺健訳で岩波文庫から出ています。

  • オーウェル。10年冬休み課題。
    貧しさの中で逞しく生きる若者たちのお話。

    1984(1Q84じゃないよ!)とかも
    読んでみたいねえ。探してみるか。

全2件中 1 - 2件を表示

GeorgeOrwellの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×