The Opposite of Fate: Memories of a Writing Life

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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・洋書 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780142004890

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  • 中国系アメリカ人作家エイミー・タンの自伝的エッセイ集。
    「ジョイ・ラック・クラブ」という小説を書いた(しかもどんな小説かもしらなかった)ということ以外、何の予備知識もなかった。だから彼女の人となり、文体を発見しながら読みすすむという感じだった。
     七つの章には好奇心をそそるタイトルがついていて、各章は六、七篇のエッセイから成っているが、時系列は無関係なので気のむくままランダムに読んだ。それでも内容もトーンも異なるエッセイから一貫した印象を受けた。それは彼女の人生で起こった決定的な事件―父と兄が一年を隔てずに脳腫瘍で亡くなったこと、親友だったルームメイトが強盗に殺され、タンは偶然それから逃れたこと、そして彼女に多大な影響を与えた母親のことが、繰り返し現れるからということもある。各エッセイの間の間接的だが確実なつながりが、彼女のいわんとしていることへの理解をさらに深めるよう相互に作用もしている。
     例えば作家仲間で構成されたお笑いロックバンドのツアーのエピソードの締めくくりに、どうしてロックバンドなんかやる気になったのかという質問には、ただwanted to have fun 心から楽しむということをしてみたかった、としか答えられないといっている。彼女がどのような子ども時代を送ったかを他のエッセイで読んだ読者にはこの答えが、ひときわ含蓄をもって響くのだ。
     本書の中でいわば軽快エッセイに属するタンが友人に送ったメールがある。友人からの「あなた大丈夫?」というメールへの返事です、と最初にあり、そんなものを本に収録するなんてちょっとお手軽すぎるのでは?と思ったが、すぐれた短編小説のように面白く、そんな猜疑心はあっというまにふきとばされてしまった。タン夫妻が所有する山小屋のある地帯で土砂崩れが起こり、救助隊に命からがらレスキューされた顛末が書かれているが、描写が生き生きとしている。小説家だから描写力が優れていて当たり前、だろうか?小説家の書いたエッセイは他にも読んだが、ディテールがなおざりにされていることは多いし、なんといっても気合が入っていず、小銭稼ぎに書いたと思わされるものが多い。本当にどうして日本人の作家のエッセイ集にはこれほど密度の濃いものが(そして気取りのないものが)ないのだろうか、と思わされたほどだ。
     中国系、『有色人種作家』(!)などのレッテルを貼ろうとするアメリカの文学界に対し、タンはその背景をきめ細かに分析し、疑問を投げかける。そして『アジア系作家』は『アジア系』たる役割を担わなければならないと考えているアジア系作家もいることに触れながら、そうしたレッテル貼りは何よりも文学の自由を束縛する精神に由来すると明言する。文学の自由を擁護しようとする厳しさ、真剣さは本書にあふれるユーモアとは対照的で冴える。
     という風に内容は軽いものから重厚なものまで多彩だが、やはりメインテーマはタンの母親、デイジーだろう。四十年代の中国で婚外の関係を持ったために刑務所に入れられ、刑務所を出た後、その恋人(タンの父親)のいるアメリカへ渡り、ヒステリックともいえる気性の激しさと厳しさで反抗心の旺盛だったタンを苦しめたデイジー。厳しさも葛藤もないぬるま湯のようなオーストラリアの親子関係を日常的にみている私には(小学校の事務員なので)タンの母娘関係は清涼剤のように(そして小説のように!)刺激的だ。デイジーは作家としてのタンにとって不可欠なインスピレーションの源となり、「和解」もするが普通の和解から想起されるような陳腐さはない。タンの作家としての恵まれた想像力、自分たち親子を軽やかに客観視するユーモアがあるからだ。それでも何度も私は不覚にも涙を流してしまった。いやそれゆえにというべきかもしれないし、私自身が母を亡くして半年しかたっていないということにもある程度は関係しているかもしれない。
     親をなくすというのは人生に新しい角度をもたらすし、同時に(不思議なことに)解放されることでもあると思う。そんなことも考えさせられる本だった。

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  • 死語辞典を読むのが好きというだけあって、聞いたこともない単語が沢山使われているので、辞書をひきひき読んだが、本当に彼女は文章が上手いと思う。そして彼女のユーモアは、私のツボにはまります。小説よりもある意味おすすめかも。

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