We Wish to Inform You That Tomorrow We Will Be Killed with Our Families (Bestselling Backlist)

著者 :
  • Picador
4.00
  • (1)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 7
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・洋書 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780312243357

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 映画「ホテル・ルワンダ」の、「原作」といわれることもある本(クレジットはなし)。邦訳も「ジェノサイドの丘」という題で出ています。

    1994年、ルワンダでは多数派のフツ族の一部が、少数派でかつての支配階級であるツチ族を地上から抹殺することを企てました。ほんの数ヶ月の間に、850万人のルワンダ人のうち、ツチ族を中心とする約100万人が殺されたといわれています。

    映画は、映画の主人公、フツ族でありながら沢山のツチ族の人を守ったポール・ルセサバギナ氏とその家族にぐっと寄り添い、「こんなことが自分におこったら…」とぞっとさせ、「こんな人たちを、自分も含めて国際社会は見殺しにしたんだ」と衝撃を与える内容でした。

    本書はもっと淡々と、詳しく事実を述べていきます。筆者は虐殺直後の1995年から、本書出版直前の1998年まで、何度もルワンダを訪れ、虐殺の生存者や、容疑者、人権擁護団体の職員、現在のルワンダの指導者達に丁寧にインタビューをし、資料を調べ、読みやすく(読むのはつらいですが)本にしてくれました。

    題名は、ツチ族のカトリック神父たちが、教会に逃げてきたツチ族の信徒たちも自分達も助からないだろうと気づいて、自分達の直属の上司でもあるフツ族の神父に助けを求めた手紙の一節です。返事は"God doesn't want you any more".山に逃れた数名を除いて、全員が殺されてしまいました。もともとフツ族とツチ族は言語も宗教も一緒で、結婚も多かったので、虐殺者の中にも家族にツチ族がいる人も沢山いたようですが、それは虐殺をやめる理由にはなりませんでした。

    映画でも、国連軍が虐殺を止めるのに何の役にも立たなかったことが描かれていましたが、虐殺者側の旧政府と利権が絡んでいたフランス軍がむしろ虐殺者を助ける形で出兵していたり、国連の難民に対する援助が、結局虐殺者たちが戦力を立て直すのに使われてしまったり。「国際社会」が有効な援助をできなかっただけでなく、下手に手を出してかえって状況を悪化させたことが明らかにされるので、「国連って結局何にもできないんだ…」と、暗い気持ちにさせられます。

    本は一応かすかな希望を持って終わりますが、アフリカで起きていることを、背景に対する知識があまりないまま、ニュースで理解することの難しさをまざまざと見せ付けられた感じがしました。スーダンのことも、ニュースでは単純化しすぎて見えなくなっていることはないのかしら?

    どんな本を読んでも、映画を見ても、夜は安眠できる私ですが、今回ばかりは夢に見ました。
    決して楽しい本ではないですが、「ホテル・ルワンダ」や、最近公開の「ルワンダの涙」を見た人にぜひおすすめしたい本です。

全1件中 1 - 1件を表示

PhilipGourevitchの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×