英国の作家ジェフリー・アーチャー氏の作品。
1940年生まれで若くして政治家になるが、投資詐欺にあい大金を失う。その経験をもとに作家デビューを果たす。議員活動中に偽証罪で投獄経験もあり。
本作は1981年の作品で、氏のキャリア第三作となる作品。
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タイトルがキャッチ―ですが、旧約聖書の『カインとアベル』から借用したと思われます。
聖書ですとCane(こちらが聖書の綴り)と Abelは創世記にて登場。アダムとイブの息子たちですが、農家のカインと猟師のアベルが神様への捧げもの合戦?の末、神様はアベルの捧げものを取る。結果、カインは怒ってアベルを殺してしまうというもの。
これに対して本作。
同じ年、同じ日に生まれた二人の男の数奇な因縁対決とでも言ったところ。
Kane(苗字)はアメリカはボストンの旧家の銀行の跡取り息子として生を受けます。
他方Abelはポーランドの猟師に捨て子として発見されるも、領主の息子の学友として召し抱えられ、第一次世界大戦でドイツ、ついでロシアの蹂躙を甘受し、大切な人を殺害され、果てはロシアの労働収容所へ送られます。辛くも脱走し、モスクワをへてオデッサ経由でトルコへ渡ります。トルコでも盗みをやらかし捕まり、両手を切り落とされるすんでのところで英国大使館に救助され、その後ポーランド大使館をへて米国へ移住します。
こうしてKaneは銀行家として、Abelは最終的にホテルチェーンのオーナーとして反目し合いつつ因縁の業を生き抜きます。
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そういえば似たようなモチーフで以前、池井戸潤氏の『あきらとアキラ』のドラマ版を見ました。
ザックリ言えば確かにああいう感じかも。
ただ、本作『Kane&Abel』はもっとバッチバチでダイナミックな因縁のつけ合いとなります笑。
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もう一つ、本作読んでふと思ったのは、「無駄なことに時間を使ってはいかんなあ」ということ。
本作、このKaneとAbelは20代そこそこの時に共に面識を得てから60代で互いに亡くなるまで、まあ飽きもせず憎み合います。
そうこうしているうちにKaneは銀行の取締役を首になったり、Abelも大切な一人娘に家出されたりして、二人して晩年は寂しい一人時間を過ごすシーンの描写がちょっと胸にじんときました。
暗に二人は、互いの家族よりも確執に生きることを優先してしまった男ら、として描かれます。
身につまされますね。
私も、仕事が本当に大事なのか、その飲み会は必要なのか、自分の趣味を優先して家族時間をないがしろにする、これが本当にいいことか等々、これまで後悔してきたことが色々あります。晩年に家族や近しい人との間に後悔を残さぬよう、いろいろな「しがらみ」や「感情的しこり」を今後も引き続き処分したいなあと思った次第です。
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英語についても少々。
本作、実に長く600ページを超える大作となります。とにかく長い。私、通読するのに一カ月半かかりました。
ただ英語の難易度はそれ程でもありません。分からない単語はひいて記録しておくタイプなのですが、今回はそうした不明単語は一ページで2-3個程度。スンナリと読みやすい平明な英語でありました。
内容もエンタメ系、しかもツイストにつぐツイストが起き、ぐいぐい読めますので最後の200ページ位はそのまま辞書なしで読んでみました。一部の副詞や動詞を中心に分からない単語は多少気になりましたが、ストーリーを追う分には全く問題ありませんでした。
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ということでジェフリー・アーチャー氏の初期作品でした。
今回も近所の洋書新古品店で購入しました(500円程度)。英語の訓練は気軽に読めるエンタメ系で今後も進めてゆきたいと思いました。
因みに話の着地は結構ホンワカ目な終わり。でも最後まで展開を予想できませんでした。英語が勉強したいけど難しいのはいや、という方などは、こういう作品であれば楽しく英語に浸れるのではないか、と思いました。