Nine Stories

著者 :
  • Little, Brown and Company
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本棚登録 : 108
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・洋書 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780316769501

感想・レビュー・書評

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  • あまりに好きすぎて、コメントするのも難しい本です。
    おそらく、私のようにこの作者、この作品の大ファンは多いことと思います。

    この9つの物語が、サリンジャーの自選の9作品であること、
    どれも子どもが主人公であること、
    そして、彼のほかの作品にリンクしたものがあるということ、
    私は初めに日本語訳のものを中学生の時に読んで、それから高校生、大学生、そしてアメリカに来てからも読み返していますが、
    それぞれの時に、またひとつ、もうひとつ―と、新しい発見が必ずある本です。

    ひょんなことから、同人の二次創作のサイトを細々と運営していますが、何か書くとき・・・気が付くと、このナイン・ストーリーズに影響されているなぁ、と感じる箇所を自分で見つけて、「あらら・・・」と思うこともしばしば。
    きっと、登場人物たちのいろいろな科白、仕草が頭から離れないくらい気に入っているからかもしれません。

  •  短編集。何個目かで、頓挫してしまった。。。
     でも本の紹介雑誌ですごく評判が良かったので、いつかリベンジしたい。

  • 英語で読むときに、自分なりの日本語訳再生が脳内で行われるんだけど、それがかなり村上春樹の文体に近かった。それが面白かった。

    全編貫くやるせない悲哀、のようなものが、グレーゾーンを嫌い、白か黒かの自身の立場をはっきりさせる、私のアメリカ人
    のイメージを揺るがすものとなりました。

    そもそもこの本は、今年に入ってbanana fishの漫画文庫本を読んだとこから始まるのだが、文庫本ゆえ最後に著名人の解説が入っていて、その人々の口ぶりから私が思うよりもたくさんの人が、このnine storiesを読んでいたんじゃないかと思ったのです。

    恐らく日本語訳を読んでいたんじゃないかと思うのだけど、そうじゃなかったとしたら余計に、banana fishが流行った90年代な人の文学的なリテラシーの高さを思うわけです。(いや、実は買い被りすぎでホントのところは「これを読んでる自分」というステータスのためだったのかもしれない。分からない)

    そして読んでよかったと思うほど、良質な話でした。

  • 『謎解きサリンジャー』を読み、オリジナル言語で再々々読。しかし、それではハプワース16のあの冒頭は? 謎は深まり更に深みへ。そしてハプワース、何なのだこれ、SeeMoreGlass(7)の手紙なの?

  • 様々な訳者が「Salinger作品は原文こそ」と言う理由がよくわかった気がする。訳では必ずしも再現しきれないもの――行間から漂ってくる微妙なニュアンスとでも言うべきようなもの――があることを感じさせられる。

    以下、収録短編概略
    ―――――――――――――――――――――――――――

    "A Perfect Day for Bananafish"
    大戦から帰還した元兵士と、その細君のフロリダ休暇滞在中のある一日の出来事を描いた話。
    戦後に多くの兵士を悩ませた心的外傷の存在と、それに対してあまりに無神経であった1948年当時の合衆国の空気との不可能的な共存が、ここでは最悪の結末を迎える。

    "Uncle Wiggily in Connecticut"
    子持ちの若い主婦が、学生時代の悪友と軽妙なガールズトークを交わしながら飲み明かす一日が舞台。
    会話のやり取りや些細な描写がとても冴えていて、Salingerらしい一作。
    何不自由なく裕福そうに暮らす女性が抱える内面の闇と喪失感が、読後にやりきれない余韻を残す。

    "Just Before the War with Eskimos"
    ある現実との邂逅と、それによってパラダイムシフトする内面を描写した作品。
    戦後の合衆国社会には、大雑把に言って二種類の家族が居た。戦争の影響を被った家族と、全く対岸の火事として(スポーツの試合かなんかのよう感覚で)過ごしてきた家族と。
    そういうことをふと考えてしまう。

    "The Laughing Man"
    重層的で複雑な構造の一編。
    大筋としては、9歳の少年が自分の尊敬する青年の失恋から大人の世界を垣間見る、という具合。
    他方、局面で示唆される要素を総合すると、異なるカテゴリーの人間同士の間に聳え立つ断絶と、そういうものを内包する社会の残酷さとを描いた話でもある、という具合。

    "Down at the Dinghy"
    たぶん本書でも最もシンプルな構造で、読みやすい作品。シンプル故のストレートな話の良さを堪能できる。初めて本書を手に取る人には、この作品を最初に読んでもらうのが一番楽しみやすいかもしれない。
    キーワードとなるのはユダヤ系の人々に対する侮蔑的なある言葉なのだけど、その言葉を受けとる感受性と、発する人々の感受性、双方にいろいろ思わされるところがある。
    日常にさりげなく潜む悪意と、同じく日常にさりげなく潜む癒しが描写されている。

    "For Esme―with Love and Squalor"
    ノルマンディー上陸作戦からドイツ占領までの過酷な欧州戦線に従軍した兵士が、ある英国の少女の結婚式のために記したもの、という体裁で織り成される物語。
    人を損ないうる可能性を持った暴力的なエレメントは、大は戦争から、小は人間関係の隠れた悪意まで、様々なものがある。そうした大小様々な暴力性の存在を示唆しつつも、この作品のメインテーマとなっているのは、そうした全てを超越しうる、人と人との間に生じる無償の魂の交流の可能性だ。
    おそらく主人公はもう回復不能な、悲惨な状態にある。彼を取り巻く環境も良くない。しかし、あの1日があったおかげで、彼は救われたのだと思う。あれこそが希望なのだと信じていると思う。
    タイトル通り「愛と汚れ」を描いた、サリンジャーの最高傑作。

    "Pretty Mouth and Green My Eyes"
    友人の妻とベッドの中に居る男の元に、その友人から電話がかかってくるという、ちょっとSalingerらしからぬ喜劇的な話……と思わせておいて、実際には本書で最も残酷な瞬間が描写された一作。
    一人の男が、彼を取り巻く周囲の人々の振る舞いを引き金となって、今まさに精神を損なっていく様が痛ましい。

    "De Daumier=Smith's Blue Period"
    ある絵描きの青年が青春時代を回想し、自身が宗教的な意味で開眼していく様子を綴った、いわば"神"をテーマにした一種の教訓譚。
    以降のSalinger作品との関連を踏まえると重要な位置付けにくるべき作品なのだけど、個人的にはあまり好きになれない。
    "For Esme"や"Uncle~"で発揮されているような、筆者のエスプリに富んだ表現力が、ここではいまいち機能していない。

    "Tedy"
    Salingerのキャリア最後の中編"Hapworth"と近いものを感じさせられる、文学の枠からかなり逸脱した一作。
    ひとりの人間の話を書くことよりも、もっと概念的・根源的なものと向き合うことをSalinger自身欲しているが故に、こういう作品になったのだろう。
    決してつまらないわけではないのだけど、困惑せずにはいられない。
    文学作品を読んでいるというより、実存主義系哲学者の著作を読んでいるように思えてくる節が少なからずある。良くも悪くも。


    ―――――――――――――――――――――――――――

    村上春樹が何かの際に記していたように、本書はまさに九つの作品がそれぞれ単体として光を放ちながら、相互に補完し合ってもいるような、そういう一冊の本として完成された短編集だと思う。最後の二作については作品単体としてはどうなんだろうというところなのだけど、それでも本書に収まることで形になったように感じる。
    特に"For Esme―with Love and Squalor"が他の作品に与えている光彩は眩く、それが他の短編作品を一層素晴らしいものとしていることはまず間違いない。同様に、他の八編の強烈な存在があるからこそ"For Esme"がより一際輝くものとなっているとも言える。
    それぞれが個性を備えつつ、それぞれのタッチでひとつの世界観を映し出している、そういう短編集としてはこれ以上ない完成度を持った名作。

  • Franny and Zooey を先に読み始めていたが、Glass Saga というのが気になりこちらと併読。

    For Esmé with Love and Squalor
    わたしはこの話が一番好きだった。

    サリンジャーって英語自体はそんなに易しくない気がするのはわたしの英語力のせいだろうか(^_^;)

  • サリンジャーでは一番好きかも

  • オレがずっと昔、読んだのは、この出版社のじゃなくて、penguinbooks版だった。
    当時、この小説は好きだった。
    精神が荒れてた。

    はじめに日本語で読んで、とても気に入って。
    次にペイパーバックで読んだ。
    英語ではうまく読めなかったけど。

  • サリンジャーの著書のうち、原書で読みやすいのはどれだろうと探しているうちに本書に行き着きました。15~20ページ程度の9つの短編から構成されているのでこれが最も入りやすい著作ではないかと思います。

    以前に野崎孝の訳書を読んでいたためか、予想よりも読みやすかったです。改めてサリンジャーの洗礼された文章と、野崎さんの翻訳の上手さに驚嘆しました。

    短編集の中では本書が私の一番のお気に入りです。ガラス細工のような緻密さで書き出される、若くて繊細な心の数々。原書ならではの臨場感に包まれながら読了しました。

  • 繋がっていないようでいるような、9つの話。最初と最後の話が特に良かった。中にはよくわからなかったのもあった。

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