Into the Wild

著者 :
  • Pan Books
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感想 : 2
  • Amazon.co.jp ・洋書 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780330453677

感想・レビュー・書評

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  • 表紙とタイトルにひかれて、図書館で適当にピックアップした本だったけど、素晴らしい本だった。映画にもなっている有名本とは全然知らなかったのだけど。(表紙は映画の1シーンらしいが、とてもいい絵だと思う)

    大学を卒業後、ヒッチハイクを繰り返しながらアラスカへ辿り着いた青年が、原野に置き捨てられた廃バスの中で遺体となって発見される。
    D.C.の裕福な家庭出身の青年だったが、卒業後は意図的に親への消息を絶っており(偽装工作も見られる)、ロースクール進学にあてるはずだったお金は全額チャリティに寄付していたことが判明する。
    なぜ彼はそこで死ぬことになったのか、その謎を追ったノンフィクション。

    まえがきで、著者は「この本を書くにあたって、公平かつ客観的な視点を保った、と言いたいところだけれど、その点については正直に言ってあんまり自信がない。彼の足跡をたどり、彼の思考を追う作業は、どうしても自分の若いころを想起せずにはいられなかったから」というようなことを書いていて、私はむしろこの部分で、著者に強い信頼を感じた。
    読み終わった今思うが、著者のきわめて個人的な経験やものの見方が、この青年の死の謎を語る上でとても重要なファクターとなっている。

    亡くなった青年、クリス・マカンドレスは、最高の語り手を得て、少なくともその点においてはなんとラッキーな人だろう、と思った。後にも先にもジョン・クラカワー以上の理解者はいないんじゃないだろうか。

    客観的に見れば、クリス青年の行為は「若気の至りの理想主義による、世にも愚かな自分探しの旅」以外の何物でもない。ご両親の痛烈な悲しみを思うと怒りすらわいてくる。
    でも、著者クラカワー自身の無謀な旅の経験を読むうち、彼らの行動を簡単に「愚かな行為」と切り捨てられない何かがあると考えさせられる。
    生き生きとした(かつ、ある意味とても生々しい)クラカワーの語りは一読に値します。
    とても美しく、気高く、そして底なしに愚かで浅はかで。

    私は危険な行為や肉体を激しく使うような行動への衝動も、哲学的な美しさへの探求にも、両方とも、ほぼ縁のない人間だけれども(野生レベル的には、ご家庭で飼われているハムスターに近いと思う)、それでもクリス青年が目指したもの、彼が掴もうとしていたもの、彼が見ていたものの一端を、クラカワーの言葉を通して垣間見たような気がする。
    彼らの一喜一憂を追体験するうち、その焦がれるような思いは、いつの間にか自分のもののようになっていて、彼らの必死の探求が報われた瞬間の輝きは心揺さぶられずにはいられなかったです。

    ところで、私は出版業界には全く縁がないので、憶測で言うのだが、ノンフィクション・ライターなどという稼業は、本当に無欲でないとできないのではないかというイメージがある。
    まずもって儲からなさそう。
    ノンフィクション、という性質上、持ち出しの経費はわりとかかりそうだし、本を量産するにも限りがありそうだし(取材しているだけで、あっという間に月日がたちそう)、だからと言って、フィクションの作家よりも地位が高いかというと、そうでもないし。フィクションより売れるかというとそうでもないし。
    関係者からは理由もなく嫌われたり非難されたりしそうだし・・・いや、よく知らないからイメージで言ってるんだけど。

    だからこそ、強い正義への希求心などがないととても出来ない仕事かなと思うので、私個人的にはとても尊敬している職業の一つなんだけれど、この本を読んで今回も尊敬を新たにした。

    というのも、この本の最後の章(エピローグの一つ前の章)だけ、活字の書体とかインクのにじみ具合とかがちょっと違っていて、「ん?なんかこの章だけ変だな」と思いながら読んでいたのだが、その理由が途中で分かった。
    謎の多いクリスの死について、直接の原因は何だったのか、ということがこの章で推理されているのだが、この本が出版された後で、クラカワーは別の有力な説に思い至り、後の版ではそのことを修正・追記している。だからたぶん最終章だけ書体などが変わっているんだと思う。
    出版時の結論ではどうも腑に落ちず、出版した後もずっと資料などを当たり続けて、最終的に修正まで行っているあたり、なんと誠実な人なんだろう、と驚きを隠せなかった。

    この本じたいはとても売れたと思うけれど、ご両親からのリクエストを受けて(実際は、死者への敬意と、ご両親の惜しみない協力への感謝をこめて、だと思う)、本の著作料の20%はクリスの名を冠した奨学金の財団に寄付する、というようなことも書いてあったので、びっくりした。20%ってけっこう大きいよね。
    無欲じゃないとできない職業だわ~などと思ってしまった。

    しかしデナリ国立公園は絶対行ってみたい場所の一つだなぁ。
    トレッキングとかしたいー。
    ハムスターな私なんぞは現地のツアーに参加するだけでかなりの冒険なんだけど。

    クリスのご両親が、廃バス周辺の自然の美しさを見て、ほんの少し心慰められるシーンは泣いてしまった。

    この本に影響され、そこを訪れる観光客が後を絶たなくて危険なため、地元の人たちの要請で今はもうそのバスは撤去されたらしいです。(Into the wild bus、で検索すると、ヘリで運ばれているCNNの記事がすぐ出てきます)

    ※ちなみに、オリジナルの英文ですが、私の語彙をはるかに凌駕するフォーマルな語が駆使されているので、辞書ひきまくりでした。
    しかも登山用語とか自然現象の用語なんかも多く、その日本語すら知らなくて、それも辞書ひきまくり。
    ちょっと疲れたけど、内容のおもしろさでぐいぐい読めます。
    自然現象の用語、Penitenteとかbergschrundとかはすごく興味深くて、Wikiの解説を読みふけってしまった。

  • 映画にはない真実がたくさん詰まってます。

    クリスの母親がバスの中に残したメモ、クリスの妹が飛行機の中でとった行動、読んでて泪が止まりませんでした。

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