- 本 ・洋書 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9780345380371
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
これでCrichtonは6冊目(日本語で読んだTimelineを含めたら7冊目)。
作品ができたのは1992年、日本がアメリカから輸入するオレンジと牛肉の関税を撤廃した年。すなわち、貿易摩擦真っ只中の、日本が台頭している時代。
日本のナカモト社がL.A.に建設したビルのオープンパーティで、殺人事件が発生。主人公の警部補は捜査を開始するが、日米関係の経済の闇が立ちふさがる、といったところでしょうか。
テーマは、アメリカの産業の空洞化。Crichtonは、米企業が技術力の勝る日本の企業に買収され、実質産業が空洞化している現実への警鐘を鳴らしています。アメリカ国内は訴訟で潤っていて、何も実質がない、と。確かに、車から家電製品まで何でもかんでも日本がいけいけの時代だったからねー。
加えて、日本の財閥に由来する企業グループ構造、海外に対してことごとく閉鎖的な業界、談合、ダンピングなども批判されています。ただしその一方で、日本が欧米と同じ方式で戦うことを期待してはいけない、日本は「hara no saguriai」etc.を筆頭とするアメリカとはまったく違う独自の文化があって、その発展形として今の産業構造があるのだ、だからアメリカは一方的に日本を非難するべきではなく、基本のものづくりに戻って対抗力をつけないといけないとしています。
たーーしかに、賄賂だ談合だは日本で横行してることだし(アメリカでもあると思うんだけども、どうやら談合はないらしい?)、官民癒着は常套手段であるよね。でも後ろめたいことはどこでもやってると思うんだけどなぁ。どうなんですかね? いかにアメリカといえど、まったくのfair playと胸張れるんですかねぇ。腹の探り合い云々なんかがこの土台になっているかどうかはわからないけど、文化差ってこんなところに出てくるのかしら。
でもこれ、産業の空洞化という点ではだいぶ前からの日本にも当てはまる構図ですよね。だから基本はものづくりだと思うんだよー。なんで理系女子少ないんだよー。
主人公Smithのパートナーとして、かつて日本に住んだ経験があって、日本語の達者なConnorさんという人が出てきます。キーパーソンで日本人がたくさん出てくるので、日本語もバンバン出てきます。「kaisha」とか「Namerunayo」とか「Urayamashiine!」とか「erai kotoni naruyo」とか。ちゃんと後に英語で解説がついたりして親切。面白い。
それに、アメリカ人から見た日本人の性質というか気質の解説もあって、ほうこんな風に見られてるのかなぁというのもわかります。賛同する点もしない点も、いろいろ。
結構勉強になりました。ミステリとしてはー……まあまあかな。
ちなみにこれ、ショーン・コネリー主演で映画化したらしい。機会があったら見てみようかな。
MichaelCrichtonの作品





