- Amazon.co.jp ・洋書 (32ページ)
- / ISBN・EAN: 9780395423318
感想・レビュー・書評
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目を見開いた男性の表紙から、なにかぞっとする話かと思いきや、違った。
簡単にいえば、「記憶喪失の男と秋」の話。
季節は秋(fall)の初め。
農場をいとなむBailey氏がもっとも好きな季節。口笛を吹きながら車を運転していると、ドシンという衝撃がある。
鹿を轢いてしまったのかもしれないと車外に出てみると、男が倒れている。なぜか男は逃げようとする。Bailey氏は男の腕をつかみ、とにかくトラックに乗せる。
家に連れ帰ったものの、男はどこか様子がおかしい。Bailey夫人が話しかけてみても、男は言葉を話さない。医者を呼んでみると、しかも記憶を失っているようだった。娘のKatyも興味津々だ。
その日から、男との奇妙な同居生活が始まる。
男は農場でのびのびと暮らし始める。
Bailey氏の農場を手伝うようになったが、男は疲れを知らず、ずっと働き続けても汗さえかかない。しかもウサギが妙になつき、まるで後についてくることを期待するように男をいざなおうとする。
Katyと座って夕日を眺めているとき、毎年秋に南へ飛んでいく渡り鳥を、男はまるで催眠にかかったかのように見つめている。
男はすっかり家族の一員になった。Bailey氏が演奏するヴァイオリンと夫人のピアノに合わせて楽しげに踊る。
ところがある日、男はまるで何かを思い出したかのように感情をあらわにする。木に走り寄り、葉を一枚ちぎると、精一杯息を吹きかけた。
その晩、男は初めて会ったときに来ていた革の服を着ている。目に涙を浮かべているので、一家はいまが別れの時だとさとる。男は突然いなくなる。
それ以来、毎年秋になると、農場では少し不思議なことが起きた。北向きの木々が紅葉したあともまだ、農場を取り囲む木々は1週間ほど緑のままなのだ。そしてそれらは一夜にして、周囲のどの木々よりも鮮やかに色づく。すると、霜のついた農場の窓には、「また来年の秋に」という言葉が刻まれるのだった。
なんていい話、とため息つきながらページを閉じた。
男は秋をもたらす精のような存在で、記憶喪失が、その年の紅葉を遅らせる。だから農場のまわりだけが緑のままになる。
ひょっとしてと思い、秋fallの話だからともう一度最初から読んでみたら、やっぱり。fallが見つかった(fell downという形で)。
男がトラックにぶつかって「転んだ」ことで秋の到来がつかの間忘れられ、fallが遅れる。
なんて気の利いた言葉遊びだろう!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
邦訳は村上大先生なのですよ。
でも、わざわざ、翻訳もの読まなくても、
原著は、中学生でも読めると思います。
絵と、この不思議観は、かなりシンクロしていて面白い。
表情の描き方がよいのだと思いました。 -
○あらすじ
夏が秋に変わる頃、Farmer Baileyは事故を起こしてしまいます。
トラックにぶつかった男は、記憶を失っていたため、
Baileyさんの家で預かることにします。
一体、彼は誰なのでしょうか?
(あらすじは参考程度でお願いします。)
☆感想☆
ストーリーも絵も本当に素敵で、今の季節にピッタリです。
木々が秋色に変わる感じが、とても綺麗でした☆
ハッとさせられ、じーんと余韻の残る作品でした。 -
2009年12月読了。
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YL:2.5
語数:915 -
卒論の研究対象にしようか、検討中・・・
日本語版は村上春樹が翻訳。 -
またまたオールズバーグ。<br>最高!これはも〜れつにおすすめです♪<br>夏の終わりにBaileyさんが轢いてしまった見知らぬ男。<br>Baileyさんは彼を家につれていき、お医者様をよんでみてもらうと、記憶が無いことが判明します。<br>それから何週間かともに暮らし、すっかり打ち解けていくのですが、彼がいる間に不思議なことが起こります・・<br>現実のなかのファンタジー、芸術的なイラスト、絶妙なバランスで見事に読者をひきつける彼の才能に、ただただ感心するばかりです。