スペンサーは自分の弁護士を通してバスケットボールの名門Taft University(架空)の学長に雇われ、Taftのバスケットボールチームの八百長疑惑の捜査にあたる。疑惑の対象はスター選手のDwayne Woodcock。NBA入り確実の大学バスケの大スターである。Dwayneを探り始めたスペンサーは、彼が文盲であることを知る。なぜ彼が大学でこれまでそれを知られずに四年目を迎えることが出来たのか?スペンサーは彼の将来を傷つけず、八百長から手を引かせたいと考え始める。そんなとき、スペンサーに会いに来たのはニューヨーク、ブルックリンの犯罪者、ディーガンだった。手を引いてくれという要求をはねつけたスペンサーに早速暗殺の手が伸びる。ホークの応援を得て、スペンサーは大学との契約を打ち切り、八百長を表ざたにせず、ディーガンにDwayneから手を引かせるため、計画を練る。
読み応えがあった一冊。おなじみスペンサー作品の第16作目。
Taft大学というのが出てきて、大学の所在地がWalfordという架空の町だとわかったとたん、私はこれはMedfordにあるTufts大学がモデルかな、と思った。ボストン付近の地理を知っている人ならそう思った人も多かったのではないだろうか。
しかし、途中でスペンサーの恋人スーザンがTuftsで教えているという描写や、Walfordはボストンの西で、ストロードライブ(ボストンのチャールズ河沿いに西へ向かう乗用車専用の高速)で西に行ったとか、そんな描写が突然出てくる。
下衆のかんぐりで、多分全然当たってないんだろうが、Tuftsを念頭において書き始めたものの、お話が発展してくるにつれて、これがTuftsだと内容から言って、かなり本当の大学に嫌がられそうな展開になってきたのであわててTuftsとTaftが両方あることにしたのかな~なんて思ってしまった(笑)。あまりにも名前が似すぎだし・・・。
ま、それはおいといて。ストーリーは実に面白く、ぐんぐんと読めた。スペンサーならではの、問題を解決はしたいが、同時にこの問題の一番の被害者である人間をなんとか助けたい、というジレンマの物語である。解決にいたるまでの人間ドラマもよく描けている。ホークがまた活躍してくれるし、スーザンもスペンサーが解決策を見つけるための助けとなる。
事件の渦中にいるバスケットボールの未来の大スター、ドウェインと、その恋人シャンテルの性格もよく描けているし、その他の登場人物も面白い。10作目のWidening Gyreに登場したゲリー・ブロズが登場する。ジョージタウン大学の学生だった、ボストンマフィアの御曹司のゲリーもいまやボストンに住んでいる。ゲリーの父、ジョーとその右腕の男はスペンサーとそれなりにお互いを尊重しあう位置関係を確立しているが、ゲリーは10作目でぎゃふんと言わされたことが忘れられないのか、スペンサーへの敵意は薄れていないようだ。これからまた登場するかも。
最後は希望が持てる終わりとなっており、後味も良い。スペンサーの料理シーンもちょこちょこ出てくるので、これが好きでシリーズのファンになっている人には楽しい作品でもあると思う。実際作ってみると、そんなにすごく美味しいわけでもない、という噂もあるんだけど(笑)。