Hundred-Dollar Baby (Spenser)

著者 :
  • G.P. Putnam's Sons
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  • Amazon.co.jp ・洋書 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780425217559

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  • スペンサーシリーズ第34作目。

    第9作のCeremony(邦題:儀式)及び、第13作のTaming a Sea Horse(邦題:海馬を馴らす)で登場したエイプリル・カイルが再びスペンサーの前に現れた。9作目で親にも見捨てられ、売春しかできないエイプリルをニューヨークのマダム、パトリシア・アトリーのもとにスペンサーが連れて行ったのはもう彼女が10代の頃。せめて待遇のいい高級娼婦に、という苦肉の策だった。その後13作目では役立たずの男と恋におち、またスペンサーに助けられる羽目になった。そんな彼女が助けを求めてきたのだ。

    アトリーからボストンでの高級売春宿を任されていたエイプリルは、正体不明の男から脅迫を受けているという。ホークとスペンサーで、正体不明の男に雇われたチンピラを追い払い、その後スペンサーは誰が脅迫しているのか探り始める。しかしあっという間にチンピラを雇っていた男は殺された。ニューヨークとボストンを往復して、スペンサーはエイプリルが好きだったらしい男を調べる。

    捜査すればするほどわかってきたことは、エイプリルがスペンサーに嘘をついていたことだった。それでもスペンサーはスーザンに相談しながら何とかエイプリルを救う道を探し続ける。おそらく無駄な努力だ、と悟りつつも・・・。そして話は悲劇の結末へと急速に近づいていく。

    シリーズの読者なら誰でもわかっていることだが、スペンサーはセンチメンタルなお人よしである。決して世の中の現実を知らないわけではないし、一人前にシニカルでもある。しかし、困っている人を見るとスペンサーはどんなにその人が悪い人でも放っておけなくなってしまうところがある。

    スペンサーが助けた青少年といえば、もちろん他には「初秋」のポール・ジャコミンがいる。エイプリルとは対照的に、ポールはスペンサーのおかげで救われ、成功して立派な大人となった。今でもスペンサーを父のように慕っている。

    しかしエイプリルは違う。彼女はスペンサーの努力の届かないところにいる。人を救うということはどういうことか、人はどこまで変われるのか、そんな重いテーマを、今回の作品はスペンサーとホーク、スペンサーとスーザンの会話を通して読者に問いかけてくる。

    スペンサーは結局エイプリルを救えなかった。しかし彼は最後まで彼女を見捨てることも出来なかった。最後の章はハードボイルドにふさわしい結末だが、同時にあっけなくもあり、なんとも悲しい章である。

    しかし、パーカーが私たちに問いかけているテーマは重くずっしりと心に残り、読み応えのある作品である、と感じた。このシリーズも残り少なくなってきたがこのまま次作へ進む。

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