- Amazon.co.jp ・洋書 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9780425230176
感想・レビュー・書評
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スペンサーシリーズ第36作目で2008年の作品。邦題は「灰色の嵐」。
24作目のSmall Vices(悪党)と32作目のCold Service(冷たい銃声)に登場した殺し屋、Gray Man(灰色の男)別名Rugarが登場する。24作目では雇われてスペンサーを殺そうとし、32作目ではスペンサーに雇われて一緒にある町のギャングを一掃する手伝いをした。
スペンサーは金持ちと結婚・離婚を繰り返して大富豪となった女性、ハイディ・ブラッドショーに依頼され、ハイディの娘アデレードの結婚式でハイディのエスコート役として出席するが、そこにRugarが現れ、花婿や牧師を殺して花嫁を誘拐した。スーザンも出席していたため、彼女の安全を最優先したスペンサーは花嫁の誘拐を防げなかった。
プロのプライドをかけてスペンサーは事実の解明に乗り出す。しかし、Rugarを知るスペンサーにとって、今回のやり方はどう見てもRugarらしくなかった。謎が謎を呼ぶ。そしてハイディを取り巻く人間関係の中から、娘アデレードや過去の夫たちを利用してきた冷酷で利己主義なハイディの姿が見えてきた。どうしても理解できなかったのはなぜRugarがこんな仕事を引き受けたのか、ということだった。
どうやらこれがRugarが登場する三部作の最後、ということらしい。上記の謎、Rugarがなぜこんな彼らしくない誘拐劇の実行を引き受けたのか、本では最後まで明かされないが、後半になると、もう読者には明らかである。
Rugarは最初はスペンサーの敵として登場するが、次に登場するときにはクールながらも頼りになる仕事仲間であり、不思議な魅力をたたえたキャラクターである。おそらく読者の中にはファンも少なくないことだろう。
だから、今回また、スペンサーとRugarが敵対する立場になったとき、一抹の寂しさと、Rugarをスペンサーが殺さざるを得なくなるのかな、という不安を覚えた読者は私だけではないはず。
そして、最後にスペンサーが下した決断にほっとして本を閉じたファンも多かっただろう。あのホークでさえ、今回は度肝を抜かれたようで、スペンサーの決断に100%同意していた。ホークの人間味も垣間見られて嬉しいエンディングである。
力強いストーリーで、何よりRugarとスペンサー、ホークたちの間にあるプロとして、そして男として警戒しながらもお互いに敬意を払う姿が潔い、いい巻である。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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