Pale View of Hills

著者 : Kazuo Ishiguro
  • Faber & Faber (2005年3月3日発売)
3.79
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  • 本棚登録 :40
  • レビュー :8
  • Amazon.co.jp ・洋書 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780571225378

Pale View of Hillsの感想・レビュー・書評

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  • 英文から、戦後間もない長崎弁、あるいは標準日本語を想像する楽しみがあった。おそらく著者のカズオ・イシグロはそんな方言の違いを明確に区別することすらままならないのだろうけれども、日本語を知る、おまけに長崎弁をある程度知る一読者として、本作を日本語小説として再構築する役割を担っているような錯覚にとらわれた。英文を読みながら、ああ、これはああいう日本的言い回しのことを言いたいのだな、とか、想像が膨らんだ。逆に、こういった表現は、日本語とは本質的に相容れない、日本育ちの人間が言うとは思えない、と思わされるセリフもあり、ものすごく不思議な心地になった。
    まるで、日本語話者にとっての紋切り型と、英語話者にとっての紋切り型が混交して、まったく新たな光景、心理を生み出しているような、そんなプロセスに興奮させられた。

  • 戦後の長崎が舞台。
    イギリスに住む女性の回想。
    非常に静かな世界観。
    戦後の価値観の混乱の中で、
    各登場人物の微妙な
    コミュニケーションのすれ違いが静かに描かれる。
    何も明かされないまま、物語が終わるが、
    非常に心地よい読後感。

  • 原書で読んだけど、凄く読みやすい。舞台の半分が長崎なのと、英文が平易なので読みやすい。
    洋書入門にお薦め。

  • 読み助2010年7月22日(木)を参照のこと。
    http://yomisuke.tea-nifty.com/yomisuke/2010/07/kazuo-ishiguroa.html

  • <あらすじ>

    現在イングランドで一人暮らしをしている エツコに、次女のニキが訪ねてくる。エツコは長女ケイコの自殺を思い、長崎で過ごした戦後のある暑い夏を回想する。前の夫と過ごす家には義父が遊びに来ていた。エツコはサチコという女性と知り合い、そこには不思議な友情関係が存在した。彼女はアメリカで生活をして幸せになると信じ、娘は戦争でのショックと母親のこともありしばし大人を戸惑わせる行動を取る。話はしばしマンチェスターと長崎を行き来する。


    <レビュー>

    語り手はエツコ本人、だが、エツコの心情はほとんど読者には伝えられない。彼女の仕草や行動、また、夫、義父、サチコ、マリコ、ニキなどの登場人物との会話でエツコの人物像が浮き上がってくる。話す態度や言葉遣いは変わらないのに、物語の最後にはもう何年もこの女性を知っているような錯覚になる。エツコ本人は物静かで奥ゆかしく、謙虚で気遣いの出来る女性、妻、嫁、である。(ちなみに彼女は妊娠中)現在(イングランド)と過去(長崎)での彼女にギャップはあまり見られないが、娘の死、次女の存在、一人暮らし、イングランドなど、そこには歴然とした変化と温度差が存在する。物語は彼女の記憶の一部であってその夏以降の記述はほとんどないが、エツコが辿ってきた歴史が次女ニキと娘の自殺を共有することで更に現実味を増し、夏の思い出がより美しいものへと変わる。

    変わりゆく時代の中で生きるエツコの周りには多くを語る人物がいる。女性の教育、社会進出など娘のためと(自己主張だろうなーと言えるが)強調しアメリカに未来を託すサチコ、その変化に翻弄され心を閉ざし奇怪な行動に走る娘マリコ。蕎麦屋(?)で一人生計を立てる中年女性は終戦後の現実とも見れる。また、エツコの夫や義父周りの男性的要素では戦争経験世代と新たな時代を築く世代の摩擦も物語では一つの筋を作っている。気になった点としてあげられるのは、この作品では死のイメージがやや強いことである。マリコの追う謎の女性像が象徴するものは彼女の恐怖心からだろうが、大人の女性たちはそれを知らない。また、家庭や結婚についての見解もやや否定的で子どもたちに心からの幸せなイメージはない。読者は生まれたケイコに会うこともないし、戦死した息子の女性も出てくるし、子どもを巡っての殺人事件も周りで起こっている。物語の最後はエツコを訪ねたニキが帰るところで終わる。テーマは死、家庭、結婚、戦後、国際化、世代摩擦、といったところだろうか。

    読み終わってからは、美しいイメージの中に怪奇的な要素も寄り添い、何となく幻想的、少し浮ついたような感覚になった。ここで終わるのか、と戸惑いはあったものの、こうして思い出してみると何だか一つに収まったように思う。私が興味深く注目したのは「日本生まれのイギリス人作家」が「日本人女性」を「英語」で描いているということ。東洋的な雰囲気はハリウッド映画によくあるように、戦後をやや理想化しているようにも受け取れる。そしてそれらが英語で書かれているのがまた新鮮だった。そして舞台はイングランドであるが、多くは彼女のフラッシュバックの中で日本の終戦時代を描いているということで、二つの国と時間を行き来している。なのに全く違和感がなかった。素晴らしい。英語は癖がなくとても読み易いのであっという間に読み終わってしまった。日本語版ではもう発売されていないようだが中古では入手可能である。ぜひとも英語で読んでほしい。これはイシグロの処女作であって、なんと彼は28歳で一人の女性像を築き上げてしまっている。年齢を知って驚いた。

    イシグロ作品第一段、あんた好きになりそうよーってことで星は4つ。

  • YL7.0 63,796語

    日本からイギリスに渡ったエツコ。
    再婚し、誕生した次女ニキは現在ロンドンに住んでいる。
    前夫との娘、長女ケイコが自殺し、ニキが彼女のもとに
    やってくる。
    そんな中、エツコは戦後間もない長崎で暮らした夏の日
    を思い出していた。

  • すばらしい。この作家ではいちばん好き。

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