A Pale View of Hills

著者 :
  • Faber & Faber
3.60
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本棚登録 : 51
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・洋書 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780571258253

作品紹介・あらすじ

In his highly acclaimed debut, "A Pale View of Hills", Kazuo Ishiguro tells the story of Etsuko, a Japanese woman now living alone in England, dwelling on the recent suicide of her daughter. Retreating into the past, she finds herself reliving one particular hot summer in Nagasaki, when she and her friends struggled to rebuild their lives after the war. But then as she recalls her strange friendship with Sachiko - a wealthy woman reduced to vagrancy - the memories take on a disturbing cast.

感想・レビュー・書評

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  •  他の方もレビューに書いておられるが、本書では多くのことが曖昧なまま、読者の想像に任されている。Nagasaki での生活はその後どうなったのか、なぜEtsuko はEngland に来たのか、Americaに着いたら便りを寄越すと言ったSachiko から結局連絡はあったのか…。
     勿論直接的な原因は、公園で見かけた少女からMariko を思い出したということなのだろうが、なぜEtsuko が、Sachiko との親しい交流があった長崎での一夏のことを思い返しているのか、よく分からなかった。最後の最後になって、漸く少し分かったような気がする。それは、ごくごく簡単に言ってしまえば「過去との別れ」ということなのだろうと思う。碌でもない男との未来に希望を託すSachiko、戦争中に見た不気味な影に怯えるMariko 。昔の日本の姿が次第に失われていくことを嘆くOgata-san、そんな考えはもう古いんだという彼の教え子、自分の仕事で精一杯でOgata-sanの言葉にまともに取り合わないJiro 。無意識のうちにかSachikoと同じように海を渡って日本を離れるEtsuko 、家族の連帯を尊ぶOgata-san、結婚なんて馬鹿げていると言い自由であることを楽しむNiki、Mariko が可愛がっていた仔猫を川に沈めるSachiko 。そして今を生きる若いNiki と、恐らく中年に達し追憶の中穏やかに生きるEtsuko。そういったものが互いに響き合って、えも言われぬ不思議な雰囲気を醸し出している。一人称の視点人物であるEtsuko の感情があまり語られないのはKazuo Ishiguroのお得意の技(?)で、その控えめな筆致は好感が持てるものなのだが、それは別にして、Etsuko が今一番気にしているであろうKeikoのことが全くと言って良いほど何も語られないのは、不気味にさえ感じられる。
     読み終わった後に他の人のレビューを見たところ、Etsukoは所謂”unreliable narrator “であるようだが、僕はん?と少し疑問に思った程度で、仕掛けに気づけなかった。残念。やっぱり英語力がなぁ…。

  • 様々な部分が曖昧ではあるが、この本は自己正当化に関する物語なのではと感じた。

    ホラーとも呼べる作品。とても引き込まれた。

    英語も簡単。

  • カズオイシグロの1980年台の作品です。舞台はイギリスと、回想の中での長崎で、主人公の今と過去、そして、主人公の取り巻く登場人物たちが、なんと言ったらいいんでしょうか、淡い光と闇の中で、お互いににじみあって混じり合ったり、誰についての記憶なのかが曖昧になったりと、なんとも不思議で、それでいて寂寥感を残す作品でした。

  • 遠くまで続く丘陵が薄明かりの中霞んで見える。タイトル通り、つかみ所のないあいまいな過去の記憶を、主人公がたどっていく物語。純文学ってこういうものだよなあ、としみじみ感じます。

    英語で読んでいるのに、長崎時代のストーリーは、私の脳内では小津安二郎監督による映像で上映されていました。小津安二郎の普遍性と、カズオ・イシグロの日本研究と描写力のなせる業でしょうね。

    以下ネタバレですが、
    特筆すべきは
    ・娘の自殺の理由
    ・長崎時代のその後
    ・英国に来た理由
    が全く描かれていなかったこと、
    ・無意識の中で義父やサチコの行動に追随していること
    ・「縄」のエピソードが重複して出てきたこと(おそらく)
    ・ケーブルカーに乗ったのが「ケイコ」にすり替わっていたこと

    幻想的でミステリアスな作品でした。英語の勉強として簡単な文章ながらも文学に触れたいと思って選びましたが、これはもっと読解力がついてから再読したいです。

  • [戦争と日本人を静かに語る芋 / 長崎とイギリスを舞台に / 抑制された文体] 「女たちの遠い夏」と日本書紀の題名ですが、そのHillsとは長崎の稲佐山です。イギリスの(日系人)作家(1954~)の初期作品。日本人の軌跡がはるりき山と重なります。

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