Klara and the Sun: The Times and Sunday Times Book of the Year

著者 :
  • Faber & Faber
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本棚登録 : 62
感想 : 8
  • Amazon.co.jp ・洋書 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780571364879

感想・レビュー・書評

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  • 人のエゴにまつわる卑屈さとか後悔がばんばん描かれてるから、もし生身の人間の登場人物(特に母親)視点で進んでたら読むのしんどかっただろうな〜
    語り手がAFのKlaraだから口当たりが比較的軽いし救いがある感じになってて、それでいて、鋭く且つ丁寧に人の感情を切り取ってるのがめちゃくちゃ巧いと思いました。

  • カズオ・イシグロの話題の新刊、読みました。
    率直に言って感動です。
    AF(意味を書くともう中身が分かってしまうので書かないとして)を主人公とし、かつ、語り手としたことから、その「目」や「耳」などの「感覚」(と言っていいのか)を通じて四囲の環境や、人々の有り様、人々の心の動きを「感情」を持って把握・理解して、自らの言動に反映させていく様子がさりげなく表現されていて、それが新鮮というか。
    そして「心」を持つAFがその役割を果たしたのち、どうなるのか、その「記憶」「想い」はどうなるのか。
    最後のページまで、目が離せません。

  • みんな書いてるけど、読み始めてすぐに”Never let me go”を連想するから”AF"ってAIと思わせておいて一捻りあるのか?とか恐れおののきながら読んだんだけど結局“Artificial Friend”で良かったのね。

    予感させるほどの鬱展開ではないけど、当然「ずっと しあわせに くらしましたとさ」と終るわけでもない。余韻としては割といつもの彼の読後感。

  • 人工知能ロボットAF(Artificial Friend )Klaraと、遺伝子操作により病弱となった少女・Josieの物語。
    邦題が「クララとお日さま」であること、また装丁のテイストにより児童文学よりかな?という危惧もあったが、「Never let me go」の流れを受け継いだリアリスティックなscience fictionだった。そこかしこにただよってくる不穏さもまた良い。がしかし、人間の心理描写が現実的(露悪的なふしもある)のに対して、AF・Klaraはピュア。人間の感情を学んでいく過程で善意ばかり掬い上げたのか?と思うほど。両者の対比が強く心に残った。
    最も印象的だったKlaraの言葉を引用する。
    “There was something very special, but it wasn’t inside Josie. It was inside those who loved her.”

  • 今本屋に行くとずらりと並んでいる、イシグロさん最新作。ちょっと前に “The Remains of the Day” を読んだこともあるけど、なにせこの本の赤いジャケットが目立って気になってた。あらすじをささっと読んで、AIの話なんだろうという事だけは知りつつ、今回も耳読書にて読んでみた。

    まずは、AIであるKlaraが人間の女の子Josieの家に住むようになるまで店頭に飾られている間の、彼女の目線による人間観察の様子だったり、ソーラーで動く彼らAIにとってライフラインとなる太陽光の存在 (Klaraにとって太陽は全知全能の神的存在で、人間の体力を回復させる力すら持っていると信じている)、そして他のAIとの関係性の描写が新鮮。Klaraは観察力がズバ抜けていて、人間界の色んな事に気付いたり、彼女なりに人間の感情を理解しようと真剣に考えたりするんだけど、それがこの物語の要である『愛とは何か』という問題に深く結びついているんだろう。そして、彼女の目を通して描かれる世界だからこそ、Josieを始めとする周りのティーンの子供達が”lifted”なのか”unlifted”なのか(知能を高める為に遺伝子的な調節をされているのか、いないのか)という会話の内容の解釈が読者自身に委ねられていたり、Klaraが周りの人間にどんな扱いを受けても感情的になることなく冷静に相手の感情を分析しようとしたり、彼女が「Josieの病気は太陽の力を借りれれば治るけど、それには空気汚染を生み出す憎きCootings machineを破壊しなければならない」 という結論に辿り着く理由で、AI側から見た人間の世界というのはこんな風に映る可能性があるのかぁ、と面白い。でも、最後の展開で、太陽の力のおかげ云々は置いておいて、奇跡のように回復して大学に進学出来るまでに成長したJosieが家を出た後、すぐにジャンクヤード的な場所に捨てられてしまったKlaraが描かれていて切なくなったし、自分のエゴの為に娘Josieの遺伝子を操作しておいて、それが原因で病気になってしまった彼女が死んだ場合にKlaraを娘の身代わりにしよう…とJosieそっくりのAIまで用意していたのに、Josieが大学進学の為に家を出た後用無しとなってしまったKlaraをいとも簡単に捨てる母親の行為が、人間の身勝手さを表している。それでも、誰を責める事もなく、そこに一人で座って今までの記憶を回想していくKlaraが尊い…。

  • カズオ・イシグロの作品にはなんとなく二つの系譜があると思っている。
    集合体としての記憶と個人単位での記憶との交差や不整合性、その上での記憶の恣意性や不安定性を追及したものと、進化する技術や社会に影響され、それと向き合う個人を問うたもの。後者の物語には歴史の陰影が乗っからず、奥行きを感じにくい。

    本作はNever Let Me Goの系譜を継いた後者の物語だから、正直どこまで好きな作品になるのか分からないと恐れながら手にとった。自分がテクノロジーのど真ん中の位置にいることもあって、定型文的なAIの脅威が並べられていても興醒めだなとも思っていた。

    結果としては大きな杞憂だった。確かに後者の系譜だったけれども、Never Let Me Goと比べると曖昧さや揺らぎを残し、更に社会の幻影(つまりこの小説の中にある集合体の記憶)がちらほら見え隠れする、解釈が求められるより奥行きのある作品に進化している。とくに本作の要になる『お日さま』に対してクララがとった行動は、果たして単純な人工知能の過学習による誤りなのか、あるいは人工知能の深層学習でしか導き出されない解だったのか、その解釈の余地を残したのは秀逸だと感じる。

    人工知能をテーマにしたSF小説は人工知能の反乱が定石だが、その定石を崩して、プログラミングされた善意と行動規範にしたがって行動し続けるAIを描いたのも考察に値する。この設定によって、時代に置き去りにされる個人、価値観や記憶が過去の判断に捉われたままの個体、という別のイシグロ作品の大きなナレーティブへとも無理なく物語が繋がる。

    これはThe Remains of the Day, あるいはThe Buried Giantに匹敵する名作かというとそんなことはないが、確実にカズオ・イシグロの進化が見える一作でファンとしては喜びしか残らない作品だった。二つの系譜と最初で書いたけど、その二つの文脈が無理なく融合した重厚な名作が読める日も近いのかもしれない。

    ーーー
    以降自分の2017年の日記からの覚え書き・抜粋:
    カズオ・イシグロはデビュー作とその直後の作品群は日本の戦争の記憶をベースとしており、記憶の曖昧さと人間と社会の関わり方にいかに幻想と操作が入り混じるかを追求している。戦争への集合的な記憶とその追及がまず彼を作家として突き動かしたと言える。

  • ニンゲンムズカシイ

  • Audible。 ナレーターはSura Siu。

    おそらくイシグロの読者なら、これを読んでNever Let Me Goを全く連想しない人はいないと思うのだけれど、だからと言って単なる焼き直しというわけでもなく、しみじみ読みました。
    人を愛するとは、人のアイデンティティとは、といったテーマはあると思うのですが、わかりやすくこうだからこういう意味でしょ、こういう話でしょ、ということはなくて、一言で言えるなら小説で書かないよ、と言われているような感じでした。いつものことですが。
    これまでのイシグロ作品に比べるとちょっと小品感もありますが、愛すべき作品だと思います。ただ、portraitの話は私にはなんだそりゃというかそもそも主体としてのJosieの主観はどうなるっていう感じでその問いかけをしたいこと自体がよくわかりませんでしたが。そっくりのふたごだって同じ人ではないだろうっていう。

    ナレーションはクララの声も他の登場人物の描写も素晴らしい出来だったのだけれど、やっぱりこういう文芸作品は黙読の方がよいかもとは正直思いました。でもランニングや歩いて通勤するときに「読書」ができないとなかなか時間がまとめて取れないのよね…。

    とはいえ全体としては読んでよかった。

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