- Amazon.co.jp ・洋書 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9780571364886
感想・レビュー・書評
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カズオ・イシグロさんの邦題『クララとお日さま』。
AF(Artificial Friend)のKlaraの物語です。
悲しい結末になるんだろうと思いながら読んで、やっぱり悲しい気持ちで読み終えました。
Klaraは自分を友達に選んだJosieを本当に大切に思っていて、捨て身でJosieを救います。成長した子供が、幼い頃大切にしていたぬいぐるみを忘れるみたいに、最後は離れ離れになってしまうのに。
最後のシーンでKlaraは思いがけない人と再会します。そこでKlaraが語る内容を読んでいると、自分が幸せか不幸せかを決めるのは、詰まるところ自分自身なのかな、と感じました。
読んでいてKlaraは本当に可哀想だと思うけれど、重要な場面では自分で行動を決めていて、後悔していない。周りの人たちの好意を信じて感謝して、周りの人たちの役に立つことを本心から幸せだと思って疑わない。自分の運命についても、読んでいるこちらの解釈とは全く異なる解釈をしていて、それも疑っていない。とても心揺さぶられました。
KlaraがAFとして優秀であり、恵まれた環境で務めを終えられたことはよかったのでしょう。Klara自身にとっても。
それでもやはり切ない思いがします。
日本語版のカバーには女の子の絵が描かれていましたが、あれはKlaraなのかな。この本で与えられているイメージは表紙にチラッと見える『お日さま』だけです。本文の中にはKlaraが"Robot"と呼ばれるシーンもあって、彼女がいわゆるロボット(『オズの魔法使い』のイメージみたいな、例えば銀色の機械!っていう感じの。もしくはドラえもんとか、動物やお人形に寄せた感じ)なのか、もっと見た目も人間に寄せたアンドロイドなのか、どっちなんだろう。読み終えて、そんなことを思ったりしています。
人間は、自分が作ったものや所有したものにどこまで責任を持てるのかな。それを思わずにあれこれ作ってもいいのかな。
AIがKlaraほどの「思い」を持つとしたら、それはダメでしょう、と思わずにいられない、そんな物語でした。
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Josieという病弱な女の子の家に買われていったKlalaという名のAIは、太陽の光に不思議な力があると信じている。Klalaはこの太陽の力を借りて、Josieの病気を治したいと考えている。精一杯Josieに尽くしたいと思っている。
このKlalaの忠実ぶり、ひたむきさは、『日の名残り』の執事や『わたしを離さないで』のクローン人間にも通じるもので、また、身分の非対称、手にしている情報の非対称が読み手に生じさせる切なさを増幅させる点も読後感が似ていると思った。
Klalaは、人間ではないがゆえに人間と同等の扱いをけっきょくはしてもらえない。それどころかいいように利用されそうにもなる。にもかかわらずJosieに尽くそうとする様子は読んでいてつらい。
もうひとつ上の二作との共通点に気がついた。日の当たらない場所にいながら、いるからこそ、執事もクローンもKlalaも、作中でもっとも知恵ある存在だということ。 -
最初は「liftedって?」などとなったけど、どういうことかわかり始めると、クララの健気さとまっすぐさが切ない…。最後は切なすぎてぼう然としてしまう。
これを読んでからAIの発達のニュースや道路工事の車両を見たりすると、複雑な気分になる。
人間はどこに向かっているんだろう。文明の進化って、正しいことなのだろうか。 -
ジョジーとそのAFクララ(人間の形をしたAI)の物語。ジョジーが病気から回復するために、太陽にお祈りをしたり、自ら行動を起こす中で恐怖や緊張、愛情も感じるクララを見ていると、人間とAFの違いはなんなのか考えずにはいられない。
以下他の方のコメント、個人的に刺さったので。
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『…でも、カパルディさんは探す場所を間違ったのだと思います。特別な何かはあります。ただ、それはジョジーの中ではなく、ジョジーを愛する人々の中にありました。…』これが陳腐な「AIでは人の温かみを再現できない」的な主張に聞こえず、むしろその逆に思えて悲しく響くのは、外ならぬクララが全編にわたってそのお日さまのような温かさを体現してきたからに他ならない。クララにも『特別な何か』があることを読者は知っているのに、人にとっての役目を終えたクララは寂しい場所に廃棄され、幸せな記憶を思い出し続けているのだ。 -
最初からイシグロのエッセンスを強く感じた作品。
みんな思ってる事があるんだけどなんとなく言える雰囲気じゃなくて、でもみんな分かってることをみんな知ってる、みたいな。言葉に表すのが難しい、、
わたしを離さないで、とか、充たされざる者、とか、フィクション色が強いイシグロの他作品を彷彿とさせる冒頭部分だった。
細かい設定、例えばKlara は誰と話していてもYou、heとかではなくてJosie, mother, Rickみたいに名前で呼ぶとか。物の名称を知らないから、The cooting machine, Grind our own beef cafeとか、見たまんま名前を付けちゃうところとか。人間より発達したAFなのに可愛げがあってクスッと笑えるところが凄く好きだった。
物語としてはありがちな設定かとも思ったけど、KalraがJosieを”continue”する計画とか、Rickとの階級差とかが入ってきて、やっと物語が豊かになる。使われてる言葉や話の進み方は読みやすくて、狙ったのかそうなってしまったのか分からないけど、今までイシグロを読んだことがなさそうな若年層にも海外で人気が出てるのが頷ける内容だった。
初めてイシグロを原書で読んだので読みやすい内容でホッとしたと同時に、充たされざる者の後に読んでしまったので、もう少し迷宮に潜り込んだような小難しい内容を期待してしまってもいた。
綺麗なラスト。何もかも上手くいったわけじゃないけど、最後にManagerに会えて良かった。この後Klara はどの様に終わりを迎えるまで過ごすんだろうと、Managerはどんな思いで振り向かずに去ったんだろうと考えると、胸が苦しくなる。母親はどうしているだろう、JosieはずっとKlara を覚えているんだろうか。
みんな日光を欲しがってるのにそれがタブーとされているのって、公の場でお腹空いて食事にがっつくのがタブーとされてるイギリス文化ぽいなと思った。 -
天才だ。
人よりもAFが人の心の奥深さと真似できない何かを感じる。
人が発達させすぎたAF達は何か大事なものを失い、それに人は怯える。
太陽の力というシンプルなものを忘れ環境破壊を続けていく人。
永遠を誓いながら別の道を歩く人と、それでもその中の何かを信じるAF。
太陽に当たって人が復活するといえばどんな駄作だと思うかもしれないけれど、どんな啓発本よりもメッセージが強い。 -
AIロボットの物語だけどたぶんそうじゃなくて、私たちが歳をとってさよならを言うことをなぞったとてもとても美しい物語。
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Klara, an "Artificial Friend " mounted with AI, meets Josie and they deepen their friendship. The story is narrated by Klara who is a robot not a human, and makes us think about "What is the meaning of love?".