Catch and Kill: Lies, Spies and a Conspiracy to Protect Predators
- Fleet (2019年10月15日発売)
本棚登録 : 15人
感想 : 1件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・洋書 (464ページ) / ISBN・EAN: 9780708899274
感想・レビュー・書評
-
この本は、ハリウッドの大物プロデューサー、ワインスティーンによる慢性的なセクハラ行為ともみ消しの実態を雑誌ニューヨーカーが記事にし、逮捕に至らしめた経緯について、その記事のライター自身が詳細に描いたもの。
彼の逮捕のニュースは日本の新聞でも小さく取り上げられていて、当時私も、日本人には知られていない名前なのに一般の新聞記事になるほどの大事件なの?一個人のセクハラが?と驚いた記憶がある。
でも、特に女性の権利とかセクハラ問題に強い興味があるわけでもないので、新聞の記事以上のことを知りたいとも思わなかった。
だから、この本も渡辺由佳里さんがおすすめしていなかったら読んでなかったと思う。
いやしかし、おもしろかった。
大変に読み応えのある本だった。
いろいろと考えさせられることが多くて、どこからどう感想書いていいか分からないくらい。
読んでいて思ったのは、この本は、単にメディアの大物エロじじいが逮捕されるまでの顛末を描いた、というような単純なものではないということだ。
この本が提示しているテーマは一つではないのだが、一番大きな命題は「あなたはいつどんな時も、正義の側にいられるだろうか?」ということである。
このワインスティーンというのはとんでもない悪党である。
気に入った女性を、なんと組織ぐるみで堂々と罠にかけ、レイプする。そのレイプのお膳立てをするために雇われている人もいたという。
被害者の女性(多くは女優)が声を上げようとすると、探偵などを使って徹底的に調べられ、あることないことを関係タブロイド紙などに書き立てられ、名誉とキャリアをずたずたにされる。あるいはその情報と引き換えに沈黙を強要される。
勇気を出して警察に行った女性は、立件した後、息のかかった検事からなぜか敵対的な質問を浴びせられ、結局は棄却となる、といった具合である。
大手TV局NBCで調査に当たっていた著者は、調査が進むにつれ、同僚や上司たちが次々に意味不明の理由でそのネタに対して突然、消極的にふるまい始めることに気づく。やがて、目に見えない圧力により、TVでの放映はおろか、調査そのものの続行が事実上不可能となる。
孤立無援で、自分のクビすら危うくなっていく中、著者はレイプ被害者の一人に、TVで取り上げられる可能性が低くなっていることを正直に告げ、製作サイドに何か言うことはないか、と尋ねると、その被害者の女性がこう答える。
「彼の悪事を知っていて報道しないということは、つまり、あなたたちは歴史では間違った側にいたということよ。必ず彼のやったことは明るみになる。早くしないと、あなたたちが多くの女性を救えると分かっていながら黙っていた、と世間が知ることになる」
その後、彼女の言葉は現実になるわけだが、しかしこの「歴史で間違った側」につかずに自分の信念を貫けるか、というのは本当に本当に難しい問題だと思った。
建前を言うのは簡単だけど。
著者自身も、目に見えて四面楚歌になっていく状況で、激しく苦悩する。
読みながら何度も思った。
私はどうだろう?
自分の体面や、ステイタスが脅かされそうになっても、私も変わらず正義を貫くことができるだろうか?
莫大な金額と特権を提示されて、誰かを陥れるような嘘の証言を求められた時、私はちゃんとNOが言えるだろうか? NOと言うことは、自分のキャリアを絶たれるという意味だったとしたら? 機嫌を損ねてはいけない相手から「頼むよ」と直接頭を下げられたら?
これって、ワインスティーンの問題に限らないよなぁ、と思う。
戦争中に政治家だったとしたら、私は「歴史で間違った側」に抗うことができただろうか?
これって飛躍しすぎ?
じゃあ、もっと近い時代の身近?な話にもっていくと、たとえばモリカケ問題とか桜を見る会とかの安倍の一連の問題の指示ラインのどこかに自分がいたとして、いつも歴史で正しい側にいられるかしら・・・(例えがイマイチでしょうか・・・)
著者のローナン・ファローは女優ミア・ファローとウッディ・アレンの息子さんらしいのですが、そういう有名家族の名前が邪魔なくらい、いい仕事をする人だと思った。
私たちがイメージする「アメリカのメディアで成功しそうなアグレッシブなタイプ」では全然なくて、むしろ日本の会社で私の隣の席にいそうな人。
自分の意見が組織と違っていたら、極力対立を避ける方向で進めていて、自己主張に必死なタイプからは程遠い。
調査をやめろという上司に珍しくキッパリとNOと言ったとき、肝心のところで声がかすれてしまった、とか書いてあって、めちゃくちゃシンパシイ。
わかる、私も決めたいところでいつも決まらないんだよなーと激しく共感する。
でも、共感したと言っても、私とは比べようもないくらい骨のある人だとも思った。
一見優男で、全然マッチョではないけど、でも、こういう男こそを強くてかっこいいと言うんだ、と思った。
この人の書く文章もとても好きだった。
深刻な話なのに、ところどころでクスッ。
特にジョナサンとのやりとりはめちゃくちゃ楽しくて好きだった。
ジョナサンとほんっと仲良しだなー、親友っていいな、などと思っていた私は、まだまだLGBTQを特別なことと思っている日本人の一人だなぁ、と思った。最後の最後の方で恋人だと気づいてビックリ。
もっと早く気づけよ!!! どう見ても恋人じゃないの! と自分にあきれた。詳細をみるコメント0件をすべて表示
RonanFarrowの作品
