Parallels & Paradoxes: Explorations in Music and Society
- Bloomsbury Publishing PLC (2004年3月1日発売)
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感想 : 1件
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- Amazon.co.jp ・洋書 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9780747563853
感想・レビュー・書評
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素晴らしい、素晴らしい本です。
ピアニスト兼指揮者のバレンボイムと、文学研究者兼文学批評家のサイードの対談集。
ロシア系ユダヤ人の祖母を持ち、アルゼンチンはブエノスアイレスに生まれたのち、イスラエルで暮らし、思春期と成人してからのほとんどをヨーロッパで過ごしたバレンボイム。
パレスチナはエルサレムで生まれ、レバノンなどでも育ち、アメリカに移住したサイード。サイードは、文学研究者ではあったけれど、とても才能のあるピアニストでもあり、音楽に関する著書も多い。
おいそれと近寄れないような希有な才能の輝きを持つふたりの対談を読むのは、彼らの思考の片鱗に触れることでもあり、おそらく、凡人では覗き見することも叶わない場所への同席を許されたような、頭がくらくらするくらい恐れ多くも素晴らしい本。
交わされる言葉のひとつひとつが重く、こちらの知性に常に挑戦してくるようなものなので、読みながら、何度も何度も本を閉じ、頭の整理をしなくてはいけなかった。
「音楽」や「文学」から華麗に広がって行く議論の紋様も、この世の色々なものに類似点を見出しそこから何かを紐解こうとする論理の構築も、それでいて「政治」と「音楽」を混同したりなど決してしない精神的な成熟さも、すべてがすべて、目から鱗がはがれ落ちて、なんなら盲目になってしまいそうなくらい、ただただ、ひたすらに、この二人の精神に尊敬の念を深めるばかり。
背筋がぞっとするほど、知性的。見栄や傲慢や、栄華や名誉なんかには目もくれず、じっと自由な思考にふけるふたりの姿は、国や性別なんかを超越した、すべての人間への愛を感じる。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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