The Wonderful Wizard of Oz
- Independently published (2019年7月7日発売)


- Amazon.co.jp ・洋書 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9781079146226
感想・レビュー・書評
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久しぶりに洋書を読み切った。
SNSで、大衆娯楽のライトノベルは低俗だから我が社は高邁な物語を提供します、みたいな出版社が話題になっていたので、「だったら、『説教臭くなく純粋に子どもたちが楽しめるお話を書いた』というライマン・フランク・ボームの作品は例に出さないでくれよ」と思った。
とはいえ、アニメを見て原作を読んだのは30年以上前だったので、じゃあ読むなら英語かな、と読んだ。Unlimitedなら無料。
子供向けの娯楽は間違いないが、道徳的な教訓はちゃんと入れ込んである。人は好んで堕落した話を読みたいわけではなく、同じ面白いなら正しい人が正しいことをする方を好む。この判断は正しい。
1900年にアメリカで出版された本だが、慎重に宗教的な言い回しが除いてある。魔女や魔法使いがいる国では「神」の概念は一切出ない。
この辺が、当時の児童向けの本は宗教的な逸話ばっかりで、子供が心から楽しめるものがなかった、というボームの問題意識の現れかなと思う。それで出来上がったのは、舞台でも上演されていて、ハリウッド的な娯楽作品になった(ハリウッドの映画は宗教的なものも多いがそれはまた別の話)。
それにしても、当時漫画もアニメもそんなになかっただろうから、カカシやブリキの漫画的なキャラ立ちはものすごくクリエイティブだったのだなと思う。細部も凝っている。カカシが視力を得たのは農夫が顔に目を描いたからだし、カカシが恐れるのは焚き火の火の粉。ブリキ男は怪我を治して手足をブリキに置き換えていくうちに気づいたら全身がブリキになっていたという。心臓(ハート)が欲しいとドロシーに同行するが、アリを踏んではオイオイと泣いて涙で錆びて動けなくなる。カカシ、ブリキというい記号で思考を止めず、その設定から踏み込んで細部が作ってある。漫画的ナンセンスを取り込んで! やはりこれぐらい割り切ってキャラ設定をしないといけない。
そして、簡易な英語で書いてあって、単語をタップして意味を確認するのは1ページに1,2回で済む(範囲指定して文章も翻訳できると知った!)。描写は風景を視覚的に脳内に呼び起こし、喋る声はそれぞれの声が聞こえる。簡潔でありながら光景を想像しやすくしている描写は参考になる(英語で書くわけではないが)。
なろう作家は全員これを読んで見習ってほしいぐらい、洗練されていると思う。
描写だけでなくストーリーもいい。3幕構成論的に分析したら面白いかもしれない。ドロシーたち4人はそれぞれ願いがあってオズの魔法使いに会いに行くが、会ってみたらそこから真の冒険が始まる。ちゃんと真ん中にミッドポイントがあるんですよ。
この巧みなストーリーは、ボームが演劇にのめり込んでいたからこそ得たスキルかもしれない。
真面目にそう。なろう作家はみんなこれを読もう。翻訳でいいから。そして、私がブクマしているいくつものなろう作品の作者さんは、結末に向かって続きを書いてほしい。どれもこれも更新が止まってるんだよ!(俺もだよ!)詳細をみるコメント0件をすべて表示
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