Beloved: Pulitzer Prize Winner (Vintage International)

  • Knopf Doubleday Publishing Group
4.07
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・洋書 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9781400033416

感想・レビュー・書評

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  • 正直に言うと、まだとても感想を書けるほど気持ちがまとまっていないんだけど、いいかげん書いておかないと忘れてしまいそうなので、がんばって書く!
    でも、支離滅裂かもしれない。
    ところどころで世界の美しさにはっとさせられる素晴らしい本だったけど、読み進めるのが辛い描写も多い本だった。

    この本を読むまでは、トニ・モリスンについては、人種問題をテーマにした小説を書く人、というぼんやりした印象があるだけで、そういえばずいぶん前にキング牧師について彼女が書いた短いエッセイを読んだことがあったな、という程度の認識。
    この本はピュリツァー賞受賞作で、モリスンはノーベル賞作家だし、私はどっちの賞もわりと好みなので、「これは期待できそう」と軽いノリで図書館から借りてきた。

    でも、最初はなかなかストーリーが理解できなくて苦戦した。
    英文じたいは全く難しくないです。むしろ簡単で平易な部類。
    なのに、一番最初の章では、家にポルターガイストが出る、という基本の舞台設定すらなかなか把握できない。教科書ガイド的なサイトの解説を読んで「え!そういうことなの!」とやっと理解するという始末。
    (途中、自分の理解度があまりに悪すぎて、ルイス・サッカーの子供向け小説に逃げ込み、「私の英語読解力なんて小学生並みよね・・・」と、しばらくいじけていたりした)

    登場人物たちは、心の奥につらい過去の記憶を固く封印している。
    封印しないととても生き続けることができないほど辛い過去だからなのだが、時折、フラッシュバックのように記憶の断片はよみがえり、彼らが送った過酷な人生を少しずつ明らかにしていく。
    平易な言葉で少しずつあいまいにぼかして語られる過去の出来事は、時には非常に比喩的だったりするので、私の英語力ではついうっかり事実を読み過ごしてしまいそうになる。だが、ちゃんと読めば、実際は信じられないほどおそろしい虐待の場面を表現していたりする。
    そして、ダイレクトに語られるよりも、そうした断片的な表現の方が、事実に気づいた時、より恐ろしく、より生々しく、よりリアルに感じられる。

    読み終わった後で見たNew York Times によるトニ・モリスンの短い紹介ビデオに、「Morrison is perhaps best known for her nuanced discussion of race in America」とテロップが出ていたが、「nuanced discussion! 確かに!」と思った。

    そんなわけで、予想もしなかった数々のつらい場面に最初の方はかなりひるんでいたのだが、前半のハイライト、白人の放浪者エイミー・デンヴァーの登場シーンがあまりにも鮮やかで美しく、すっかり魅了された。
    彼女のワイルドで無垢なふるまいが信じられないほどの癒しと救いと安らぎを感じさせる。

    このシーンはまるでボブ・マーリーのRedemption Songのようだと思った。
    文字で奏でる優しい音楽に包まれて、読むだけですっかり疲弊してしまった心の傷が静かに癒されていく。
    心身ともに傷つき、ボロボロになって、とてもやり遂げられないと思った大変な仕事を終えた逃亡奴隷セサの目に映った夕暮れの風景の美しさ。
    読んでいる私は心が震えて、でも疲れ切って(私はソファに座って読んでいただけなんだけど!)、そして静かに感動していた。

    正直に言うと、この本の9割がたは読んでいてつらく、ときどき苦痛すら感じるほどだった。
    でも、残り1割のこうした鮮やかなシーンが本当に素晴らしくて、その美しさが辛い場面の苦痛を帳消しにしてしまう。

    ベイビー・サッグスの名前の由来が明らかになった場面も、心が震えたシーンの一つ。
    彼女のその名前をやさしく呼ぶ男。思いもよらない名前の由来に、胸がいっぱいになって、私はすぐに続きを読むことができない。
    それから、ポール・Dの目がとらえた美しい風景にも心打たれた。愛してはいけないと肝に銘じていたのに、つい心奪われてしまう世界の美しさ。

    YouTubeのとある解説動画の中で、「僕が今まで読んだ黒人奴隷の物語の中では一番説得力があった」と言っていた人がいたが、私も同感。

    著者のインタビュー動画を見ていたら、
    「I wanted the reader to be kidnapped, thrown ruthlessly into an alien environment as the first step into a shared experience with the books population.」ととご本人が言っていたが、いや、まさに! あなたの本はまさにそう!と言いたかった。

    こんな作品が難なくすいすい読めたらなぁ・・・
    (私の英語力ではまったく程遠く、今回、解説サイトだけでは足りず、最終的には日本語訳も参照しながら読んだ)

  • 世界の小説を読む第21冊目アメリカ合衆国
    ボーッと本を読みたい時にはオススメしない。何万人もの苦痛、恥辱、絶望、そして命の重さが込もっているから。登場人物達が一度見たものは一生記憶から消せなかったように、読者にとっても、一度読んだこの本の内容は一生記憶から消せないだろう。Elie Wieselの"Night"と同様に、死ぬまで忘れない本になると思う。南北戦争後のアメリカ。奴隷制度から解放されたはずなのに、過去の呪縛に未だ囚われたままでいる元奴隷達の生き様を描く。主人公は、白人に捕らわれるぐらいならと自らの子を殺めた女性。殺しそびれたもう一人の娘と誰の手も借りずに孤独に生きていたある日、謎の女性が彼女の下を訪れる。主人公は実在の人物に基づくが、自分の子を殺してでも逃したかった現実は一体地獄以外の何なのだろう。彼女と同じ農園で生活を共にした者達は様々な直接的暴力と迂遠的差別の末に、処刑された者、狂った者、消息を絶った者、過去を消した者、色のない世界で生涯を終えた者しか残らなかった。抱えた傷と痛みは一生消えないながらも、他人に頼る事で徐々に和らいていく過程を見て少し人間というものに希望が持てた。容赦のない情景と人物描写のみならず、構成と演出が秀逸。実際に起きている事と登場人物達の記憶の断片をどちらも掻き寄せた形で話が進むため、時系列がめちゃくちゃ。そのため、最初は見過ごしていた描写が後で実は重要な意味を持っていたと気づき、慌ててページを繰り戻る事もしばしばあった。描写自体が直接的ではなく、帳が掛かっているかのような比喩表現で語られる事もままあったので、キャラクターの脳内にしっかり入り込まないと理解できない様になっている。そしてそうした途端、まるで自分がキャラクターになってしまったかのような錯覚に陥る。疑いようのない名作。中学生〜高校生の必須図書にして欲しい。人種差別の再燃が懸念されるトランプ政権下のアメリカでより重要になるのではないか。

  • 後半若干神秘主義に偏りすぎかも。
    人物の心理描写は秀逸。

  • とても不思議な文体で、現実と過去が交差する感覚が好きでした。

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