Hamnet: Read the bestselling book before you see the award winning film

  • Tinder Press (2021年4月1日発売)
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Amazon.co.jp ・洋書 (384ページ) / ISBN・EAN: 9781472223821

感想・レビュー・書評

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  • 私はシェイクスピアのファンという訳ではないので、彼が書いたとされる戯曲の中でも、誰でも知っているであろう”Romeo and Juliet” (遠い昔、タイタニックが公開されてディカプリオに夢中になり、彼が出演した過去作品のDVDを借りまくっていた時、ディカプリオ演じるロミオの美貌の虜になったっけ…)と、名作『ガラスの仮面』で主人公北島マヤが妖精パック役を演じていて知った、”A Midsummer Night's Dream”くらいしか内容を知らないという無知さ。でも来月末からイギリスに旅行に行くことになり、ロンドンでは有名なグローブ座にてガイド付きツアーに参加した後、”Julius Caesar”を観劇するという素敵なイベントが待ち構えているので、以前話題書になっていてシェイクスピアにちなんだこの本を読んでみることに。

    ずっと前、『シェイクスピアという人物は実際には存在しなかった可能性がある。彼の戯曲のジャンルがあまりにも幅広く、全ての戯曲を書き上げるには様々な分野で専門的な知識が必要のはずで、特別な教養があったとは思えない彼には成し遂げるのが困難だったはず。シェイクスピア直筆とされる原稿や手紙も今までに全く見つかっておらず、そのような事から、シェイクスピアというのはペンネームであり、実際には何人もの人間が戯曲製作に関わっていたのではないか』なんてことをどこかで聞いたような読んだような記憶があったので(更に調べてみると、実際のシェイクスピア候補の有望な説として、実在の人物が何人か挙げられていたりするのが面白い)、私の脳内では既に、シェイクスピアという名前の超有名な劇作家はなんとなく幻のような、とらえどころのないような人物として捉えられていたんだけど、この本では劇作家である以前に一人の人間、そして父親として描かれていて、一気に親しみが湧いたというか、生身の人間として勝手に親近感を覚えた。本の存在を知るまで、シェイクスピアの生い立ちや家族について知る機会が無く、彼が皮手袋商人の息子だったこと、彼には3人の子どもがいてそのうち2人は双子だったこと、そして妻が彼よりもずっと年上だったこと、そして劇作家としてだけでなく、役者としても舞台に立っていたなどなど、知らないことだらけだったけど、その分興味深かった。

    物語としては、若かりし頃のシェイクスピア(ストーリー全体を通して、彼が”William”という名前はおろか、何かしらの名前で呼ばれるようなことは一切無いし、そもそも苗字であるはずの”Shakespeare”という言葉も一切出てこない…)がどのようにして妻となる Anne Hathaway(作中ではAgnesとして登場)と出会って結婚するまでに至り、子供達が生まれ、成長していく中で、ロンドンで劇作家として単身生活するようになったか…という過去の時間軸と、彼がロンドンに移り住んで何年か経った後、双子の1人Hamnetがペストにかかり命を落としてしまう前後の様子が語られる現在の時間軸が交互に進んでいき、最後に、Hamnetの死後に気持ちがすれ違ってしまっていた夫婦が、息子の名前をタイトルにした戯曲を通して、やっとお互いを理解し合ったのではないかという希望を残して話が終わる。妻Agnesの視点から描かれているこのストーリーにおいて、シェイクスピアはあくまで彼女の夫という立ち位置なので、メインとしては最愛の息子を失ったAgnesの母親としての喪失感や悲壮感、苦しみといったものが書かれているんだけど、それが町や家や自然といった風景の描写とともに、しっとりと、ゆっくりと、でも灰色の雰囲気に常にまとわれて描かれていて、上質な文学を読ませてもらったなぁ、という気分になった。シェイクスピアも彼なりの方法で、息子を亡くした悲しみをどうにかやり過ごそうと、演劇の世界に更にのめり込んでいく姿が切ないんだけど、やっぱり、母親が我が子に対して抱く愛情というのは底無しで、Hamnetを失ったAgnesが経験する感情の波はもちろん悲しくて切なくてやるせないんだけど、美しくもある。今作中では、周囲の人間や自分の未来を垣間見ることが出来たり、植物を煎じたりして病気や怪我を治す薬を調合したり、何か不思議で人間離れした力を持った女性として描かれているAgnes。彼女のこんな面はフィクションのはずだけど、どうやら、一般的には、実際のAnne Hathawayという人物にはあまり良い印象が無いという説がある様子。まぁ元々そんな説があることすら知らなかった…と思っていたら、ウィキペディアでこんな記述を見つけた:

    【不義を犯すハサウェイというイメージを広めたのは、アイルランドの作家ジェイムズ・ジョイスで、ジョイスの複数の作品に登場するスティーヴン・ディーダラスが、幾度となくハサウェイのことを作中で語っている。1922年に出版された『ユリシーズ』では、悪名高き「2番目にいいベッド」が遺贈されたのは、ハサウェイの不倫に対する罰だったとディーダラスが説明している。】

    最近読了した”The Paris Bookseller”を読んでいなかったら、「ジェイムズ・ジョイス?誰?」となっていたと思うけど、”The Paris Bookseller”でこれでもかと作中に登場していた彼がここに関わってくるのかぁ…と思うと、いやぁ面白い。

    あと、ペストと言えば、昔世界的に大流行した疫病で、数えきれないほどの人々が命を落とした恐ろしい病気だったということはもちろん知っていたけど、あのカラスみたいな仮面を被ったペスト医師のビジュアルがあまりに強烈で、その風貌から、てっきり空気感染で広がる感染症なんだと思い込んでいたけど、ノミから感染するものだったんですね…。作中で、双子のもう1人の片割れJudithがどのような過程でペストに感染したのかが、想像上のルートを遡って書かれていて、猿の毛にくっついていたノミを船上に持ち込んだ、船の給仕係の少年が発端ということになっているけど、その少年がイギリスのマン島(Isle of Man)出身という設定で、私のパートナーがその島出身で、来月に私も初めてそこにお邪魔する予定になっているということもあって、島の名前がタイムリーに作中に登場してちょっと気分が上がった(笑)前に読んだ”56 Days (by Catherine Ryan Howard)”にもちらっとマン島の名前が出てきたのを覚えているけど、自分に関わりのある場所の名前が本に登場すると嬉しくなるのは私だけではないはず…。

    この本を読んで、今まであんまり意識していなかったシェイクスピアという人物の存在が一気に近く感じられたし、来月のグローブ座訪問がもっと楽しくなるように、もうちょっと彼にまつわる知識を得て予習しておこうと思う。

  • “Adieu, adieu! Hamlet, remember me.”
    -Hamlet, Act 1 Scene 5

    上半期に読んだ本の中で最高傑作。展開は緩やかなので早めのテンポが好みの人にとってはイマイチかもしれないが、シェークスピア(作中ではHe, Her father, Her husbandとしか言及されない)と彼の妻アグネスの間のやり取りの機微や、喪失によりアグネスの静謐さが揺らぐ様子の描写が非常に印象的で、undramaticでありながら同時にdramaticであるという不思議な本だった。
    映画も見たい

  • シェイクスピアの人生など教養が決定的に不足している当方、この作品の読み手としてお呼びでないなとは思いつつ、最終盤の戯曲めいた、それでいて小説のスタイルを守ってのストーリー展開、HamnetとHamletの連関かぁ、、、めちゃめちゃ面白かった。
    また、悪妻繋がりで漱石のことを思い出したりしましたが、結局は周りのやっかみなのかなぁと思わせるほどの創造的お話でした。

  • シェイクスピアの家族をベースにしたフィクションの小説。代表作である『Hamlet』が元になったHamnetという息子、そして妻のAgnesやその周りの家族の話。
    Agnesは未来が見れたり、人の親指と人差し指の間を触るとその人の過去の景色などが見える不思議な力を持っていて街の人の病気を薬草を使って直したりしてシェイクスピアと結婚する。
    そしてHamnetの双子の妹Judithが高熱の治せない病気になってしまい、不思議なことにHamnetが入れ替わって亡くなってしまう。
    シェイクスピアという名前は一切出ず、周りのキャラクターのみで完結出来ているのが、面白かった。
    ただ展開があまりなく、少し読了が遅くなったと感じた。

  • ハムレットを見たいなと思った。

  • シェイクスピアの悲劇「ハムレット」は死んだ息子への追悼だった?

    2021年これを読まずして年は越せないで賞の文芸部門賞作。

  • 新宿紀伊国屋で購入。この著者の作品は初読だが、受賞作品ということで挑戦。Shakespeare一家を描いた作品。

  • Audible。ナレーターはEll Potter。

    特に詳しく学んだとかではないのですが、一読者として、一観劇者として、高校生のころからシェイクスピアが大好き。本書は題名は幼くして亡くなったシェイクスピアの息子ハムネットからとられていますが、主人公はむしろ母親のアグネス。一般的にはアン・ハサウェイとして知られるシェイクスピアの妻は「悪妻」ということになっていますが、実は多くが知られているわけではないらしく、「偉人の妻は大体悪妻だったことにされちゃうよね…特に年上だとね…」みたいなやつかと思います。洋書ファンクラブなどで高評価だったのもあり以前から読みたいと思っていましたが、翻訳が出版されて話題になったのをきっかけに今回読みました。

    独特の浮遊感がある文章が内容とよく合っていて、本来ナレーターを挟まずに文字で読んだ方がよい本だろうと思いますが、ナレーターさんの力量もあって耳からでもかな味わえました。流行り病で家族が突然亡くなり、残された家族がその喪失と向き合いながら崩壊せずにやっていくことができるのか、子供を亡くした夫婦は絆を取り戻せるのか、という話でもあって、一世代違うけれどWolf Hallの一部を思い出したりもしました。
    アグネスをはじめとするキャラクター造形や夫婦の関係の描写もすごく興味深いのだけど、個人的には文章がよいのが大きかったなあ。

    背景知識としては、さすがにシェイクスピアが大劇作家であることやハムレットの内容を知っている前提ではあると思いますが、それは日本でもわかる人が多いのではないかと思います。個人的にはシェイクスピアの故郷にもロンドンの現グローブ座のバックステージツアーにも行ったことがあったりして、シェイクスピアの人生や当時の劇団を取り巻く環境についてある程度知っていたことは本書を楽しむにあたってプラスになりましたが、それほどシェイクスピアに詳しくなくても堪能できるのではないかと思います。

    コージーものやサスペンスを続けて読んだ後だったのもあって、軽いお菓子ばっかり食べていたところに丁寧に料理された食事をとったような満足感がありました。

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