Factfulness

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  • Amazon.co.jp ・洋書 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9781473637474

感想・レビュー・書評

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  • データを正しく読むための本、のような宣伝だったので、てっきり統計的な分析の本か何かと思っていたが全然違った。もっと早く読むべきだった。
    自分がどんなに間違った固定観念で世界を見ていたかわかったし、メディアや活動家、ネット上の煽りに乗せられて事実をちゃんと見ていないということにも気がついた。これは本当に全人類読むべき。学校で必修にしてもよいくらい。
    文章はとても読みやすくて、いかにわかりやすく説明するかに注力しているかがよくわかる。たぶん中学生でも、なんなら小学校高学年でも理解できそう。それでいてユーモアもあって下手な小説よりも引き込まれるものがあり、とても面白いと思えた。著者がこの本の執筆を最後に他界したのが悔やまれる。本の後半で言及していた新たなパンデミックや経済危機、そして戦争が起こった今、Factfulnessの考え方は本当に必要とされていると思う。

  • 数年前に日本でも翻訳版が話題書になっていたけど、私はデータとか統計とか、とにかく数字全般を全力で避ける傾向があるので今まで読もうと思わなかった本なんだけど、2022年も終わりに近づき、ふと「読んでみるかな」と思ってオーディオブック版を手に取ってみた。オーディオに付いてくるPDFのグラフなんかも参考にしながら聴いたけど、結果的に、とっても興味深くて面白かったし、作者が指摘するように『世の中の物事を判断する際に、我々は確固としたデータに基づく判断をする代わりに、人間に備わっている10個の直感・本能(世界の国々を”Rich”と”Poor”のように綺麗に2つのグループにズバっと分けたがったり、世界人口がずっと直線を描いて増えていくものだと思い込んだり、先進国に住む人が自国のルールが発展途上国でも同じものだと信じて疑わなかったり、などなど)に基づいて判断してしまう為に見解が歪んでしまうということが多々起こるが、専門家達ですらそれに気付いている人は少ない』という衝撃の事実がよく理解出来た。そして、世の中の人達が考えているよりも(私も含め)、世界の貧困や福祉などはつい数十年前と比べても驚くほど改善されているにも関わらず、私達はいつまで経っても古い情報を基にしたネガティブなイメージを払拭出来ていない、ということも。作者が挙げる、人間が持つ10個の直感・本能についての考察やデータはどれも興味深かったんだけど、中でも自分的に特に為になったなと思った箇所を下記にまとめてみようと思う。

    ① 世界人口が増え続ける中、未来の子ども達の為に持続可能な世界を実現していかなければならない、という意識が高まっていて、中には「発展国と比べ、発展途上国では一世帯における子どもの数が多く、貧困に苦しむ子ども達は実に気の毒だが、このような子ども達を救済し続けることで将来的に世界人口が増えてしまっては元も子もないのではないか?」という声を上げる人達がいる。しかし、一見理にかなっているように聞こえるこの意見は、実は間違いである。第一に、発展途上国で貧困に苦しむ子ども達を助けることは人道的に正しいことであるし、加えて、貧困層の人達に手を差し伸べ、男性と同じように女性も教育を受けられるシステムを構築したり、避妊の大切さを教えることによって、結果的に世界人口の増加を抑えることが出来る…という作者の意見がとても新鮮なものに聞こえた。

    ② “Fear”にまつわる人間の本能について。メディアでは、自然災害・飛行機事故・殺人事件・放射線物質漏れ・テロリズムなどが起こるとこぞって報道し、それによって人々の恐怖が駆り立てられることになるが、実際にそれらが原因で亡くなる人の数は、世界全体で見ても毎年の全死亡者数の1%にも満たない。しかし、これらの出来事は常にメディアの関心を集めており、その為に我々は報道されることが極めて少ないが確実に起こっているポジティブな出来事よりも、報道される頻度が多いネガティブなニュースにばかり目が行ってしまう。

    ③ 近年、昔に比べてより多くの世界中の子ども達が生き残ることが出来ているのは、まず第一に子ども達が病気になる可能性が極めて低くなったから。訓練を受けた助産婦が妊娠中・出産時共に母親を助け、看護師が生まれた赤ん坊に予防接種をする。子どもには十分な食事が与えられ、両親は子ども達に服を着させ、風呂に入れ、子ども達の周りにいる大人は手洗いを欠かさない。そして、母親は薬が入った瓶に書いてある説明書を読むことが出来る…といったように、子どもを育てる際に周りにいる大人がきちんと教育を受けているかが子ども達の生存率を大きく左右する。よって、未だに貧しい生活を送っている人々が住む国々の福祉改善の為にお金を投資しようと考えているのならば、大きくて立派な見た目の病院などではなく、小学校や看護学校、そしてワクチンにお金を寄付するべきである。

    ④ 二酸化炭素排出量に関して。2007年1月に世界経済フォーラムが開かれた時のエピソード。中国・インドを始めとした新興国が、深刻な気候変化を起こしかねないスピードで二酸化炭素を排出しているとされていて、上記のフォーラムにて、とある欧州連合加盟国の環境大臣が「中国は既にアメリカよりも二酸化炭素を排出し、インドはドイツよりも排出している」という、自明の事実と言わんばかりの発言をした。中国の専門家は怒りを抑えているかのように見えたが沈黙を貫いた一方、インドの専門家が放った言葉が的を得ていて素晴らしいと思った:「あなた方のような裕福な国々が石炭や油を一世紀以上もどんどんと燃やし続けたおかげで、我々は今の状況に陥っているのです。しかし、あなた方を許しましょう…だって、こんな結果になるなんて思ってもみなかったんですもんね?しかしながら、これからは、二酸化炭素排出量は国民一人当たりにつき、というカウントの仕方をしましょう」。確かに、人口がとてつもなく多い中国やインドの排出量を国単位で判断されてしまっては、全くフェアではない。作者が「こんなのは、『中国の全人口の体重がアメリカの全人口の体重より重いから、中国の肥満問題はアメリカよりも深刻だ』と言っているのと同じだ」と言っていたのも、理不尽な理屈の上手い例えだなと思った。

    ⑤ 難民について。ついこの間、シリア内戦から逃れる為に妻と共にシリアを脱出し、イギリスを目指す難民を主人公に書かれた本”The Beekeeper of Aleppo (by Christy Lefteri)”を読んだばかりだけど、”Factfulness”では難民について報道しているメディア関係者やジャーナリスト達ですら、難民に関する事実を詳しく知らないという結果を暴いている。2015年に、4,000人もの難民が空気注入式ボートに乗ってヨーロッパに辿り着く前に地中海で溺死したというデータがあり、幼い子ども達の遺体がバケーション先のビーチに打ちあげられている映像は、人々の胸に強い恐怖と同情心を植え付け、「どうしてこんな悲劇が起こるのか。誰に責任があるのか」という質問を生み出す。人々は、ここでの悪者は、危険をはらむ自国から逃げ出すことに必死な難民からボート代として一人頭数千ユーロもの金を巻き上げ、質素なボートに乗せる貪欲な請負業者だという結論に達し、そこで人々の思考は止まってしまう。しかし、作者が実際に「陸地を移動してリビアやトルコ経由でヨーロッパに入ろうとし、命懸けでボートに運命を委ねる代わりに、もっと快適な飛行機や船で移動すれば良いのでは?なぜ難民達はそんな粗悪なボートで国境を渡るのか?欧州連合メンバー国では、ジュネーブ条約に基づいて難民の保護は法律化されていて、シリアの人達は難民保護を受ける権利があるのに…」といった疑問を投げかけた際、はっきりとした答えを提示することが出来る人は、ジャーナリストや、たとえ実際に亡命希望者と関わるような仕事をしている人の間にもいなかったらしい。彼らから聞かれた答えとして、「きっと飛行機に乗る資金がなかったに違いない(しかし、ボート代として支払うお金があることはわかっているし、作者調べではトルコからスウェーデン、またはリビアからロンドン行のフライトが埋まっていることもなければ、50ユーロほどしかかからない)」というものや、「きっと空港に辿り着けなかったんだろう(しかし、難民の多くは既にトルコやレバノンに辿り着いていて、空港には簡単にアクセス出来る)」という回答が返ってきたと。難民が飛行機を使う代わりに命懸けで粗悪なボートに乗らなくてはいけない理由は資金面でもアクセス面でもなく、彼らが保護を求める『難民』なのか、それとも違法でヨーロッパに滞在しようとする『不法移民』なのかを空港のチェックポイントで早急に確認する手立てがないから。現在の欧州連合の規制では、必要な書類を所持していない人物をヨーロッパ諸国へ連れてきた航空会社または船会社は、その人物を自国へ送り返す為の資金を全額負担しなくてはならない決まりになっており、建前ではもちろんこれはジュネーブ条約で保護された難民には当てはまらないとされてはいるが、『難民である』ということを証明するには大使館が取り組んで何か月も掛かってしまうこと。その為に、空港に辿り着き、チケットを購入する資金があっても、ビザがないとそこで追い返されてしまうという悲しい展開になってしまう。そして、難民がビザを取得するということはほとんど不可能に近い。なぜなら、トルコやリビアにある大使館はビザ申請の手続きに必要なリソースが不足しているから。このようなシステムのせいで、シリアからの難民達は飛行機を使うことが出来ず、命懸けで海を渡らなければならない。加えて、請負業者がなぜ常に質素な空気注入式ボートを使わないといけないのかにも、EUの政策が絡んでいる。その政策では、『ヨーロッパに到着したボートは没収しなければならない』とされており、その為に請負業者達は一度しか使用出来ないボートを調達する為に毎回お金を掛けることが出来ず、より安全だが高価な船を手配するといったことは起こらない…という負のサイクルが生まれている。ヨーロッパ政府は、難民を助け、保護するジュネーブ条約に従っていると信じているが、彼らが掲げる移民政策が実はそれを不可能にしているということに気付いておらず、結果として請負業者達が難民をターゲットにして金を儲けるシステムを生み出している。そしてそのシステムにより、難民の溺死という悲劇が起こってしまう。これは皮肉過ぎるし、悲し過ぎる。”The Beekeeper of Aleppo"に登場するシリアからの難民達も、粗悪なボートに乗っていたな…。

    ⑥ 風疹(Rubella)は、ロシアでは”Polish disease”と呼ばれ、ポーランドでは”German disease”と呼ばれ、ドイツでは”French disease”、フランスでは”Italian disease”、そしてイタリアではフランスにやり返す形で”French disease”と呼ばれている。身代わりとなる生贄を探したくなるのは人間の性であり、もしも外国人が自国を訪問した際に病気にかかっていたりすれば、その訪問者の国全体が非難されることになったりする。生贄が使われていることに気付くこと、そして個人を非難することで他の解決策や解釈から自分達の注意が逸れ、似たような問題が将来起こるのを防ぐ能力が発揮出来なくなってしまうことを意識するのが大事。この本が出版されたのは2018年でコロナ前だけど、ここの部分では、後先考えずコロナウィルスを”China virus”と呼びやがったトランプの顔が思いっ切り浮かんだ…。この本を読みながら、「そういえばスペイン風邪って英語でも”Spanish flu”って呼ばれるけど、スペインから広まったからその名前なのかな?」と気になって調べてみたら、こんなことが書いてあった。『日本語でも英語でも「スペイン」という国名が冠せられるのは、スペインが原発地であることを意味するのではない。 当時は第一次世界大戦の最中であり、インフルエンザの感染爆発は軍の行動に大きな影響を与えることから、各国で報道が規制された。 このため、中立国であったスペイン発の報道が初出となったことに由来する』…名前だけ聞くとスペインから広まったように聞こえてしまうし、人々に”China virus”みたいなイメージを与えて、当時のスペイン人達が差別を受けたりしなかったんだろうか…と気になった。

    ⑦ 作者Hans Roslingは、残念ながらこの本の執筆中にすい臓がんの診断を受け、2017年にこの世を去ってしまった。そんな彼が2017年当時に、人類の発展を数年、もしくは数十年もの間止める恐れのある『我々が懸念すべき5つの世界的リスク』として挙げていたのが、Global pandemic, Financial collapse, War, Climate change and Extreme povertyで、これらはきっとこの先起こるだろうと彼は予想していた。最初の3つは過去に既に起こっていて、最後の2つは現在進行形で起こっていることだから、と。しかも、「エボラウイルスやHIVとは違い、空気感染で急速に広がるインフルエンザが新しい形で出現したとしたら、人類にとって恐ろしい脅威となるだろう」と言っていて、その予想からたった3年後にコロナが起こったという…。そしてウクライナ戦争も勃発するしで、彼が心配していた予想が当たってしまった感が凄くある。彼がまだ生きていたら、今の世界を見てどんな風に思っただろう。

    こんな感じで私なりに感銘を受けたし、”Fact-based world-view”の大切さを学ばせてもらった本となったので、遅くなったけど読んで(聴いて?)良かったと感じた本でした。これからはメディアに無駄に踊らされることなく、少しずつでも冷静に世界の物事を判断出来るようになっていけたらいいなと思うけど、そんなに簡単にはいかないだろうなとも思う。でも、メディアで報道されなかったり、表に出てこないようなポジティブなニュースや人類の発展に関して、もっと積極的に意識するようになれたらいいなと感じた。

  • 原著でトライ。スウェーデン出身の医師・公衆衛生学者の故ロスリング氏による最後の著書。本書では、例えば世間一般に持たれがちな「世界はどんどん物騒になり、社会の分断が進み、環境は悪化している」という思い込みに対し、統計データを見ると世界は基本的に良くなってきている、データを正しく捉えて思い込みを無くそうねというような主張をしている。思い込みの原因やパターンをやや冗長ではと思われるエピソードを添えて10通り(分断/ネガティブ/直線的変化/恐れ/過大視/一般化/宿命/単一視点/犯人捜し/焦り)紹介しており、そうした思考に陥らないように~しようと、それぞれについてまとめている。その言葉は使われてないけどメタ認知力とも関係?

  • [BIBLIOGRAPHIC DATA]
    AUTHOR: Hans Rosling (1948-2017)
    AUTHOR: Ola Rosling (1975-)
    AUTHOR: Anna Rosling Röennlund(1975-)
    PAPERBACK
    ISBN-13: 9781473637498
    PRICE: £9.99
    ON SALE: 27th June 2019
    GENRE: Economics, Finance, Business & Management
    [https://www.hodder.co.uk/titles/hans-rosling/factfulness/9781473637498/]

    [TABLE OF CNTENTS]
    The gap instinct
    The negativity instinct
    The straight line instinct
    The fear instinct
    The size instinct
    The generalization instinct
    The destiny instinct
    The single perspective instinct
    The blame instinct
    The urgency instinct
    Factfulness in practice
    Factfulness rules of thumb
    Appendix: How did your country do?

  • 著者はMSFスウェーデンの共同設立者だそうです。本書を読んで、その情報を知ると、なるほど、と腑に落ちるものがあります。

  • 世界の見え方が変わる。
    副作用として地理の勉強が面白くなる

  • 確かなデータに基づいた判断の大切さ、それが現状いかに成されていないか、を教えてくれる本。分かりやすい表現、例で書かれている。
    著者はめちゃくちゃすごい人だなー。
    エボラを例に、感染症についても色々と書かれているので、コロナについても冷静な判断をしているだろうな、調べてみよう、と思ったら、数年前にすでに亡くなっているのね。。惜しい。より良い世界のために必要な方だなあと読みながら感じた。
    (日本語版は図書館でかなり順番待ちやったから英語版読んだ)

  • これはすごい。
    世界全員がこの本読んだら本気できっと世界はよくなっていくはず。人間考えることは絶対やめてはいけないことがよくわかった。
    この世に絶対的な知識、価値観、事実等存在しない。常に懐疑的に考えるクセを身につけ常に事実を知ろうとする態度がとにかく重要。

  • とても興味深い内容で読みやすく、すぐに読み終わりました。

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