The Kite Runner

著者 :
  • Riverhead Trade
4.23
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本棚登録 : 125
感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・洋書 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9781594480003

感想・レビュー・書評

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  • アフガニスタンのカブール出身の作家による作品。
    この本は数年前からずーっと読みたいと思っていて、”The Reading List (by Sara Nisha Adams)”に登場するリストにも載っていたこともあって「読まねば…」という気持ちに更に拍車がかかり、読了後に勢いでこのバーチャル本棚に登録したはいいけど、作中でも誰かが『とても悲しい話だから、心がhappyな時に読まないといけない本』みたいなことを言っていて、なかなか読むタイミングを掴めずにいた。けど、そうこうしているうちにまた年が明けてしまいそうなので、今回腹をくくって、作者本人の朗読によるオーディオブック版を耳読書することにした。

    私はアフガニスタン情勢や文化にはとても疎いので、9.11が起こるずっと前から始まるこの物語を通してそれらをちょっと知れたことは、正に『読書を通して今まで知らなかった知識を得る』という読書の醍醐味を実感した気がするし、主人公Amirの目を通して描かれるアフガニスタンの人々の暮らし、階級差別、戦争前後の生活の激変ぶり、そして友人Hassanとの友情や彼に対する後悔と罪悪感なんかがリアルに感じられた。前知識で『Amirが何らかの形でHassanを裏切ってしまうことになる』ということは知っていたんだけど、その形が想像していたよりもショッキングで、Hassanの気持ちを想うと悲しくなると同時に、父親の愛情ばかり追いかけて勇気の欠片もないAmirに腹が立つわ、変わらずにAmirを慕うHassanが健気だわで、いたたまれない気持ちに。どうやら、このAmirがHassonを裏切る(見て見ぬ振りをする)場面は、『タリバンに苦しむアフガニスタンを見て見ぬ振りをする、国際社会に対する皮肉』として描かれているらしい。アフガニスタンにおける階級差別の言及も興味深く、パシュトゥーン人(アフガニスタンとパキスタンに居住するイラン系民族。アフガニスタン内で最大の人口を持つ。パフトゥーン 、パターン 、アフガンなど様々な名で知られる。アフガニスタンは、ペルシア語およびダリー語で「アフガン人の国」の意味で、Amirはパシュトゥーン人)とハザラ人(アフガニスタンを中心に居住するモンゴル系民族。イスラム教シーア派の信者が多く、日本人に似た特徴的な容貌や宗教的信念により、他のアフガニスタンの民族から宗教的迫害のみならず文化的、経済的差別に直面してきた。Hassanはハザラ人で、Amirの父親の使用人の息子)という民族間に存在する差別について初めて知った。若い頃のAmirがHassanの見た目を”Like a Chinese doll”と表現することがあったけど、それはモンゴル系民族というルーツから来ていたということか。ハザラとして生まれたら、きっとずっと差別の対象として生きていかないといけないんだろうな…と思ったら、インドのカースト制度や、日本で言う穢多・非人もそうだよな…と思って、階級差別の理不尽さを改めて感じた。

    評判通り、とっても悲しいストーリーなんだけど、ベストセラーになったことで人々がアフガニスタン情勢に関心を寄せるきっかけになったことは間違いないだろうし、最後にはちょっと希望が見える、美しいエンディングだったのに救われたし、心が洗われた。タイトルも、読了してみてから改めて考えると、とってもいいタイトルだなと思う。Hassanの忠誠心の尊さよ…。しかし、作者本人の朗読スキルが全く好ましくなく、綺麗な英語で聴き取りやすくはあるんだけど、常にフラットな読み方で、登場人物達の会話も全く同じイントネーション・声色なので、誰が喋っているのか困惑したり、感情が込まれてないなと感じる場面が多々あったので、それがすごく残念だった。大切な本を自分の声で届けたいという願いは理解出来るんだけど、やっぱりプロの朗読者の仕事は素晴らしいし、素直にプロに頼もうよ…と思わずにはいられない作家さん達が朗読した本をこれまでに何冊か聴いてきたけど、これもその一冊になってしまったのが残念。この作者の別作品、”A Thousand Splendid Suns”も読みたいと思っているけど、こちらは作者ではなく、女性が朗読している様子。やっぱり1作目の朗読の評判が良くなかったからかな…なんて勝手に想像してしまったけれど、単に”A Thousand Splendid Suns”は女性の視点から書かれた作品だから、という理由からかも。アフガニスタンで使われる言語を喋るプロの朗読者がなかなかいないのかも知れないなぁ、なんて余計なことを色々考えてしまった。

  • アフガニスタンの無常。

  • 嗚咽が止まりません・・・素晴らしい作品。人間、人間社会はとても複雑で、それによって望まぬようなことが引き起こされてばかりですが、ひとそれぞれが持って生まれた魂は例外なく善良なのだろう、と考えさせてもらいました。(映画もよかった!)

  • 107,052words

    • angel2013さん
      メッセージありがとうございました!うれしかったです。同じ著者の違う本を読んだことがあります。感動しました。これも読んでみようかなあ。もしよか...
      メッセージありがとうございました!うれしかったです。同じ著者の違う本を読んだことがあります。感動しました。これも読んでみようかなあ。もしよかったら、読書日記は再開したので、遊びにきてください!本家もあるけどまだです(笑)http://angelbooklog.blog.jp/
      2013/10/29
  • 可愛いだけでない子どもの心が丁寧に書かれていて引き込まれましたが、その分、終盤の展開は厳しすぎて読むのが辛かった。

  • アフガニスタン、テロの温床くらいしかイメージがないけど、その奥の普通の人々の心情や出来事がありありと思い浮かべられる。
    かつての素朴な日々と一転して変わった様子。
    世界のほとんどの人が知らない世界だと思う。

    始めから表現がいいなと思うところがあって、最後3ページはすごくいい。
    喧騒の中、2人の時間が止まった瞬間の描写から最後まで。

    "For you, a thousand times over"
    I heard myself say.
    Then I turned and run.
    It was only a smile, nothing more.
    I didn't make everything all right.
    I didn't make anything all right.
    Only a smile. A tiny thing.
    A leaf in the woods, shaking in the wake of a startled bird's flight.
    But I'll take it. With open arms. Because when spring comes, it melts the snow one flake at a time, and maybe I just witnessed the first flake melting.

    I ran. A grown man running with a swarm of screaming children. But I didn't care. I ran with the wind blowing in my face, and a smile as wide as the valley of Panjsher on my lips.
    I ran.

  • 悲しくも美しい物語。
    主人公を中心とした様々な絆をメインに話が進みます。侵略前と後のアフガニスタン、どんな時にでも、文化を大切にし、家族や周りの人を愛する気持ちを忘れない登場人物にとても心が惹かれます。

    心に響く台詞も盛りだくさんです。

  • ソ連がアフガニスタンに侵攻してきた当時の、お金持ちの家に生まれた少年と、その召使の息子との友情の物語。悲しく、切なくなりながらも、ストーリーに引き込まれ2日間で読了しました。英語表現が非常に美しく、繊細な景色が目の前にありありと浮かんでくるようです。

  • Excellent story and writing. I believe everyone will enjoy reading it. Tis definitely a must read book!

  • この本が原作になった映画を見たのが2007年。
    あれから随分長い時が経ったけれども、
    先日読んだ[A Thousand Splended Sun]が素晴らしかったので
    ようやく彼のデビュー作になるこの作品を読む事ができた。
    映画も良かったのを覚えているけれども、やっぱり原作は違う!
    これがデビュー作だなんてすばらし過ぎる!

    A Thousand Splended Sunも根を掘れば軸は家族だったけれども
    この本も軸は、家族のあり方、家族の姿だ。

    マスターの子と召使の子。
    立場は違えど兄弟のようにして育った二人。
    しかし、ある事件をきっかけにすべてが崩れていく。
    何も出来なかった主人公。
    傍観者でいることは時に罪だ。
    そしてその罪の意識に耐えられなくて更なる嘘をつく。
    崩れてしまった二人の関係。
    幼い頃の記憶と現在が行き来する。

    アフガニスタンと聞くと遠い国だ。
    ニュースや新聞ではいくらでも名前を聞く。
    この作品は、アフガニスタンの歴史や民族や文化に触れながらも
    描かれているのは家族愛。扱っているのはそこで生きる人々の姿だ。
    アフガニスタンの文化はもちろんのこと、移民文化もしっかり描かれている。
    アフガニスタン紛争の末、アメリカに亡命した主人公とその父。
    ”自由"の国アメリカで一から生活をやり直した移民としての二人の暮らしぶり。
    それもまた興味深い。

    少しずつ明かされていく真実が、波のようにじわじわと押し寄せてきて
    本当にもう素晴らしい!
    親子2世代で犯した罪と懺悔。
    人は生きていれば幾度も間違いを犯すだろう。
    その間違いと向き合っていくには、そして償いとは……。

    これで、この人の作品2冊とも読んだけれども
    まだ3作目は出ていない模様。
    すっかり大ファンになってしまったのでこれからがまた楽しみでしかたない。

    A Thousand Splended Sunとあわせて絶対お勧め!!

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