Hiroshi Sugimoto
- Hatje Cantz Verlag Gmbh & Co Kg (2010年10月31日発売)
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感想 : 3件
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- Amazon.co.jp ・洋書 (397ページ)
- / ISBN・EAN: 9783775724128
感想・レビュー・書評
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U2のアルバムの表紙にこの写真が使われているのを見たとき、僕が感じたのはそこはかとない違和感ばかりだった。タイトルはこの写真から名付けられたのか…No Line On The Horizon。たしかにぴったりと組みあわさっているけれど、杉本博司の写真にU2の歌はどこか外れて響く…
直島のベネッセミュージアムにはこの作品集に収められた作品が、日光のもとに野ざらしに展示されている。この写真はいずれ消えゆくものなのだ。消失までの過程にこそ、杉本の関心はそそがれていることをその時、はっきりと感じ取ることができた。
水平線の曖昧で不確定な何枚もの写真は、海辺から海の果てに向けてとられているにもかかわらず、包み込まれるような感覚に満たされている。
写真からは西洋の遠近法的な奥行きは失われてしまっていて、水墨画のような日本古来の空気遠近法が取り込まれている。
はっきりとした水平線がないことで、その先にひろがる広大な海原の虚無へと思いは傾く。包み込まれるようなヴェールがあるために、水平線はあたかもそのはるか先にあるような錯覚にとらわれる。
境界が失われるとき、感覚は押し広げられ、無限の宇宙と直接リンクする。
広大な虚無が口を開き、あらゆる距離は失われる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自然の美しさの極致がここにある。
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