遺産相続ゲーム 五幕の悲喜劇

  • 岩波書店 (1986年7月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (302ページ) / ISBN・EAN: 9784000001175

みんなの感想まとめ

人間の欲望と心理が交錯する遺産相続をテーマにした作品は、屋敷に集まった10人の相続人が織りなす悲喜劇を描いています。各人に渡された封書の内容を巡り、彼らはそれぞれの思惑を抱えながら行動し、その結果、屋...

感想・レビュー・書評

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  • 『芝居『遺産相続ゲーム』は寓話です。ですが、寓話劇であることは、演出によって特別に強調する必要はありません。一番いいのは、観客がそのことに自分でだんだん気づいてゆき、あらためてそれを忘れて、後でまた発見することです。ですからこの芝居は、できるだけリアリズムの手法で上演してください』―『演出上のいくつかの注意』

    「はてしない物語」や「モモ」に代表される作家ミヒャエル・エンデの戯曲。人間の心の底に棲みつく性悪的な部分と性善的な部分の葛藤を描いた代表作とは異なり、この舞台上で展開されるやり取りには善的なものは出て来ない。それらしい台詞もあるにはあるが、それも偽善的に響いている。劇中の人物の台詞にもあるように、最終盤で急に予定調和的に大団円を迎えることも出来た筈だと思うけれど、作家は読者の予想を裏切って人間性の闇の部分へ目掛けて登場人物たちを追いやってゆく。代表作で示されたような人間の善なる部分に期待するエピローグは展開しない。

    そもそも戯曲というものに対する苦手意識があるのだが、それは例えば思春期に読もうと試みたシェークスピアやプラトンが理解できなかったということに由来する意識なのかも知れない。けれど、独白ではなく、他者に対する言葉の持つ表層的な意味と、いわゆる「行間」にあるとされる「書かれていない言葉」の温度差が理解できないという思いが苦手意識の根底にはあるのかも知れない。例えば「ぶぶ漬けどうどすか」と言われたら「もう帰っておくれなはれ」という意味だと解釈しなければならない、というような、イケズな意味が解らないということ。もちろん、小説における地の文がそういう解釈を必要としないという訳ではないだろうけれど、それは理解の助けとなるし、少なくとも独白の台詞を読む時に身構える度合いは一段軽くなるということはある。

    あるいは、戯曲の台詞からは文脈が読み取りにくい、とも言えるのかも知れない。舞台上で演者が動きを加える時、その動きに文脈あるいはニュアンスが宿る。映画やドラマの舞台装置が無意識の内に語り掛けているものを脳は察知している。戯曲の台詞の羅列からはそれが浮かんで来ない。そして何より、台詞というものがどうしても白々しく嘘臭く聞こえてしまうのだ。例えばドラマでも独白をナレーションではなく、独り言のように声に出して語られたりすると同じような拒絶反応にも似たぞわぞわとした気分が沸き上がるのだけれど、それと似た感覚。そういう事情もあり、自分がエンデの言いたかったことを取り違えている可能性は多分にあるのだけれど、エンデの初期の作品(「モモ」や「はてしない物語」よりも早い時期の作品)に暗い寓話があるということの意味を深読みしてしまうと、この人の代表作を素直に読み取ってはいけないのかな、という気分にさせられる。

  • 人が混乱し恐怖と驚愕に染め上げられて怯えていく様を描く。その様は吐き気すら覚えるほど苦痛。
    どうせすべてが狂気なら、愛にみたされていたいです。

  • あの・・ネバー・エンディング・ストーリーの作者による戯曲〜フィラデルフィアという故人から遺産相続人として指名された人々が屋敷に入ると,屋敷は人の心を反映して変化していく。全員に渡された紙片を突き合わせないと遺言は明かされないのだが,遺産を独り占めしたい・・・遺産を人にとられたくない・・・そんなことはどうでも良い・・・という各人の思いは千々に乱れ,外から見ると小さいのに入ると意外と大きいと感じていた屋敷は,入り口や部屋の出入り口を閉じ,火事を起こして,閉じこめられた人々は焼き殺されてしまう。純真な若者が最初に死に,彼が慕っていた嘘つきの少女は壁に呑み込まれてしまう〜理不尽といっても良いほど訳の分からない本です。上演するときは,こうやるんだ・という作者のノートまで付いています。演出家は大変だろうなあ。愚かな人間が友愛という概念を受け入れない。遣り手の実業家・疑うことを知らない裕福な主婦・嘘つきの女児・子どもの心を持った青年・無知な皿洗い女・利口な振りをする女教師・忘れっぽい執事・強かな老農婦・野蛮な軍人・破産した元貴族夫人のサーカス興行主・何が本当か判らない薄っぺらな前科者・・・国ってのは,こうした愚か者で構成され,何となく内側で揉めている

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著者プロフィール

文:ミヒャエル・エンデ(Michael Ende)
1929–1995年。ドイツのガルミッシュ生まれ。作家。小説、絵本、戯曲、詩などの文芸作品がある。愛をもって社会を見つめ、深い思索のもと生まれた作品は、世界中の多くの読者に読み継がれている。1960年『ジム・ボタンの機関車大旅行』(邦訳版1986年/岩波書店)で作家としてデビューし、ドイツ児童文学賞を受賞。以降、執筆活動を続け数々の国際的な文学賞を受賞。主な邦訳作品に『ジム・ボタンと13人の海賊』『モモ』『はてしない物語』『鏡のなかの鏡—迷宮—』『魔法のカクテル』『魔法の学校—エンデのメルヒェン集』(以上すべて岩波書店)などがある。『モモ』の装画・挿絵はエンデ自身が描いたもの。長野県の信濃町黒姫童話館に、原稿や草稿、ノート、写真、書簡、自筆原画、愛用品などのエンデの関連資料が多く所蔵され、一部が常設展示されている。

「2026年 『影の縫製機』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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