源氏物語男の世界

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 1
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000006187

作品紹介・あらすじ

源氏読みの第一人者がときあかす王朝のヒーローたちの素顔とその魅力。はじめて書かれた源氏物語男性図鑑。

感想・レビュー・書評

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  • 源氏物語に登場する男君へスポットをあてた源氏男君考察と言える1冊です。

    これには前作があり、前作で紹介出来なかった男君が田辺聖子さんの深い考察力で描かれています。
    スポットと当てられる主な男君は、薫・桐壺院・頭中・朱雀院の4人。
    田辺さんは宇治十帖が好きで上下巻で大変面白く新語訳も出しておられるせいか本書の半分は薫を語る章が占めています。
    私も田辺さんのお陰で世間一般の宇治十帖は助長的で面白くないと言う固定概念を打破出来ました。

    「新源氏物語 霧ふかき宇治の恋」は本当に面白く何度も再読している愛蔵本のひとつですが、読めば読むほど私は薫が嫌いになりますw
    宇治十帖が面白いのは大君のこうとしか生きられない哀しさ、中君のしなやかな生き方、浮船の落飾後の清々しさ、これらが読んでいて面白く再読を重ねてしまうのであって、読んでいる間中薫に「あほちゃうか、薫ほんまウザイわー」と毒づいてしまいますw

    なので巻頭から長々と続く薫考もやはり「そうそう、だから薫って嫌いやねん。あー、思い出しても腹が立ってくるわー!」となってしまいましたが、田辺さんは薫の出自の複雑さから「これもしょうがないのよ。薫はこうとしか生きられないのよね」と優しく薫考を綴ります。

    私は桐壺院の章で今までの私の中の桐壺院イメージが大きく良いほうへ傾きました。
    桐壺の更衣に惑溺し政をおろそかにし更衣を失えば失ったでまた呆けたようになり使い物にならなくなる。
    しかし我が子に妻を寝取られるコキュとなった後の桐壺院はこの星ひとつをまるごと包むほどの大きな愛情をもって源氏を赦し愛し、無くなって後も朱雀院の夢枕に立ち源氏復活の手助けをする。

    本書では桐壺院のモデルを醍醐帝としているという通説から、稀代の名君であった醍醐帝・村上帝のエピソードが紹介されています。
    これが面白かった!
    いや古代史に通じている方には今更なエピソードばかりだとは思うのですが、私は全くの不勉強なため初めて知ることばかりで、とても面白かった!
    同じく田辺聖子の「むかし・あけぼの」では花山帝の狂気ぶりがリアルに描かれていて、「天皇といっても皆が佳人というわけでもないのだなぁ」と驚きつつ読んだものでしたが、醍醐帝が余りにもすばらしい御世だったから後醍醐天皇と名をつけたこと等、なるほどなぁと面白く読みました。

    前作『源氏物語』の男たち―ミスター・ゲンジの生活と意見 (講談社文庫)を早速Amazonで取り寄せて読みます!

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著者プロフィール

1928年3月27日生まれ、大阪府大阪市出身。樟蔭女子専門学校(現・大阪樟蔭女子大)卒業。1957年、雑誌の懸賞に佳作入選した『花狩』で、デビュー。64年『感傷旅行』で「芥川賞」を受賞。以後、『花衣ぬぐやまつわる……わが愛の杉田久女』『ひねくれ一茶』『道頓堀の雨に別れて以来なり 川柳作家・岸本水府とその時代』『新源氏物語』等が受賞作となる。95年「紫綬褒章」、2000年「文化功労者」、08年「文化勲章」を受章する。19年、総胆管結石による胆管炎のため死去。91歳没。

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