ネットワーク組織論

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000017916

作品紹介・あらすじ

あらゆる局面で「これまで通り」のやり方は通用しなくなってきた。企業とは何か、組織とは何かという根本問題が問われている。現代の企業はネットワーク多様体である。新たな文脈を切り開く重要な情報はどこにあるか。それはどう伝わり、どう広がるのか。本書はそんな疑問に答える新しい情報論・組織論を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 以下引用

    ★場面情報の重視とは、「神は細分宿るということ」。物事ないしその場その場の細部の出来事にものの考え方を組みなおしてゆく鍵がある

    ★マーケティングは、企業と消費者間のコミュニケーションシステムの構築に関するもの。ここでのコミュニケーションは、片方から片方への形式的情報を一方的に流すということではなく、互いに相手が発信する情報の意味を解釈しながら、関係を形成するということ

    一般的にいって、関係を形成するということは、情報をやりとりしてお互いの持つ考え方を理解し合うこと。両者の間に情報の意味を伝える双方向のメディア、つまり情報媒体を構築すること。そのようなメディアのことを「コンテクスト」と呼ぶ。

    コンテクストとは、過去の相互交流の経験の蓄積であり、将来の「期待」を形成するもとになるもの

    コンテクストは、相互交流の中で発生するさまざまな情報の集合の中から文脈を読み取ることが可能になる関係をつくること

    企業活動の本質はコンテクスト作り。主たる関心ごとは、製造、流通、販売などではない。それらの活動を通じて、取引先である他企業や消費者にいかにして意味が通じ合う関係を持てるかということ、一方的でないコンテクストを構築するかである

    情報の意味を解釈するのに、「正解」はなく情報の受信者は潜在的には無限にありうる意味のうちのひとつを主観的判断によって選び取る、

    主観の満足を求めること、個人的コミットメントを伴うコミュニケーションをすることが、経済活動を営む本質的な動機のひとつ

    コミュニケーションを重んじるというと、酒を飲みながら、、、と思ってしまう、そうではなく、異なる背景をもつものどうしの間で意味が通じるコンテクストを作るということ

    閉ざされたシステムからは新しい情報や意味はうまれない。ネットワークという概念が、閉鎖的共同体の固定観念から流通性を開放して、意味が共同体を横断して自由に飛び交い、結びつくことを可能にする

    売り手と買い手を媒介する商業機能には、モノを生産するのと同じようなコストがかかる

    ★経済の運営にとって必要な知識は、時間と場所とその場面にいあわせた人の解釈に制約されたオンザスポットの知識。それは市場における相互作用から生み出される

    ★企業は、普遍的な知識を生産する場ではなく、現実と切り結び、現実と触れつつ、多面的な考察を行う場であり、臨床の知を生み出す場(トポス)である。企業の日々の運営に必要な情報を生み出すだけではなく、場面の細部を窓として環境世界を新しくつかみなおし、新たに情報を創出する場。特定の場所を設定した新しい発見の方法

    新しい知識を生み出す「場」としての組織という論点を強調すれば、その目的にそくした組織の境界はもう少し弾力的に考えなければいけない

    学習過程によってのみ、組織は適切に期待を作り直し、事業の新たな文脈を探っていくことができる。総合調整が起こり、自己組織化が進む

    情報は、人と人との相互作用の中から生まれるものである。情報の意味というものは、はじめからこれこれと定まったモノではなく、人と人との間の相互解釈サイクルの中で形成される

    従来の経済学は、既にどこかに存在する情報を探索したり、モニターしたりする、情報の静的側面を考慮の対象としてきた。

    ★もし情報がたくさんため込むことで優位性を発揮できるという性質しか持たないとしたら、情報という名の新しい資源が考慮の対象に入ってきたたけで、情報重商主義というか要するに従来と変わり映えのしない世界観が経済を支配することになる、しかし情報はそうではない革新性を内包している


    情報に関しては、静的側面(ため込むこと)より、つなぐこと(動的側面)がより本質的に重要である。産業の新文脈をつくり、消費者とのコミュニケーションサイクルを回しつつ、商品を生む

    動的な不確実性は、情報の意味があらかじめ定められたプログラムにより決まるのではなく、相互関係の中で、ダイナミックに自己組織的に形成されるということにより不確実性

    コンテクストとは、過去のインタラクションの経験を蓄積したもの。これは動的情報の蓄積のこと。それは、共有された感動、共感の経験、満足のメモリー。このリズムの共鳴。

    データなどの静的情報を蓄積するより、多様なコンテクストを持つことがより本質的。

    情報が情報を理解しながら進むプロセス、情報の自己解釈過程は、外部からの統制や管理によりあらかじめ定められたプログラムに基づかずに自分が自分を解釈しながら、変化していく過程のこと

    ★情報の自己解釈が可能になるには、情報を解釈する主体に自己という意識がなくてはならない、しかし事前に確定された自己がすでに存在して、他者との境界は固定されたものであるとするなら自己解釈する必要はない。

    静的なネットワークは、自己と他者を固定的に分離してとらえている、動的なそれは、関係の中で自己を再解釈してゆく情報のダイナミクスがある

    →◎◎★情報それ自体があるのではなく、相互交流の中で展開する運動として、それにのまれつつそれ(情報)を知るという形で、情報は捉えられ、そこに経済が発生する。つまり、情報というのは、互いが書き換わっていくなかで生成されるということが言える


    ★関係を持つには自己が必要だが、その自己は関係の重なりとしてしか認識されない

    確率した自己がインタラクションの中で、常に新たな自己の超越を進めるというラセン状サイクルの過程が必要である。この過程こそが、われわれのいうネットワークプロセスである

    ★自称ネットワークは、メンバーそれぞれが、各自の領域を既に持っていて、それはしっかり守り、協力するというスタティックな関係に基づいているものが多い

    ネットワークは関係を変える関係形成のプロセス。その基本特性はそのプロセスが自己と他者の境界が常に引き直される自己組織的な進み方をするというところ

    ネットワークにおける関係は、選択縁。

    情報の見地からいけば、発信者と受信者の関係が固定されていて、情報の意味抽出のやり方が決まってるという情報理論の枠組みではなく、同じ情報でもさまざまな解釈が可能であり、どういう解釈をとるかによって関係が変化し、その変化によってまた解釈が変わりうるという相互依存的展開

    構成員の関係を固定的にとらえ、各々の構成員の行動を確定したものと仮定する限り、意外な結果、新しい関係の自発的発生の可能性はない

    揺れを許容しない決定論の壁を破ると、そこにはプログラムしきれない世界がうごく

    ★★ネットワークはカオス的状況に身を置くことにその本質がある

    ネットワークとは、数学でいうカオスのように、表面は混沌としているが、その背後には無数の秩序が潜んでいるような状態。ネットワークが組織として成立するかということは結局、ネットワークの内包する多種多様な潜在的秩序の中からその時々に適合したものが自律的に読み取られている


    異質性を含んだ編集。異質なものを何とか取り込みどうかするのではなく、異質なものをそのまま共存させ、その差異を情報にしようというアプローチ

    人、組織は固定的な境界の中にいつまでもいては、新しい情報は生成されない。関係を変えるというこは、組織が常に外に向かって、新しい文脈を広げること

    ★★ネットワーク過程は境界の再定義であり、一方がもう一方を取り込んでしまうといった全体の融合を意味しない

    ★★大学機構は独立した組織。しかしそこでの研究は大学の活動に結びついている。分離しているが、連結されてる。(研究所と企業も然り)
    研究機関が独立してありつつ、企業も独立してあるのに、そこが横断、混交している状態かな。

    単一文脈の支配する組織における秩序は、統制と管理によりもたらされる。

    ★★個々のメンバーの差異を尊重し、カオスに自己組織的秩序を生成することは、しかし個々の行動を完全に放置することではない。そこには個々を結び付け新たな関係を作り、社会に新たな文脈を形成してゆく主体が存在している。それが企業者。何らかの場面にコミットし、具体的な発見の場に出会い、その場面情報の意味するところの広がりを読める人、カオスの中に身を置いて、その無限の多様性から新しい文脈を直感でつかむ人。
    (カオス→秩序の生成。スタジオムンバイを思い出す)

  • ネットワーク組織論

  • 10年以上前に読んだ本。その時は難しくて、やっとの思いで読み終えた

    今になってもう一度読んでみたい本

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