- Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000017978
作品紹介・あらすじ
9・11以降、通信規制・傍受が法的に整備され、自由な空間であったインターネットに規制がかけられはじめた。それにともない個人のプライバシー侵害も拡大している。激動する世界の情報戦略の状況を、政府・企業・関連団体などの現場取材と豊富な調査データから、浮き彫りにする。
感想・レビュー・書評
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9・11はアメリカだけではなく世界中のインテリジェンス・コミュニティに生き残る理由を与え、活性化させてしまった。
ゴア副大統領の支持基盤はハイテク産業だった。
インターネットコミュニティはワシントン政治jのルールに従って伝統的なロビー活動をしなくてはならないということ。
安全なネットワークを持つことは、アメリカの利益になる。
自由でなくなったインターネットは、本来の魅力を失いかねない。インターネットコミュニティはサイバースペースがもはや独立国ではなく、商業主義に乗っ取られ、政治に分断された空間になりつつあることを認識している。
中国型情報化は、アメリカ型情報化についていけない国々にとってはひとつのモデルとなる。
IETFはインターネットにかかわる標準技術策定のための組織であり、インターネットガバナンスの中核となる組織のひとつでもある。
インターネットではガバメント・システムは成立しておらず、IETFやICANNなどが協調しながらも分散的に意思決定を行うことで、インターネットは成り立ってきた。
かつての電信や電話のネットワークはITUという政府間調整気候を頂点とし、各国政府と通信事業者によってコントロールされていた。そこには競争はほとんどなく、技術革新に疎く用途限定的なものであった。しかしインターネットはITというシンプルなルールを元に政治体制やビジネスの利害を超えた接続を可能にした。
インターネットではハードパワーはほとんど意味をなさない。重要なんおは、相手を説得し、誘導するソフトパワーである。インターネットのガバナンスはほとんどが技術をめぐる話にとどまっている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1118夜
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2013/2に読み直した。
--2008/9の感想--
弟の本棚にあったので読んでみる。サイバー戦争から、PGPなどの暗号から、インターネットガバナンスの問題まで扱う。それぞれがあまりに独立していて全体として誰のために書かれた本なのか最後まで理解できず。インターネットとインテリジェンスを安易に結びつけるのはいかがなものか。IETF, ICANNなどガバナンスの問題に触れた書籍は少ないのでその点は有用。
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--2013/2の感想--
改めて読んで筆者の問題意識の鋭さに気づいた。「なるほどー、そういうことね!!」の連続であった。5年前の自分は何もわかっていなかったことに気づく。
筆者はインターネットについてのいくつかの誤解を解こうとしている。インターネットは世界中にある個々のノードが相互に接続したフラットな世界であるという信仰、「セルフ・ガバナンス」の伝統によりインターネットはインターネットコミュニティのものであるという神話、IETF/ICANNにおける強調分散型の意思決定が成り立たなく、特にICANNは機能不全に陥っていること。
そして『市場化されたインターネットは市場の原理に吸い寄せられ、強者が弱者を支配するヒエラルキーを形成しつつある』ということ。
筆者のように技術と政治の両方向からインターネットを考える人がいないと「理想郷インターネット」は現実に着地できずに崩壊するのではないかと、最近のサイバー戦争報道ブームを見ていて思う。
印象に残る以下の一節は今日の現状をピタリと予言していた。
「複雑化する状況のなかで、サイバー・ワシントニアンたちがインターネットへの規制強化に抵抗し、インターネットの自由を守り続けられるのかどうか、これが当面のネット/ポリティックスの課題となるのではないだろうか。(p.87)」
恐れ入りました。ごめんなさい。
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著者プロフィール
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