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本 ・本 (409ページ) / ISBN・EAN: 9784000019774
感想・レビュー・書評
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構造主義的な文化記号論が静的な分析にとどまっているという弱点を指摘し、より根源にさかのぼってカオスとコスモスの弁証法に視座を定めつつ、人間の文化についての本質的な考察をおこなっています。
世界的なソシュール研究者として知られる丸山圭三郎も、晩年のソシュールのアナグラム研究に注目するとともに、カオスとコスモスの運動という観点から独自の思想を展開していることを思えば、著者の試みはそれほど独創的とはいえないように思います。とはいえ、「語」と「文」と「発話」という重層的な観点から人間の言語の本質に迫るという企図に基づいて、ソシュールからチョムスキー、オースティンといったさまざまな立場からの言語論を相対化している著者の議論は、これらの言語論の関係についていろいろな示唆を読者に投げかけているようにも思います。
構造主義からポスト構造主義への移行をきわめて大雑把に捉えるならば、「構造」から「力」への移行ということができるのではないかと思います。しかし著者の言語論・文化論は、構造という認識のリミットを踏まえつつ、そこから逆算的に「力」を割り出していくポスト構造主義の戦略とは異なり、むしろ人間学的な立場にとどまっているように思います。こうした著者の立場は、むしろ構造主義からの退行ではないかという疑問を、どうしても拭うことができませんでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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