福祉の経済学 財と潜在能力

  • 岩波書店 (1988年1月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (190ページ) / ISBN・EAN: 9784000020046

感想・レビュー・書評

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  • こども家庭庁の件で、ある先生から紹介していただき読んだ。実はcapabilityについてはアリストテレスの勉強会でも言及されたことがあって、なんとなくの理解はあったのだが、本書を読んで「厚生経済学もまた哲学の基礎の上に成り立っている」と実感。

    セン自身が、このようにも述べている。

    「本書のもっと積極的な側面として、私は福祉への新しいアプローチの展開に努めた。人がその達成に成功するさまざまな「機能」(すなわちひとがなしうること、あるいはなりうるもの)と、ひとがこれらの機能を達成する「潜在能力」に集中するこのアプローチの起源は、アダム・スミスとカール・マルクス、さらに遡ればアリストテレスまで辿れるものである。このアプローチは、福祉を、ひとが享受する財貨(すなわち富裕)とも、快楽ないし欲望充足(すなわち効用)とも区別された意味において、ひとの存在のよさの指標と考えようと試みる。」(2)

    本書でびっくりしたのは、下記の記述。こんなに人間社会を的確に見抜いた経済学があるとは驚いた。

    極貧から施しを求める境遇に落ちたもの、かろうじて生き延びてはいるものの身を守るすべのない土地なし労働者、昼夜暇なく働き詰めで過労の召使い、抑圧と隷従に馴れその役割と運命に妥協している妻、こういったひとびとはすべてそれぞれの苦境を甘受するようになりがちである。かれらの窮状は平穏無事に生き延びるために必要な忍耐力によって抑制され覆い隠されて、(欲望充足と幸福に反映される)効用のものさしには、その姿を現さないのである(36)

    福祉経済学だけでなく今の政治哲学を理解する上でも、必須図書だと思う。

  • 数学の基礎がない私には難し過ぎ
    幸福とは何かを追求した本
    何かを与えても(税金で)
    それを使う人の能力によって全く価値が違ってくる
    例が自転車
    健常者には楽にどこでも行けるようになる
    自転車にのって気分よく走れ
    なおかつ流れるような景色も楽しめる価値もある
    障害者に自転車はほぼ移動手段としての価値がないが財産としての価値のみ存在する
    潜在能力によってただ与えても意味がない
    その人の価値にあったものを与えてる
    ケイパビリティアプローチというらしいが
    経済学って奥深い

  • たぶん何度も読み返す気がする
    買ってよかったし、もっと早く読めばよかった。

    貧しくて物を持っていなくて、ささやかな物で満足し幸福を感じている人と、ものに溢れていながら幸せを感じられない人と比べた時、前者の方が恵まれているとか言えるだろうか?

    幸福間についての枠組みを持ちながらも、公正に関する社会の責任は放棄しちゃいけないのだと考えさせられる

    幸せだから、人から搾取されるような立場にあっても良いのだとか、不利な状況に置かれても良いのだとか、そういうことは言えないのである。
    その辺り、芯から考えさせられた。

  • 放送大学

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