民族とナショナリズム

制作 : 加藤 節  Ernest Gellner 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 289
レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000021968

作品紹介・あらすじ

「近代世界の形成と再形成とに果たした力は明白でありながら、それに取りつかれていない人間には依然として他人事で理解不可能なままにとどまっているナショナリズム」、その本質は何か、この難問に、英国哲学界の巨人ゲルナーが、政治社会学、社会人類学などの該博な知識を駆使して解明を試みる。1983年の刊行以来、「第一級のナショナリズム研究書」と高く評価され、大きな影響を与えてきた現代の名著、待望の完訳なる。

感想・レビュー・書評

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  •  ナショナリズムに関する古典的著作の一つ。ナショナリズムについて、政治的な単位と民族的な単位が一致していなければならないとする政治原理と簡単に定義付け、ナショナリズムの第3世界におけるその野蛮性や暴力性、排他性が指摘される中で、むしろナショナリズムとは高度な文化、読み書き等の教育の普及と言語的統一、官僚制度や国家的枠組みの発展、そして共同体内部の同質性を持ってして初めて可能になる近代的な愛国主義であると述べる。
     ゲルナーの議論は、文化本質主義者や民族等を所与のものと見なす論者への批判としては部分的に有用であるが、現代においてはその欠点をあげれば枚挙にいとまがない。第1に、ネーションと民族、あるいはエスニックなどの定義が不明瞭なままに、定義付けの際に用いられており、定義の破綻が生じている。第2に、ナショナリズムを国家と一体に捉える事で、国家なきナショナリズムを排除しているが、これでは冷戦後の民族紛争やナショナリズムを捉える事ができない。この点については、ゲルナーの定義ではこれらのナショナリズムといわれるものは部族主義であるとされるのかもしれないが、グローバル化と高度な技術の利用が新しい戦争においては見られるというカルドーの主張を鑑みれば、ゲルナーの主張するような前近代的な部族主義として冷戦後の地域/民族紛争を捉える事は適切ではない。第3に、ゲルナーの主張は、後に現れるハンティントンなど(土佐氏の主張を借りれば、恣意的で悪意のある)文化本質主義者に対しては確かに有効な批判になりうるが、同じ近代化論者でもセングハースのように外部との関係を重視し、選択肢は内部の人々自身にあり、進む方向も多様だという温和な近代化論と比して、排他的で一方通行な近代化論にすぎないと批判出来る。第4に、ナショナリズムは、内部に及ぼす作用と外部に及ぼす作用があるが、少なくともゲルナーは後者を軽視、もしくは無視しており、その点で物足りなさを感じる。
     その他、あげれば切りはないが、国家と国民が一体である事がある意味で当然視される近代国家発祥の地としてのヨーロッパの研究者の古典的ナショナリズム論としては、まあ仕方がないのかなとも思う。ただ、民族と国家が一致していなければならないという考えは、ソ連内部の共和国形成の際の決定にも指摘出来る事である。まあ、これは民族自決の原則の焼き直しでしかないので、その例外やそれによって生じる後の時代の問題を反映していないので、あまり意味はないが。

  • 原題:Nations and Nationalism, (Cornell University Press, 1983).
    著者:Ernest Gellner (1925-1995)
    監訳:加藤節

     思弁的。


    【内容紹介】
    ■体裁=四六判・上製・カバー・266頁
    ■定価(本体 2,400円 + 税)
    ■2000年12月22日
    ■ISBN 4-00-002196-6 C1031
     近代世界の形成に大きな役割を果たしながら,これまで十分理解されてこなかった民族問題.「ナショナリズムとは何か」という難問に,英国哲学界の巨人ゲルナーが,政治社会学,社会人類学などの該博な知識を駆使して解明を試みる.「第1級のナショナリズム研究書」と高く評価されてきた名著,待望の全訳.
    https://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/00/6/0021960.html

    【目次】
    謝辞 [v-vi]
    凡例 [vii]
    目次 [ix-xii]

    第一章 定義 001
    第二章 農耕社会における文化 014
    第三章 産業社会 032
    第四章 ナショナリズムの時代への移行 066
    第五章 民族とは何か 090
    第六章 産業社会における社会的エントロピーと平等 107
    第七章 ナショナリズムの類型 148
    第八章 ナショナリズムの将来 184
    第九章 ナショナリズムとイデオロギー 205
    第十章 結論 228

    注 [239-243]
    参考文献 [244-247]
    訳者あとがき [249-254]

  • 難しい

  • 「ナショナリズムとは、第一義的には、政治的な単位と民族的な単位とが一致しなければならないと主張する政治的原理である。(P1)」と定義し、ナショナリズムは極めて特殊な愛国主義の一形態であり、その特性は(1)同質性、(2)読み書き能力、(3)匿名性である、と説く。
    ナショナリズムは国家のない社会には発生せず、また民族はナショナリズムから生み出される、という展開やナショナリズムは恣意的な選択によって文化を根本的に変造してしまうし、文化的多様性を説きながら同質性を強要するという説明に納得した。
    「ナショナリズム」と「文化を愛し国を大事にする」ということを同一視しないようにすることは今の時代に重要だと思った。

  • 戦争論p200

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    書斎の本棚から百冊(佐藤優選)49
    否定神学の手法を用いて描かれたナショナリズム論の最高傑作。

  • ナショナリズム研究の御大、アーネスト・ゲルナーの名著。
    文章が力強くて大好き。

    ナショナリズムとは何か?
    本書では「政治的単位と民族的単位の一致をもとめる政治的原理である」と説かれている。
    簡単に言うと一民族、一国家をもとめる感情及び運動の事。
    もちろんゲルナーは本書で、ナショナリズムを肯定しているわけではないが、ナショナリズムとはそういうものであると断言している。

    世界には多文化共生に成功しているカナダのような事例もあるが、
    実際には失敗して悲惨な結果に終わった事例の方がはるかに多い。cf.ユーゴスラビア、ルワンダ等。
    ナショナリズムが火種となる争いは絶えないわけだが、民族自決を訴えたウィルソンはちゃんその事について考えてたのかな?
    別に排他的になるつもりは無いが、そこを履き違えてお花畑思考には陥りたくない。

    理論武装したいネトウヨと呼ばれる方々には特にオススメ。
    移民政策についてソフト面で考える上ですごい重要。

  • アンダーソン、スミス と並び、ナショナリズム三大古典と言われる、ゲルナーの「民族とナショナリズム」

    自分が専門でもなく、読み飛ばしたのもあるが用語が自分にとって難解な面があり、全てを理解したとは言い難い。でも、定義や結論(要約)があるので、比較的わかりやすい。佐藤優氏によると否定神学をもちいているのだとか?

    私の理解では、時代が、農耕社会から産業社会に移るときに分業が必然となり、そのために必要とされることがある。それは、文化が国家を必要とするように、民族が高次元のコミュニケーションをすることが必然となるからである。そのためには、教育等の手段を共有財産としなければならない。

    すなわち、ナショナリズムとはきわめて特異な場面で識別される愛国主義であり、文化的に同質的で、読み書き能力に基礎を置く文化を存続する教育システムをもつほど大きな単位で、その中に下位集団を持たないこと。単位の住民は、匿名的、流動的であること。

    ①同質性 ②読み書き能力 ③匿名性 が鍵となると書いてある。

    時間が経ったら読み直したい。

  • とにかく難しい!
    ゼミの課題で出された本です。
    でも、いい本らしいです。

  • 佐藤優の紹介で読んでみたが、いまいちピンとこなかった。
    近代国家がナショナリズムの枠組みを決める点、
    文化には①野生文化と②園芸文化とがあり。
    ①は自然発生的、②は①を基にするが国家機関等の下支えにより強化される。

    しかし、民族の捕らえ方として、一定の文化を共有していると書いている気がするが、民族とは人種・血縁と似た概念ではないのか?
    文化・人種・国籍いろいろな点かせ更に思考が必要だと思った。

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