村上春樹、河合隼雄に会いにいく

  • 岩波書店 (1996年1月1日発売)
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本 ・本 (200ページ) / ISBN・EAN: 9784000022217

感想・レビュー・書評

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  • 小説家・村上春樹氏と心理学者・河合隼雄氏の対談です。
    1995年に行われた対談のため、話題は『ねじまき鳥クロニクル』や地下鉄サリン事件(ちょうど村上氏は『アンダーグラウンド』の取材中だったようです)などが中心となっていました。

    キーワードとしては、「物語」「宗教」「暴力」などが印象に残っています…が、私とってはなかなか難しい内容でした。
    ただ、対談が行われてから約18年が経過していますが、話題の中の普遍的な部分は今でも十分に新鮮ではっとさせられます。
    村上氏は「これから暴力の時代がもう一度来るんじゃないかという気がすごくする」と言われていますが、その予言めいた言葉は現実になっているように思います。
    そしてその時代を生きる私たちは…。
    何度もくりかえしページをめくり、じっくりと考えたい1冊でした。
    再読の前に、まずは『ねじまき鳥クロニクル』をもう1度読みたいです。

    読んでいて、お二人の波長が合っているんだろうなぁということが、それとなく伝わってくるのが心地よかったです。

  •   再読。

     あるとき、友人との待ち合わせ場所で「ねじまき鳥クロニクル」がやめられなくて立ち読みしながら待っていたら、彼女が村上春樹の大ファンであることを語りだし、「コミット」「コミット」と連発。英語が好きでも得意でもない彼女に「コミット」を連発させる「村上春樹」と「河合隼雄」。「サクリファイス」で初めて知った河合先生が、村上春樹と対談ですと??とこの本を手にし、当時、心がす~っとするような気分になったのに、村上氏のノモンハンでの現象と作品を作る姿勢、主人公と自分は全然別人物、ということしか覚えておらず、ほんとに情けない限り。
     今読むと第一夜における村上氏の腺病質というかほぼ河合先生の患者のようにも思われながらの第二夜の作品に向かう力強さが感じられて、ちょっとびっくりしてしまった。
     この本もだいぶ時が経っていてちょっと切ない気分にもなったけれど、村上氏は今も井戸に降りて作品を作り続けてるんだな~。

  • 何回も読み返している本。

    今回は、
    ・言葉にしない方がいいことがある。
    ・言いたくないことは言わせない。
    ・偶然を待つ。
    というのが特に印象的でした。

    読むタイミングによって、いろんな学びが得られる、とても大切な一冊です。

  • 「ねじまき鳥クロニクル」を読んでいると、それはすべて夢の中の話――実際に夢として扱われているものと現実として描かれているもののどちらもー―のような気がして、河合隼雄ならどう読んだのだろうかなあと思い、本書を再読してみた。これは、ドンピシャで、「ねじまき鳥クロニクル」を書き上げた直後の対談であり、かなりの部分でその話題が登場する。しかし、村上春樹の発言によると、彼自身はほとんど夢を見ないのだそうだ。唯一見るのは空中浮遊だとか。河合隼雄は、そりゃ、これだけ物語を書いているわけで、それが夢を見る代わりになっているのだろうということだった。いや、僕は、村上春樹が自分の見た夢の断片を創作に盛り込んでいるのではないかと思っていたのだが。自分で夢の記録を取っていると、これは創作に利用できそうだな、と思えるものが多い。ただ、気付くと最近全然そういう夢を見ない。つまり、奇想天外なもの、普通には想像できないようなもの、そういう夢を見なくなった。現実の世界で、仕事の責任から解放され、問題を抱えることがなくなったからだろうか。さて、「ねじまき鳥クロニクル」で村上春樹は初めて夫婦の問題と暴力を扱ったということだ。確かにそうかもしれない。僕が最初に読んだのは結婚前。そして、結婚後29年目にして再読をした。妻が一人で判断して堕胎をする。妻が他の男性と性的関係を結んで家を出て行く。僕は結末を全く覚えていなかったのだが、妻が笑顔で戻って来る、しかも子どもを抱えて、そんなことを想像していた。そんな作品が他になかっただろうか。村上春樹に子どもが出て来るなんて珍しいと思った記憶があるのだが。それから暴力の話。ノモンハンで、生きた人間の皮を剝ぐという拷問のシーンがある。中国人をバットで殴り殺すというのもあった。しかし、それは戦時中の話としてそんなこともあっただろうと受け止めてしまった。それよりも、新宿からギターを抱えた青年をつけていき、最終的に主人公岡田トオル自身がバットでこれでもかと殴りかかる。正当防衛とは言えないほどに。翻訳家にそのシーンは必要なのかと問われて村上春樹はうまく答えられなかったという。それについて河合隼雄は、みんなが持っている暴力性を示すために必要だったのだという。まあ、ラスト暗闇の中からクミコを連れ戻すシーンでの暴力によるカタルシスにつなげるために、やはりあのバットは必要だったのだろう。ところで、村上春樹の奥さんは河合隼雄をけっこう読んでいたそうだが、村上家夫妻の本棚にはベルリンの壁があって、全然そんなことを知らなかったというエピソードをどこかで読んだと思っていたのだが、本書の中にはなかった。どこで読んだのだろうか。さてさて、今回再読して一番の驚きは、本書がなんと岩波書店から出ていたということだった。そして、本書もまた単行本で読んだ貴重な一冊である。

  • 村上さんが『アンダーグラウンド』を書く前の時点での対談集。オウム真理教についてお二方の見解が述べられていて興味深い。河合先生はほんとに人が好きなんだろうなということが伝わってきた。人が慕うのが理解できた。

  • 河合隼雄が存命であったなら、15年後の今の2人の対談を読んでみたかったなと思う。特に、暴力性とコミットミントのその後についてどう二人は語っただろう。

  • 村上春樹も変わったなあ...

  • めまいで横になっていた今日、寝ては読み、また寝ては読みして読了。何度も読み返したりしてもまだわからないところもいっぱいだけどうっすら理解できるところもあった。
    暴力の時代がまたやってくるかもっていうのは、もしかして今のことか?23年前にあった対談だけど、今世界中でヤなムード。自国のことばかり優先で、どこも一触即発ムードが漂っている。
    歴史から学べないものなんだろうか、世界は。

  • 二人の使ってる概念の意味がわからないところがいくつもあるので、追いつきながら少しずつ読み返したい

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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