無冠の父

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000022262

作品紹介・あらすじ

「私の父の深沢武吉は、生涯巡査であった」。戦中から昭和三〇年頃までの淡路島。小さな駐在所に暮らす、ある一家の悲喜こもごも。-自身の父親と家族をモデルに阿久悠が遺した珠玉の物語は、父親とは何か、時代の激変のなかの家族のつながり、人間としての矜持、生きることの諦観と希望とは何かを問いかけてやまない。

感想・レビュー・書評

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  • 作詞家阿久悠の父親の生涯についての話。
    愚直で、出世も望まず定年まで勤め、デラシネで、
    友人らしい人もなく、急な別れ。
    無口な父親との関係が、淡々と書かれている。

  • 「私の父の深沢武吉は、生涯巡査であった」。
    戦中から昭和三〇年頃までの淡路島。
    小さな駐在所に暮らす、ある一家の悲喜こもごも。
    ―自身の父親と家族をモデルに阿久悠が遺した珠玉の物語は、父親とは何か、時代の激変のなかの家族のつながり、人間としての矜持、生きることの諦観と希望とは何かを問いかけてやまない。
    (アマゾンより引用)

    うん(´・ω・`)
    面白くなかった…

  • 作詞で著名な阿久悠氏の自伝的小説です。氏は、宮崎県出身で生涯一巡査を貫いた父の生き様と作詞家である華やかな著者自身の人生とを比較しながら、移り変わる時代の中で変わってはいけないものと変わっていかなければならないものを描こうとしたように感じました。

    本書は、未刊行作品であったところ、氏の死後、原稿が見つかったということです。全く他人の手が加えられずに保管されていたことを思えば、亡くなった父の人生を自分の得意とする文章を使って書き起こすことは著者なりの父の弔いの意味が強く、発表は二の次であったのだろうと感じました。

  • 2007年8月に亡くなった阿久悠の未発表小説

    1993年9月から11月に執筆されたが改稿を求めた編集者に対し、
    原稿を戻させ、以後この作品について一切語ることはなかったという。

    遺品のなかから発見された原稿を、遺族の了解を得て、
    2011年10月岩波書店から刊行された。

    巡査として半生を終え、昭和30年退職した父を語っている。

    戦中から昭和30年までの淡路島での生活
    サーベルを下げた父
    男が先という風呂の順番、男にはおかずが一品多い
    という暮らしを守る母
    軍隊に志願して出征していった兄
    神戸の軍需工場で働く姉
    国民学校に入学する私


    戦後姉は、神戸から疲れ果てて帰ってきて、すぐに風呂を焚く。
    母が止める間もなく風呂に入ってしまう。
    母は慌てるが帰ってきた父は何も言わない。

    兄が戦死していたことがわかる。

    敗戦を境に大きく変わる価値観のなか
    闇の食材を絶対に手にしないという暮らしを守るが
    サーベルを返上し、竹刀を焼き、私から見る父は小さくなってゆく。

    姉や私の行動に口を挟むことも無くなってゆく。

    父はほとんど何も話さない人であった。
    この小説は、亡くなった父を思い、父の諦観と威厳について考えた作品。
    小説のかたちを借りた無名の父を描く、父の生涯の評伝であり、しみじみとしたよい作品であった。

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著者プロフィール

1937年兵庫県生まれ。明治大学文学部卒業。82年『殺人狂時代ユリエ』で横溝正史賞、97年菊池寛賞、99年紫綬褒章、2000年『詩小説』で島清恋愛文学賞、03年正論新風賞を受賞。2007年、逝去。

「2018年 『君の唇に色あせぬ言葉を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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