村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝伝

著者 :
  • 岩波書店
3.80
  • (32)
  • (39)
  • (37)
  • (3)
  • (4)
本棚登録 : 526
レビュー : 63
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000022316

作品紹介・あらすじ

ほとばしる情熱、躍動する文体で迫る、人間・野枝。筆一本を武器に、結婚制度や社会道徳と対決した伊藤野枝。彼女が生涯をかけて燃やそうとしたものは何なのか。恋も、仕事も、わがまま上等。お金がなくても、なんとかなる。100年前を疾走した彼女が、現代の閉塞を打ち破る。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 「愛国とノーサイド」読んでたら右翼の大物、頭山満がアナキストの大杉栄と伊藤野枝を援助していたエピソードが紹介されていて、これはずっと積読だった本書を開くチャンスとばかりに読みました。伊藤野枝の無政府主義という主張や甘粕大尉による悲惨な最期、さらには岩波書店という版元のイメージもあってヘビーな読書になりそうな予感がなかなか手に取らなかった原因なのですが、全く逆でポップでロックでノリノリな本でした。いや、こういうのはパンクと言えばいいのかな?なにしろ著者が野枝の生き様に完全にやられてしまっていて、サンテレビのタイガース戦のアナウンサーのように、一方的な応援団として主人公を応援しています。「あとがき」で原因が明かされる著者の熱情は置いておいても、伊藤野枝という人物のことは自分は何も知らなかったことを知りました。物凄いエネルギー。特にあの時代の女性としてあり得ないぐらいのイノベーターでありました。作り出したものは「思想」でも「製品」でもなく「生き方」なのですが。だから後世に伝わっていない、なにしろお墓も案内不詳の巨大な自然石なのです。資本主義前期の彼女の時代から時は流れ成熟資本主義の行き詰まり=息詰まり、を感じる今、伊藤野枝が朝の連続テレビ小説のヒロインになること、夢想したりしました。あり得ないけど。なにしろセックスを人間の交流の基本におくんだから。「正直に生きること」のカッコよさに痺れました。忖度時代の必読書?

  • いゃあ 面白かった
    日本の歴史上の一人の烈女として
    描かれてしまうものが
    多い気がするのですが

    著者の栗原さんの
    飄々とした筆致が
    等身大の伊藤野枝さんを
    描きだされているのが
    とても魅力的です
    ※評伝には先ずみられないであろう
    随所に、挿入される筆者の形容詞句が
    なんとも素敵な効果を生み出しています

    この一冊が岩波書店から出されているのも
    また うれしいことのひとつです

  • 伊藤野枝については瀬戸内寂聴さんの「美は乱調にあり」「諧調は偽りなり」で読んで、その世間の一般常識など蹴散らして猪突猛進に自分の行きたい道を突き進む生き方に一時期夢中になり、ある意味憧れもした。なのでこの本の作者が心酔するが如く筆が躍る様に野枝の生き様を追う姿にとても共感した。ただ野枝の残した文のその思想を作者の言葉で噛み砕く箇所はとても分かりやすく説明されて納得し有り難い所と、余りに過激な言葉を選んで使っていて私にはちょっと腰が引ける所もあった。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    ほとばしる情熱、躍動する文体で迫る、人間・野枝。筆一本を武器に、結婚制度や社会道徳と対決した伊藤野枝。彼女が生涯をかけて燃やそうとしたものは何なのか。恋も、仕事も、わがまま上等。お金がなくても、なんとかなる。100年前を疾走した彼女が、現代の閉塞を打ち破る。

    誰だか分からない状態で読みましたが、猛烈な女性ですね、僕なら絶対一緒に居られないだろうなあ。文章だけでもバイタリティーが溢れまくっていて、魅力的だったんでしょうね。

  • これはまたえらく型破りな評伝だ。もう全面的に「伊藤野枝、サイコー。マジかっこいい!」というスタンスに貫かれている。こういうのもありだなあと面白く読んだ。

    この語り口は好き嫌いが分かれるだろうが、何と言うか、著者の「血肉から出ている」という感じがあって、本気度が伝わってくる。一面では、野枝の思想・行動を、自身の考えに引きつけすぎのようにも思うが、高見からあれこれ言ってるスタイルより私は好きだ。何より、読んでてオモロイ。

    カネがないのを絶望的に悲惨なことだと思い、お上に何とかしてもらおうとし、少し恩恵にあずかれば有り難がり、世間的な道徳を内面化して生きるのは、「奴隷根性」だ。そこから抜け出せ!と、著者は煽る。

    私は、政治思想や運動としてのアナキズムには賛同しかねるが、精神のありようとしては心ひかれるものがある。どんな高邁な思想を掲げていても、「組織」は必ず人間を疎外する。それでも、多くの人はそのどこかの末端で生きていかなくてはならない。伊藤野枝のように生きた人への反感も憧憬もそこから来るのだろう。

  • 伊藤野枝の激しい人生を、疾走感抜群に書き進めた感あり。

    ただ、他の方のレビューにあるように、筆者の入れ込みが凄まじすぎて、主観的な解釈が暴走している気もした。
    だからこそ、入り込みやすい人もいるのだろうけど、、、

    大杉栄と伊藤野枝の理想とするアナキシズム社会はあまりに自由で、個人の身勝手な欲望ばかりに視点が置かれて現実的ではないと感じてしまったが、そんな自分が型にはまった小さい人間だなぁ〜とも思った。笑

  • いやぁ、面白かった。評判がいいというのは知っていたけれど、読んでみてよかった。

    幸徳秋水とか大杉栄とかそのあたりの歴史の部分ってあまりよく記憶していないのは、学生時代に勉強をさぼっていたからか、その部分の授業が薄かったからなのか、よくわからないが、ちょっとこの時代をもうちょっと知りたいという好奇心もむくむくと。

    著者の語り口は好き嫌いが分かれるだろう。私も途中鬱陶しいなぁ‥と思うものがあったのだが、あとがきを読んで、ああいいなこの感じ‥と思うようになった。

    参考文献もきちんとあげられていて、あとからいろいろ読みたい部分を読むのにも便利そう.

    自分の頭を使わないから、奴隷になるというこの思想にはすごく共感。

    野枝の結婚についての自分のようにこんな思想を持っていても、家に大杉といるとお茶とか出したりしちゃう‥なんて書いちゃうあたりがかっこいい。
    そうそう、正直な人ってかっこいいんだよねぇ。

  • 著者の中二病炸裂…笑

    「しびれる」だの「かっこいい!」だの「チキショー!(←野枝がボコられて悔しがっている)」だのが飛び交い、感情が最後まで暴走しただけの印象だった。
    こういうのが面白いという人にとってはいいのかもしれないけれど。読みやすいといえば、読みやすいし。
    何をもって品があるないを判断するかはある程度は個人に委ねられる部分もあるとは思うが、私にとっては品のない文章で、ダサいと思ってしまった(むしろ著者はそれを狙ってギャグでやってるのかもしれないけど)。

    パワーが強く激しいのは良いが、自分と異なる考えの者に対する批判ばかりだと、それってやっぱり自分が敵としている者と同じなんだよな、という印象。
    とくに最終目標であるはずの『多様性』を尊重したいのならば、「◯◯は間違ってる!我々のような××こそ正しい!」という主張の仕方はおかしくなる。

    例えば野枝や大杉の言う自由恋愛について。間違っているのは、制度や慣習そのものではなく、それを深く考えずに当たり前と思い、捕われてしまうことだ。敵対する本人自身がさんざん考えて、これが良いんだ!と思っているのなら、いいじゃん。そこに文句をつける権利なんて、野枝や大杉、当然この本の著者にだってない。

    一方で、いくら”正しい”ことでも、それで相手が傷つくのならば、”間違ってる”のと同じだ。互いに心の底から納得してそれを選んでいるのなら、当事者以外の人類全員が”間違ってる”と思うことでも"正しい"のだ。しかし、だからといってその”正しさ”を自分達以外に押し付ける理由には絶対にならない。


    2018.12.25/クリスマスの読書

  • 大杉栄の恋人だった伊藤野枝の評伝。とにかく野枝はわがままで、やりたいことをやりたいだけやっていくんだけど、それがすごくかっこいい。極端だから敵も多かっただろうし、若くして殺されてしまうけれど、こんなに堂々と言いたいことを言った人間というのはなかなかいないと思う。お金がなくったってなんとかなるという楽観的な考えが、権力や金に媚びない強さの源流なんだということを改めて認識した。

  • 「資本家にたよったり、カネをかせいだりしなけければ、生きていけないという感覚をふっとばす。自分のことは自分でやる、やれる。それを行動にしめすことがだいじなのである。」
    人生は暇つぶし、という人もいるが、暇つぶしは暇つぶしでも、全力で、濃い暇つぶしをしたい、と思う。

全63件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1979年生まれ。著書に『大杉栄伝 永遠のアナキズム』『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝』『働かないでたらふく食べたい』など。

「2019年 『死してなお踊れ 一遍上人伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

栗原康の作品

村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝伝を本棚に登録しているひと

ツイートする