メルロ=ポンティの思想

著者 : 木田元
  • 岩波書店 (1984年11月29日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000022460

作品紹介

実存主義で有名なフランスの哲学者メルロ=ポンティの思想を解き明かす。

メルロ=ポンティの思想の感想・レビュー・書評

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  • 雑誌『現代思想』に連載されていた記事をまとめたもので、メルロ=ポンティの思想を紹介している。著者は19世紀から20世紀にかけての思想史についても造詣が深く、メルロ=ポンティの思想を、同時代の科学や社会思想との関わりの中に置いて考察している。メルロ=ポンティを読むとき、往々にしてその美しい表現に絡めとられてしまいがちなので、本書のような視点からの解説は新鮮だった。

    著者はまず、『行動の構造』と『知覚の現象学』の思想をていねいに解説している。メルロ=ポンティは、知覚を「行為」という観点から考察するベルクソンの思想に一方では賛意を表しつつも、そこでの「行為」が単なる物理的運動か、あるいはせいぜいのところ生命活動という狭い意味でしか理解されていないことを批判する。メルロ=ポンティは、知覚する有機体と環境との関係に、物理的秩序・生命的秩序・人間的秩序という段階を設定し、上位のレヴェルの秩序は、先行する下位のレヴェルの秩序を捉えなおし新たに構造化することで成立すると考える。人間の知覚も、こうした知覚する有機体と環境との間の弁証法的関係の中で理解されなければならない。こうしたメルロ=ポンティの発想を、著者は彼が参照した生物学や心理学の成果に言及しながら解説している。

    ところで、メルロ=ポンティは知覚の主体と環境との関わりを、世界内存在としての身体の視点から考察していた。彼は、身体が構造化の能力を「持つ」のではなく、身体がみずからを取り巻く環境を構造化するという仕方で世界の内に「生きている」という、実存的な観点に立脚していたのである。この「生きられる」次元に、言葉と本質的真理の姿をとる「語られたコギト」の手前にある、「沈黙のコギト」が位置している。

    ところが晩年のメルロ=ポンティは、沈黙の世界という事実的な、あるいは与えられた世界に立脚する立場にひそんでいた観念論的な発想を清算しようと試みる。もはや、沈黙の世界という生きられた体験の絶対的な流れを、言語の対立物として措定することは許されない。言語以前の「自然」は言語によって表現されることに向かう。ロゴスとロゴス以前の自然は同じ〈質〉によって仕立てられているのだ。メルロ=ポンティはこの〈質〉を「肉」(chair)と呼ぶ。見える自然から見えないロゴスへの「現成」(Wesen)を考察する「自然の存在論」ともいうべき思索へと、晩年のメルロ=ポンティは進んでいった。ここに、「転回」以後のハイデガーの思索との共振を見ることができる。

  • メルロ=ポンティ入門書(解説書かな?)としてどうぞ。といっても、詳しく知りたい人向けですね。『行動の構造』『知覚の現象学』といった前期の著作に関してはかなり詳しく書いてあります。後期思想に関して、および木田氏自身が認めているように芸術論に関して、もう少し言及があれば・・・とは思いますが、まっすぐで丁寧な本だと思います。

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