名作の中の地球環境史

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000022699

作品紹介・あらすじ

時代の危機をいち早く察知して作品に取りこみ、それが社会に対する警告や警鐘になったことが少なからずある。『出エジプト記』『コロンブス航海誌』『エマ』『レ・ミゼラブル』『白鯨』『グリム童話集』『不思議の国のアリス』『闇の奥』『駱駝祥子』『怒りの葡萄』『グスコーブドリの伝記』等、二四篇の古典・名作の中から、森林破壊、大気汚染、地球温暖化、干ばつなど環境をめぐる問題を取り出し、それが地球の環境史の中でどういう意味をもつのかを読み解く。環境史の第一人者による斬新な試み。

感想・レビュー・書評

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  •  いま世界中から問題視されている地球環境問題。
     その問題について、様々な古典・名作を取り上げ、どうすれば防げるのかということが書いてあります。
     一つの章で一つのテーマと名作が取り上げられているので、読みやすいと思います。
    (教育学部・国語専修/匿名希望)

  • ジェーンオースティンのエマに出てくる遅く咲いたリンゴの花は、ナポレオンがワーテルローで負けたあとの飢饉と同じ話、という考えもしなかった観点。
    文学と科学を結んでるところがたまらない。

  • 環境問題が描かれている文学作品を紹介して、その背景や関連する情報を解説している。現在の環境問題も歴史的には繰り返されているものが多いことがわかるし、その根本的な解決策を考えるのに役立つだろう。

    「駱駝祥子」老舎
    BC9〜8世紀、黄土高原の半分は森林に覆われていた。10世紀、山西省では大森林が残されていた。1世紀頃から乱伐の土壌浸食によって黄土高原は拡大した。秦に滅ぼされた楚では、始皇帝によって広大な森林が丸裸にされた(森と緑の中国史)。華北は漢の時期までは大森林だったが、武帝の時代に起こった製鉄によって大量の森林が失われた(時代の風音)。

    「旱魃」ラケル・デ・ケイロス
    「闇の奥」コンラッド

    「ブラン」イプセン
    18世紀末に開発されたルブラン法によるソーダ生産は木灰を原料にしたため、北米、ロシア、スカンジナビアの森林破壊をもたらした。1861年に食塩を用いるソルベー法が開発されて生産が拡大したが、副産物として発生する塩酸によって工場付近に酸性雨を降らせた。

    「白鯨」ハーマン・メルヴィル
    捕鯨は11世紀にバスク人が始めた。15世紀にポルトガルやイギリスの沖合、16世紀半ばに北米大西洋岸に進出。16世紀末にオランダやイギリスがスピッツベルゲン諸島周辺でホッキョククジラを捕獲し、事実上絶滅した。17世紀半ばに北米東岸の沿岸捕鯨が始まり、18〜19世紀には大型の帆走船を母船にした米国式捕鯨が盛んになった。
    19世紀半ばにペンシルベニア州で油田が発見され、1848年以降のカリフォルニア州のゴールドラッシュで乗組員が移動したため、捕鯨は衰退した。1864年にロープ付きの銛を用いるノルウェー式が開発されて、ナガスクジラ科が対象となり、20世紀初頭に鯨油の硬化技術によって石鹸やマーガリンの原料として需要が拡大した。

    「レ・ミゼラブル」ヴィクトル・ユゴー
    江戸時代のナタネ栽培の中心は大阪。ナタネ油の絞り粕は木綿の栽培に最適で、河内木綿として全国に売られた。

    「大学或問」熊沢蕃山
    熊沢蕃山の思想は、荻生徂徠、頼山陽、横井小楠、佐久間象山らに影響を与え、幕末には吉田松陰、勝海舟、西郷隆盛、橋本佐内らの背景にもなった。室田武は蕃山をエコロジーの父と位置付けた。
    3回の森林消失期:
    6世紀末〜9世紀半ば:水田稲作に伴う農地転換、寺院などの建造
    16世紀末〜17世紀半ば:城建築ブーム
    17世紀後半:燃材や堆肥などが利用されつくしたため、集落が共同で管理する入会地が始まった
    第二次大戦〜戦後復興期
    アカマツは縄文時代には瀬戸内海沿岸に限られていた。鉄や塩の生産のため、森林伐採が進んでいたため。鎌倉時代以降に全国に拡大し、江戸中期には人里周辺のほとんどが、明治以降は全国的にアカマツだらけになった。

    「アク・アク」トール・ヘイエルダール
    サツマイモはポリネシア人が南米から持ち帰り、ニワトリは南米に持ち込まれた。石器や釣り針も交換されていたという説が有力。太平洋には住居跡の残る無人島が十数島ある。ピトケアン島は、イギリス人船員が逃げ込む前に段々畑が作られていた。

    「ロビン・フッドのゆかいな冒険」ハワード・パイル
    イギリスはBC1700〜500年の青銅器時代に森林の開発が進み、BC800年代末の鉄器と馬を伴ったケルト族の到来によって開墾が加速した。1〜4世紀のローマ支配の間に人口は2倍になり、国土の77%を覆っていた森林は15%に減った。牧畜や狩猟が盛んになるとともに、13世紀にオオカミの根絶が命令され、15世紀にはイングランドから根絶された。オオカミがいなくなるとアカシカが増えて森林が再生しなくなり、牧場が広がることで森林が失われた。1066年にイギリスを征服したノルマン人のウィリアム王は、広大な森林を御猟林に指定し、ジョン王が対フランス戦争に負けたのを機に貴族が反発してマグナ・カルタを認めさせた。マグナ・カルタの条項のいくつかは森林と関係が深く、forest charter(森林勅許状)も王に署名させた。16世紀にフランスやオランダとの緊張状態から武器が輸入できなくなったため、ナラの森が生い茂っていた南部のサセックス地方に製鉄業が興され、森林が消えていった。
    造船に必要な木材のために、ニューイングランド、カナダに頼り、ベリーズはマホガニーを求める業者によって建設され、ビルマも植民地にされた。北海道のミズナラも家具や樽材として輸出された。

    「クリティアス」プラトン
    人類が進出する前のギリシャは、84%が森林だった。BC6世紀、戦争が続いたために造船用木材の伐採が急増し、森林は壊滅した。

    「街道をゆく7 甲賀と伊賀のみち、砂鉄のみち」司馬遼太郎
    フランスでは、13世紀だけで開墾によって森林の3分の1を失った。
    律令時代、鉄製の鋤・鍬は国衙や郡衙だけが所有した。中世の貴族は鉄の所有権を通して遠隔地にある荘園を管理した(この国のかたち5)。11世紀頃から鉄の生産量が増えて価格が下がり、個人が鉄製農具を持つことができるようになると、農民は新たに開墾した田畑に対して所有権を主張できるようになり、鉄器で武装した武士も誕生した。

    「ギルガメシュ叙事詩」
    メソポタミアでは、レバノンスギは灌漑用の運河や用水路の護岸のため、神殿などの梁材、船材、燃材としても使われた。
    569年にランゴバルト族がイタリアに侵入したとき、河口の低湿地帯に逃げて住み着いたのがベネツィアの始まり。海底に打ち込むための木杭に樹脂が多く腐食しにくいレバノンスギが使われた。

  • 古今東西の有名な文学や芸術に、いかに天変地異が深く関わっているか、実例に沿って教えてくれる好著。作者は実に幅広い学識をお持ちの方のようだ。地震も怖いが実は火山の大噴火がより深刻な影響を及ぼしている。

    例えばムンクの「叫び」。異様なまでの背景の赤い空はムンクの心象風景とばかり思っていたが、実は描かれた時期アイルランドの火山の噴火で実際に空が異様に赤かったそうだ。ターナーの風景画も同様。我々が気がつかない実例を丹念に紹介してくれている。

    しかし人類の歴史の中でこの200年ばかりだけが、世界的な環境変動に綱が根ほどの天変地異がなかった期間だそうだ。
    どうやらそろそろ順番が回ってきたようなので覚悟しよう。

  • 2011/06/05:環境と文学などの作品との関わりについてとても考えさせられました。 また取り上げられている作品(文学だけでなく絵画、音楽なども含めて)が気になりました。

  • ギルガメッシュから司馬遼太郎まで環境問題を捉えることのできる作品を紹介しているという感じの本のようです。

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著者プロフィール

1940年東京都生まれ。東京大学卒業後、朝日新聞入社。ニューヨーク特派員、編集委員などを経て退社。国連環境計画上級顧問。96年より東京大学大学院教授、ザンビア特命全権大使、北海道大学大学院教授、東京農業大学教授を歴任。この間、国際協力事業団参与、東中欧環境センター理事などを兼務。国連ボーマ賞、国連グローバル500賞、毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。主な著書に『感染症の世界史』『鉄条網の世界史』(角川ソフィア文庫)、『環境再興史』(角川新書)、『地球環境報告』(岩波新書)など多数。

「2022年 『噴火と寒冷化の災害史 「火山の冬」がやってくる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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