ユング心理学と仏教

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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000023436

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  • 「ユング心理学と仏教」河合隼雄著、岩波書店、1995.10.20
    259p ¥1,803 C0011 (2020.07.15読了)(2018.11.26購入)(1997.02.05/5刷)
    Eテレの「100分de名著」という番組で2018年7月に「河合隼雄スペシャル」が放映されました。
    その中で紹介された著作は、「ユング心理学入門」1967年、「昔話と日本人の心」1982年、「神話と日本人の心」2003年、「ユング心理学と仏教」1995年、の4つです。
    少しずつ読んで、この本が最後になりましたが、4冊読み終わりました。2年かかりました。

    【目次】
    まえがき  D・H・ローゼン
    プロローグ
    Ⅰ ユングか仏教か
    Ⅱ 牧牛図と錬金術
    Ⅲ 「私」とは何か
    Ⅳ 心理療法における個人的・非個人的関係
    エピローグ
    フェイ・レクチャー紀行―日本の読者のために
    あとがき  1995年10月

    ☆関連図書(既読)
    「ユング心理学入門」河合隼雄著、培風館、1967.10.30
    「子どもの宇宙」河合隼雄著、岩波新書、1987.09.21
    「昔話の深層」河合隼雄著、講談社+α文庫、1994.02.18
    「中年クライシス」河合隼雄著、朝日文芸文庫、1996.07.01
    「日本文化の新しい顔」河合隼雄・日高敏隆著、岩波ブックレット、1998.01.20
    「こころの処方箋」河合隼雄著、新潮文庫、1998.06.01
    「中空構造日本の深層」河合隼雄著、中公文庫、1999.01.18
    「未来への記憶(上)」河合隼雄著、岩波新書、2001.01.19
    「未来への記憶(下)」河合隼雄著、岩波新書、2001.01.19
    「昔話と日本人の心」河合隼雄著、岩波現代文庫、2002.01.16
    「神話と日本人の心」河合隼雄著、岩波書店、2003.07.18
    「泣き虫ハァちゃん」河合隼雄著・岡田知子絵、新潮社、2007.11.30
    「生きるとは、自分の物語をつくること」河合隼雄・小川洋子著、新潮社、2008.08.30
    「河合隼雄スペシャル」河合俊雄著、NHK出版、2018.07.01
    (「BOOK」データベースより)rakuten
    世界トップクラスのユング心理学者を招いて行われるフェイ・レクチャーに日本人として初めて招聘された著者の、好評を博した講演。ユング派の分析を深めるにあたって、日本人である著者がいかに仏教の力を意識するようになったか、自らの個人的経験をまじえて語る。著者が心理療法と仏教との関わりについて初めて本格的に論じた書。
    (「MARC」データベースより)amazon
    好評を博した米国での連続講演をまとめた。自らの人間理解が西洋近代的思考法と仏教的な思惟、世界観の間でなされてきたとの認識を深めた著者が、自分の経験をさらけ出しつつ、臨床心理をめぐる様々な考察を語る。

  • これは名著です。
    再読して理解がすすんでから、感想を書きます。

  • ★矛盾の包含

    ・根底に流れているのは、矛盾を同時に持つ、ということ。心理療法は言語化と同時に非言語化を大切にするということ。言語化は日本においては切断ととられやすい

    ・人生とは自我を自己に統合していく個性化の旅路

    ・しかし、本当に統合できるのか?統合できず調和があるだけではないか?(免疫のスーパーシステム)

    ・縁起を見る者は空を見る。縁起はユングの共時性、に似ている

    ・症状は個性化過程の表現。治すことは大切だが、一方で治さない大切さもある。大日如来のように沈黙して、待ち、相手を見ながら進んでいくこと

    ・沈黙を中心として、沈黙の周りに言葉が顕れる

  • ユング心理学と仏教、を読了した。まずこの本が20年以上前に書かれている事に驚きを感じた。河合先生がおっしゃっている科学が取り組むべき新しいパラダイム(そして、これには仏教思想が参考になると言っている。)が、ここ最近でますます現れ出ているように思う。
    それは人間というか、生命のシステムについての考えだ。中心がなく、それぞれの因子が矛盾を抱えつつ、統合されていないようにみえて、しかしまとまりを持ったシステム。免疫の多田先生が言うスーパーシステム。心もスーパーシステムだろう。それは仏教の真如と近いのではないか。と。
    多因子が相互作用し、そこに全体としての秩序が生まれる。心もそうだろう。命、そして生態系、ひょっとして宇宙全体もそのようなものではないかと思う。仏教で言う縁起などの考えは、その事を言い表しているのかもしれない。
    多因子が相互作用した結果、と言うのは複雑系で、今までは解析困難でカオスとも呼ばれた。しかし、テクノロジーは強力な計算能力を持つコンピュータを生み出し、そこに挑戦しつつある。ネットワーク理論も発展してきている。まさにそこが新しい科学のパラダイムと思う。
    心は矛盾を抱えつつ、それでも一つの自分として存在している。自我と自己の間を揺れつつ、分離された世界と全てを含む世界の間を揺れつつ、矛盾が同居しているのが今の自分だ。しかし、何かを目指す必要もない。その矛盾も含めて全てなのだ。
    あるがままとはそう言う事なのかなと理解した。
    しかし今書き連ねた事が正しいかもわからない。とにかく揺れ動きつつ、進歩していく事が大切に思う。

  • 河合隼雄先生の本は安定の興味深さ。

    ユング心理学と仏教、特に華厳経の共通点あるいは相違点について、先生が講演された内容を書籍にされたものでした。

    どんどん細分化し、「個」にすることを目的とする科学に対し、仏教はその逆である。「融合」が重要視される。ユング派の特徴である「集合的無意識」について、華厳経で説かれる意識のありようを用いながら書かれていました。ただ、集合的無意識も華厳経も難しすぎて、理解できたのは70%くらいだと思う…。

    この本で最も興味深かった点は、人間の体はひとつの「中枢」によって統合されているのではなく、免疫系と神経系がそれぞれ独立に、それぞれ調和して存在している。心も同様なのではないか、という部分でした。これは最近注目されているレジリエンスにも応用できるところがあるのではないかと思います。

    そして、クライエントの話を黙って聞くというのは、公案を与えられて座禅しているのと似ているというお話も面白かったです。

    私は河合先生の、「治療者は患者の心を治すことはできない。患者の心がバランスを取り戻すのは、患者の力」という考え方がとても大好きです。
    日本人のこころにはどうやったって「宗教」の影が染み込んでいて、それを心理学に取り入れるというのは何の不思議もないと思います。確固たる信念がある外国人の患者さんに対して宗教的なケアをすることはもちろん大切だけれど、日本人の患者さんに対して仏教的な色がある心理療法というのはとてもいいのではないかと思います。もちろん、信仰を強要するものではなく。

    河合先生の本は、心理療法のメソッドを学ぶだけではなく、私自身がどう生きるのか、ということについて様々なヒントを与えてくれるような気がします。

  • 心理療法ではない形での心理療法、あるいは専門家ではない人がどうやって他者と向き合うかについて、一滴のアドバイスを与えてくれる本。

  • 感想というか、感じたことの羅列になってしまう。というのは、本書は4回程の講義を文章化したものであり、しかもその講義は日本人のユング心理学者がアメリカで仏教とユング心理学について、ユング心理学の専門家に対して、本人が日本語で書いた原稿を英語の専門家に英語に翻訳してもらったものを英語で講義するというまわりくどさをもっているためである。内容は編集の段階で相当の省略・簡略化が行われているだろうから当然体系的でもないし、まして一般的というわけでもない。しかし、本書のあとがきにもあるように、本書の内容が講義され、そして出版されたのが1995年の阪神淡路大震災と近接して前後しており、今(2011年5月)のタイミングで偶然手に取り読んだことに、個人的にはとても感慨深いものがあった。

    それにしても華厳経は、単なる仏教思想を超えているように思われてならない。さっぱり理解できないが、なぜか宇宙的だと感じてしまう。大日如来は中心にいて、そして、一言も発しないというはなしが、もっとも印象に残っている。

    日本人がとるユング心理学に対するアプローチと欧米人がとる仏教(特に禅)に対するアプローチをビジネスに取りいれたら、ほとんどU理論じゃないかと思った。U理論の著者が日本に興味があることも頷ける。

    考えてみれば、仏教はそもそも極東の日本からみれば西洋との中間点に起源をもつのだから、とりたてて東洋的ということを強調することもないのではと思わないでもない。

    西洋と東洋の中間といえば、本書において井筒俊彦の仏教に関する著書からの引用がいくつかあったが、言うまでもなく氏はイスラムに関する研究も有名だ。

    リーマンショック以降、従来の資本主義の限界が顕になってきていると同時にイスラム文化圏の動きの活発化が連動しているように思われてならない。仏教とイスラム教に対するアプローチが重要になってくるのかもしれない。

    そういった意味で、今後、井筒俊彦氏が脚光を浴び、再評価されるのではないか?と思った。

  • 06058

  • 「『新しい科学』は理論的整合をもった知識体系をもとうとする努力をしないのではなかろうか」これが単なる文明発展からくる反動でないことを祈るばかりである。発展の上にこの言葉が成り立ってほしいものだ。
    でも考えてみれば、たとえば星空を見上げてその全てを科学的に解明しその全体を見渡せば、結局のところ太古の人間と同じように、神を見出すのではなかろうかと思うのだ。そもそも世界を統計だてるということが傲慢である。何よりこの世界の構成要素の一つであるわれわれ人間が如何に不確かな存在であるかということを考えれば、それは明白なことなのだ。
    それを追及している岡野先生はもっと評価されてもいいと思うのだが、やはり確実な立場とコミットがないせいで難しいと言える。専門家に相手にされないのはそのせいもある。(ほかにも考えられるが)だから、心理学で確固たる地位を築いた河合先生のような方が同じようなことを言ってる人をもっと持ち上げてくれると助かるのだが、問題は岡野先生がロジャーズ派(なんでユング派じゃないのか!?)で河合先生とは対立する派であるというめんどくさい。いや、でもユング派は全体性だからそれも問題ないでしょ!とにかく力合わせろ!

  • ユングは、きっと自分では分かれない。。誰かに習いたい。あと、河合はやおももしかしたら相性がよくないのかもしれない。。

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