ヨーロッパ帝国主義の謎―エコロジーから見た10~20世紀

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  • Amazon.co.jp ・本 (431ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000023894

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  • ヨーロッパ人が南北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの「ネオ・ヨーロッパ」に進出することに成功した要因について、病原菌、雑草、家畜といった生態学的な視点から解明している。ヨーロッパ人が持ち込んだ病原菌がアメリカ先住民の多くを滅ぼしてしまったことはよく知られている。それだけでなく、雑草や家畜が生態系を変え、ヨーロッパ人の定着に貢献したという指摘は、ヨーロッパ人にとって牧畜がそれほど重要であるとの観点とともに興味深い。こうした視点の正しさについて、中世のノルマン人によるグリーンランドへの移住や、中東への十字軍によるラテン帝国の失敗例などを対比して裏付けているのも説得力がある。

    旧世界では重要な作物が同じ気候帯を東西に広がったのに対して、新世界では異なる気候帯を南北に伝播しなければならなかったことや、旧世界(特に西アジア)と新世界およびサハラ以南のアフリカとの最も大きな違いは家畜(特に馬)を持っていたかどうかであるという指摘が、この本ですでに書かれている。これらは、後の「銃・病原菌・鉄」で評価されていた内容である。英語圏の研究者が知識の積み重ねにおいて有利だということも感じさせる。

    ・シベリアのロシア人は、1724年には40万人だったが、1858年には230万人になった。1880〜1913年の間には500万人以上が移住し、1911年にはシベリアの人口の85%がロシア人になった。
    ・船尾の舵と羅針盤などは東方諸国で発明されたが、それを十字軍がヨーロッパに伝えた。
    ・ポリネシア人にとってニュージーランドは、これまでの移住先とは異なる温帯性気候で、豚を失っていた。クックの報告を受けて、18世紀末からアザラシやクジラを捕獲するためにヨーロッパ人が訪れるようになった。ヨーロッパ人は馬鈴薯と豚を持ち込んだ。馬鈴薯は生産力が高く、大量の食料余剰を生んだ。
    ・1750〜1930年にネオ・ヨーロッパの人口は14倍、コーカサス民族は5倍以上に増えたが、アジア人は2.3倍、アフリカ人は2倍以下だった。

  • 歴史の棚にあったが環境系の方が需要ありそう。
    少なくともヨーロッパ帝国主義を知りたいひとには勧めないかな……。
    てか原著のタイトル「Ecological imperialism : the biological expansion of Europe, 900-1900」なのに、どうしてこの邦題になった。

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