ヨーロッパ覇権以前〈下〉―もうひとつの世界システム

制作 : Janet L. Abu‐Lughod  佐藤 次高  高山 博  斯波 義信  三浦 徹 
  • 岩波書店 (2001年11月27日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000023948

ヨーロッパ覇権以前〈下〉―もうひとつの世界システムの感想・レビュー・書評

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  • 上巻は随分前に紹介しました。本書は今年度の東京経済大学の秋学期で使う予定なので,ようやく慌てて下巻を読んだ次第。

    第二部 中東心臓部(承前)
     第七章 マムルーク朝政権下のカイロの独占
    第三部 アジア
     インド洋システム――その三つの部分
     第八章 インド亜大陸――すべての地に通じる道
     第九章 海峡と瀬戸
     第一〇章 絹の中国
    結論
     第一一章 十三世紀世界システムの再構成

    上巻の紹介でみたように,本書は三部に分れていて,ヨーロッパ,中東,アジアという順番で13世紀後半から14世紀前半の歴史をたどります。原著の副題に「1250-1350」とあります。コロンブスの大西洋横断が1492年ですから,それを可能にする水準にヨーロッパの技術が到達する前の歴史が本書のタイトルでいう「ヨーロッパ覇権以前」ということになります。すなわち,結果的にヨーロッパの力がその後全世界を覆うようになりますが,本書の意義は,その直前の歴史においては,ヨーロッパの水準をさまざまな次元で上回るものが世界各地にあったということを強調している点です。
    本書の記載のなかには,アメリカ大陸の発見もコロンブス以前に達成されていたという記録がいくつか残されているという。上巻の最後から続いている中東の話はやはりまだまだ私には難しい。その後始まるインドから東南アジア,中国の話は少しは理解しやすかったがそれでも圧倒的な知識不足を痛感した。
    本書にはインド洋におけるモンスーンが,当時の海運を使った貿易の季節性に大きく影響したと説得的に論じている。このような議論はともすると,自然環境が人間行動を著しく規定するという環境決定論的なものになりがちで,読む方もどこまでを納得していいのか,なかなか難しい問題だ。中国の話でもシルクロードの重要性を説いている割にはそのもの自体の説明が不足していたり,やはりこの程度の分量の書籍でどこまで詳しく説明するかもなかなか難しい。講義で使うにはこちらの方で不足する知識を補わなくてはならないだろう。そういう意味でも,さらなる勉強を強いる魅力的な本であった。

  • 足利義満が築いた日明貿易のハデな史実と、朝貢を巡る日本国内(主に京都の町の中だが)の合意形成における政治主体たちの熱意とプライドを賭けたあまりの熾烈な駆け引き故に、当時の明王朝も日本側の熱意に釣り合うほどの実質的な軍事力と、「国際社会」を代表するに足る象徴的権威とを持つ大帝国だったのだろう、というイメージが私にはあった。だが、本書の第10章、「絹の中国」は、そんな私の日本的なわたしの明朝史観に再検討を迫るものだった。明代、すでに外部へのルートは封鎖されていて、鄭和の航海は、遅すぎた「最後の努力」(P.164)だったと言うのだ。今のところ、手元には反論の材料はないので、感想は「興味深い」としておく。

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