読む力は生きる力

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000023986

作品紹介・あらすじ

子どもが本を読むことの大切さは誰もが口にするが、つきつめて考えると、それはなぜなのか、心底から納得できる答えを得るのは案外むずかしい。長年、大学生を教え、「子どもの本の会」を主宰してきた著者が、このテーマに真正面から取り組み、たどりついた成果を、講演のようなやわらかい語り口で説く。

感想・レビュー・書評

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  • 子どもが本を読むことの大切さは誰もが口にするが、つきつめて考えるとそれは何故なのか。
    心底から納得できる答えを得ることは案外難しい。
    長年大学生を教え「子どもの本の会」を主宰してきた著者が、実績と研究をもとにこのテーマに取り組んだのが本書。
    優しい語り口だが、内容は実に深遠で胸の深いところに届く。

    「本が嫌いなのはあたりまえ」「読まないのが普通」「読もうとしても頭に入ってこない」「自分で読むのはめんどう」・・これが現代の大学生の多くの声であるらしい。
    それも、教職に就くことを目的としている学生たちだ。
    この学生たちが将来、日本の次世代を担う子供たちを教えるのである。
    著者がどれほど子どもたちの未来を憂えたか、皆さんでもお分かりかと。
    多様な絵本があふれる環境で、なぜこのような事態になったのか。
    どこに問題があったのか、今後どのようにとらえていけば良いのか。

    「想像力」とは、突飛な空想をめぐらすことではない。
    頭の中にイメージを作り出す力のことで、その場にないものを思い浮かべる力のこと。
    現実の世界で先を予想して計画を立てたり、様々な人とうまくコミュニケーションをとって社会生活をしていくために不可欠であるという。
    本が読めない人というのは、この「想像力」のトレーニングが出来ていないらしい。
    言葉による描写から人物や情景を思い浮かべることが出来るようになるには、映像メディアに頼ることなく、身近な大人の言葉かけから育てられていくもの。
    つまり、自然に身につく能力ではなく、高度な知的活動なのだ。

    絵本が大好きでも、その先の本には進めなかったという人もいる。
    文字は読めるが本は読めないという若者の、なんと多いことか。
    幼児期に字が読めるようになってから、内容を理解する「想像力」を思春期にかけて育ててこなかったからである。
    それらは、大人を手本にしながら子どもは学んでいくもの。
    くれぐれも、映像などではないと繰り返し言われる。

    十分な選書眼もまだない学童期に「子どもの意思で自由に選ばせよう」「何でもいいからたくさん読みなさい」などという誤った指導の弊害も語られる。
    内容を理解し物語の展開についていくには、物語の読み聞かせが良い効果をあげるらしい。
    当然だが、これも身近な大人の手にかかっている。
    子どもが、心から面白いと思える本に出会えるように大人は心してかからねばならい。

    総じて言えることは、大人が本を読まねばならないということ。
    読むことによって「読む力」が育つような本に出会うには、良い紹介者が必要。
    それには大人が、本当に良い本というものはいかに面白いかということを、身をもって実感していなければならない。

    読むという精神活動は、書き言葉レベルの言葉を使う力。
    そして「想像力」であり、全体を見渡して論理的に考える力のこと。
    「本など読まなくても立派に育った」時代はすでに終焉しているが、せめて映像メディアに置き換えたりせず、大人は言葉をかけ良書を読み聞かせ、子どもの傍らに寄り添っていたい。
    人として社会で生きる力を身につけていくために。
    「読む力」をつけるにはどんな本を選べば良いかは、本書にたくさんのリストがある。

    作家さん、挿絵画家さん、翻訳家さん、色々なひとのお話をじかに聞いてきたが、脇明子さんの講演が今も一番心に残る。
    ちょうど本書のような内容で、終わった後感動のあまり席を立てなかった。
    これなら知っている。こんな風に私もやってきた。などとは軽々しく言えない。
    挙げられた本はすべて既読だったが、子どもたちに失礼がないように何度でも読みかえそう。
    児童サービス論のテキストになるような良書。すべての大人にお勧めです。

    • りまのさん
      ふえ〜ん…(T_T) ありがとうございます……。
      ふえ〜ん…(T_T) ありがとうございます……。
      2021/02/11
    • 淳水堂さん
      nejidonさん
      こちら読みました。ご紹介いただきましてありがとうございますm(_ _)m
      自分のレビューを書いた後改めてnejido...
      nejidonさん
      こちら読みました。ご紹介いただきましてありがとうございますm(_ _)m
      自分のレビューを書いた後改めてnejidonさんのいレビューを読んで深く納得しました。
      >「自分で読むのはめんどう」
      →本を読まない人は、「ドラマは受け身で入ってくるけれど、本は自分で読まなければいけないから無理」といっていました。本好きからしたら「それがいいんじゃない!」という感じですが 笑
      >「読まないのが普通」
      →「本ばかり読んでたら根暗・オタクになる。外で遊びなさい」「本読むよりも実際に人と会いなさい。本読む人は頭でっかちでカッコつけで人を見下す人」みたいな考えは昔からありましたよね。
      昔の人だと、お硬い政治家や猛将とかでもさらっと詩作(日本なら短歌や俳句)をしたり、会話や演説で文学を引用したり、本を読む・語るというのが今よりも身近だったなと感じます。
      >「想像力」とは、
      >頭の中にイメージを作り出す力のことで、その場にないものを思い浮かべる力のこと。
      →現在のネット社会で何気ない一言が炎上したりする時代、人の気持ちがわかるというのはより大切ですよね。最近は絵本もタブレットやYouTubeで与える親も増えていますが、紙を触り向かい合って読むということの大切さを私も人に伝えていきたいと思っています。

      >絵本が大好きでも、その先の本には進めなかったという人もいる。
      →私は絵本をほとんど読まずわりといきなり小説(子供向けの簡易版世界名作全集系とか、子供向けの簡易版日本の歴史を小説にしたようなもの)を読んできたので、むしろ今になり絵本を読んでいます。絵本の面白さを分かると同時に、あまりにも文字が多い絵本はけっこう読みづらいんです(☓。☓)。小説なら二段組の文字量でも全く圧倒されないのですが、なんか文字数の多い絵本は絵と文章の情報が両方に来て圧倒されてしまう感じです。

      長々とすみません。
      今後も紹介していただいた本を読んでいきますのでまたよろしくおねがいします。
      この仕事についたので、「仕事のため本を読む」「自分の楽しみのため本を読む」「他の人に本を読む」「そしてその本を探すために本を読む」と、公私ともに本が読めて嬉しいですが、積ん読が貯まる一方です(^o^)
      2021/03/28
    • nejidonさん
      淳水堂さん♪
      丁寧なコメントをいただき、ありがとうございます!
      もったいないので、このままレビューに活かしたらと思ったのですが、すでに挙...
      淳水堂さん♪
      丁寧なコメントをいただき、ありがとうございます!
      もったいないので、このままレビューに活かしたらと思ったのですが、すでに挙げられた後でした(笑)
      読み手との信頼関係って大事ですよね。
      お話会は、いつも同じ人がやった方が良いといわれる所以です。
      先ずは「安心感」。お話の世界でも、やはり「安心感」。
      どこか行ったら、必ず元の場所に帰ってくるお話。その安心感から想像力が育ちます。
      淳水堂さんはお仕事もしながらの読書なので大変かと思いますが、仕事のため=楽しみのため=他の人のため、と繋がると理想です。
      その本を探すために読む本のなかに、繋がる答えがあるかと思われます。
      例えば脇明子さんの「物語が生きる力を育てる」の中には、より具体的に書名がたくさん出てきます。
      ちょうどこのコメント欄の一番上にある夜型さんにお薦めいただいた本です。
      (私の自慢の水先案内人です)
      更なる光の方へ、確実に歩まれますように。
      いつも影ながら応援しています!!
      2021/03/28
  • 幼児に絵本を読み聞かせることの必要さなどは他の本でも読んできたので、次には小中学生の読書に関して知りたくて探していました。紹介していただきましてありがとうございますm(_ _)m


    本書で書かれているのは、子供が本を読むことは大切だと言われている。では子供に本などのような良い影響を及ぼすのか?では実際にはどのように指導されているのか、などの話。

    ❐そもそも物語を読むということがなぜ必要なのか?
    文化、というのは、衣食住のようにないと死ぬものではないけれど生きてゆくのには大切な自尊心を持てるもの。ここでは自尊心を「自分には生きてゆくだけの価値がある」「この世界の中でいくらかの場所を占領し、食べ物を食べ、水を飲み、空気を吸って生きていても構わない」と自分に対して思えることであり、それができなくなったら生きる気力が無くなってしまう、としている。その自尊心の基盤は、幼い頃の親や他の大人たちから受ける無条件の愛情だ。しかし幼稚園などの集団に入り、自分の全世界は世界の一つだと知ると、親だけから受けただけの自尊心は崩れてしまう。そこで自尊心確立のために文化の基盤が必要となる。食べ物に工夫をこらしたり、自然を楽しんだり、そうして自分自身であるという自尊心が作られてゆく。
    そこで、人間社会は文化の継承が必要であり、読書の楽しみを伝えることもその一つ。

    ❐社会を伝える方法の変化
    本が無かったころや、読むことができない国にあっては、大人と子供の距離が近く、大人が働くことを示し、子供にも子供の役割があり、自分が今後どうやって生きてゆくのかを見ることができた。そしてお話というものは、大人から子供に語って聞かせるという形をとっていた。こうして人々が代々得てきた知識や知恵をまるごと子供に引き渡していった。
    しかし現在は、大人と子供に距離ができ、子供が自分で大人とはなにか、社会とは何かを知ることが少なくなっている。

    ❐年齢に応じて子供に本を読むこと。
    ・赤ちゃんの脳の発達には、まず動き、触り、人や物とのコミュニケーションを撮ってゆくことが必要。絵本はその中の一つとなる。
    そして徐々に、絵本の絵や名前から実物を思い浮かべられるようになる、出来事をひとつのつながりとして追うことができるようになる。(←私は「読み聞かせ」「本を読んで聞かせる」はやってましたが、素話をしたことがないのですが、素話にすると頭の想像が膨らむのだろう)
    ・お話の流れに沿って想像力を働かせてお話の世界に入り込むようになった子供たちは、大人の声を聞いたり目でページを見ることを忘れて、心のスクリーンに写した情景を見聞きするようになる。すると大人は、あくまでもお話を主体として、お話の流れを崩さずに伝える必要がある。大人が身振り手振り説明を加えたり、華美で可愛らしい絵に頼るのではなく、読む大人が心を動かしお話の流れを伝えてゆけば、子供はその大人の心の動きに自然について来られる。動画やテレビではだめだという理由はここで、一方的でありどんな対象者相手でも使えるテレビではなく、目の前にいる子供に対して目の前にいると大人が心を動かして伝えることが大切になる。そこで絵本を選ぶときに、絵の美しさやかわいらしさだけでなく、実際に物語を読んでみて、読むことにより絵に命が吹き込まれるか?を考えると良い。(←しかし絵で目を引かないと子供が自分で本を手に取らないということもあるし…。だからこそ最近は名作や古典小説も”萌え絵”で出版されるんですよね。中学生のうちの娘も「表紙がキレイじゃないと絶対手に取らないから!」と断言している(苦笑)。まずはその年齢までにお話の面白さをちゃんと紹介できないとですね)
    ・10歳前後の思春期頃に、自分が直面する問題の全体像を把握して様々な可能性を考えて解決策を練るとか、行動に入る前に段取りを考えて状況に応じて計画を変更するとか、自分とは違う立場から物事を見直してみるという「メタ認知能力」が発達する。この能力は、自己コントロールにの関わるので、感情爆発を抑えたりする。このメタ認知能力は、電子メディアとばかり接すると発達が遅くなるんだという。このメタ認知能力が発達するには、それまでに「感情の脳」が初田牛手、「考える脳」のための環境づくりが必要となる。
    そこで読書も、メタ認知能力を作るための基礎としての役割を果たしているのではないだろうか。物語で自分以外の感情を想像し、ここではない場所を想像する。


    ❐子供には昔話が必要だということについて。
    昔話には残酷描写もあるが、抽象的な残酷さであり、苦しみや悲しみを伴わない語り方のためリアルな想像を伴わないような作られている(←登場人物たちにはほぼ個性がないってこともあるのかな)。しかし昔話は、その抽象的な残酷さの奥に人生を生き抜くための教訓が感じられるようになっている。だから安易に残酷さを抜くと、その昔話の教訓まで消えてしまう。
    ちょっと問題なのは、現在は子供の頃から動画などで残虐場面が目につくようになると、昔話などの抽象的な残酷さもリアルに目に浮かべられるようになってしまう。(なお、私の場合はいわゆる抽象的な残酷な話も子供の頃からたくさん読んできたのですが、大人になったらリアルに思い浮かべるようになってしまいました…。「地獄変」読み返したら生きながら焼かれる場面が本当に熱く感じてしまってキツイような…)

    ❐想像力
    想像力とはファンタスティックなものを思い描くのではなく、その場にないもののイメージを思い浮かべること。それは情景や物だけでなく、人間の感覚、感情、考えも含まれる。
    そんな相手の身になり考えることは、人とコミュニケーションを取ること、人間社会で生きてゆくことに必要になる。

    ❐映像と文字
    ゲームでは主人公は自分自身のため、失敗するとそれが自分の失敗として怒ったり失望したりする。しかしお話では主人公に寄り添い一緒に喜んだり悲しんだりはするけれども自分自身とは別人格なので起きたことを客観的に捉えられる。
    お話は、作者や読んでくれる相手との信頼関係があれば、主人公が危機にあっても乗り越えられるだろうと思いながら読める。

    ❐注意する本
    ・絵ばかりが目を引き、内容とあっていないとか、内容が頭に入らないとか。この場合は本を読むのではなく、本を見るになる。
    ・シリーズ物は惰性で冊数だけ重ねる事があるので案外注意。(←子供に本を読むのに手っ取り早くシリーズ物勧めちゃてたかも…)
    ・とにかく奇想天外な人物が出てきて奇想天外な出来事が起きてなにがなんだか解決していたような、内容よりも刺激しか印象に残らないもの。
    ・子供にはあまりブラックジョークとかおすすめではない。まだ経験が少ない子供だと、裏切られた感じになる。

    ❐連続するお話
    同じ子供に定期的に(毎週月曜日1時間目とか)お話をする時間があるなら、連続するお話もよい。子供は次を待っていられる。



    ということで。
    子供で「本が読めない」ということにも理由は色々あって、
     お話は嫌だけれどその子が好きなジャンルの科学読み物は喜ぶという子供、
     お話を楽しむことはできるけれど、文字を読むことが苦手なので、本を手にとってもそれが面白いかわからず、自分で選ぶことができない。(←小学高学年だけどゾロリのような面白く文字が少なく自分が知っている本しか読めない)
     お話を聞いても全く想像ができないため「〇〇くんと〇〇さんが喧嘩して…」という話に、彼らはどうやって仲直りするんだろうとか、自分も喧嘩したなとかの想像が全くできないので、お話が面白くない、
     お話には興味がないけれどもノンフィクション系は面白い、
    などと違いがあります。

    まずは本を紹介する大人と子供との信頼関係がいちばん大事なのかなあと思いました。乳幼児への絵本読み聞かせも、大人(親や先生)が自分に向かい合ってくれるという安心感と信頼が根底ですよね。するとやはり紹介してくれる人を信頼していると本も楽しく、反対に面白くない本を紹介する人のことは信頼できない人って感じるのでしょう。

    私としては、毎週の読み聞かせの時間などで、連続するお話などを読んでみようかなと思いました。まあそれをする前に子どもたちとの信頼関係を築かないとですけどね。

  • 主張そのものはおおむね同意できるが、全体的に科学的根拠が弱く、「サンプル」が教え子だけの場合も多いなど不満が残る。本に比べて、映像、電子メディア(豪華な挿絵本も含む)に対する視線が厳しいのは著者の世代によるバイアスか。絵本から本格的な読書になぜ移行できないのか?という問題意識は興味深いし、多くの冊数を読めば良いわけではない、ダイジェスト版の文学性の喪失なども批判として正当だ。

    ・子どもを意識した本を作ったのは18世紀中ごろのイギリスのニューベリー。それまで本を読むという習慣は子どもにはなかった。日本でも明治から出版文化が発達し、読書は教養スキルとなった。
    ・社会のなかで「伝えること」「受け継ぐこと」「手渡すこと」に学ぶ意味もある。自分のことを考えているだけでは意味は見いだしにくい。
    ・アフリカではいまも昔も本を読んでいない。昔は物語の国だったから。本はヨーロッパのもので自分たちのものでなかったから。しかし、その語りも南アフリカでは崩壊しつつある。テレビのせいで。
    ・本が普及するようになってから、昔ながらの共同体の力は弱まったが、本は世界中の人を結び、過去と現在をむすびつけて、大きな共同体が育ってきたとも言える。
    ・映像が子どもの発達に与える影響については、まだまだわからないことだらけ。でも、けっして内容の善し悪しだけの問題ではなさそうだ。(#「メディアはメッセージ」だ?)
    ・読むことの独自性。映像メディアに対して。1.話し言葉ではなく、書き言葉レベルの言葉を使う力。2.想像力。3.全体を見渡して論理的に考える力。(#1.と2.は関連している。メタ認知の視点。3.は本のアフォーダンスに関して。論理的には考えることは、本というメディア、読書という行為から必然として導かれるものではないだろう。技術によって変わる部分が大きい。アメリカの教育者ハーリーの論文の引用も電子メディアが具体的に示されていないので、根拠として弱い。)
    ・「作者への信頼感がもてる」「距離を置いて外から眺めながらも登場人物と一体になれる」ことは、児童文学作品を見分ける時の大切なポイント。

  • 自分自身本に救われることが何度もあったので読書について理解を深めたいと思い手にとった。

    話は「読書は本当に必要なのか」という問いに答えていく形で進んでいく。

    読書は自分の知らない世界を知ることができ、生きていく上で大事な人間理解を深めることができる。

    私達が子どもたちにしてやれることは「すぐれた本を手渡すこと」。

    すぐれた本とは、読む力を育ててくれる本。

    ここの章の「なんでもいいからたくさん読む」ことの意味のなさ、「子どもの自由を尊重することがいいことではない」、という言葉は耳が痛くなった。

    子どもの自由を尊重することは大事だけれど、本の場合は絵がたくさんあったり、文字が多くあったり、内容がハードすぎたり、こちらが導かないと読む力が育つ本とは出会えないままになってしまうよ、というのはハッとした。

    この本が発行された15年前より今はさらに子どもたちとデジタル社会は切り離せないものになっているから、刺激の強いゲームや映像ばかりはよくないけれど、うまく付き合うにはどうしたらいいのかというところを今度は学んでいきたい。

  • 「本を読みなさい」と子供に言ってはみたものの、「どうして本を読んだ方がいいの?」と問われると答えに詰まってしまう、そんな大人にとっての救世主となる本。子供が成長する上で大切な感情や、認知能力を如何に本が育んでくれるのかという事を、作者が推奨する本を交えながら、とても分かりやすく丁寧な言葉で教えてくれる。

    そもそも現代の親は、子供に与える食事や栄養には、オーガニックや無添加とやたら気を遣っているのに、かたや本となると何故、キャラクター物や、絵が綺麗で分かりやすい絵本ばかりを選ぶと分かって居て、子供に自由に選ばせるのか。それは、食事で言うところの子供の大好きなスナック菓子ばかりを与えている状況と変わらないのではないか、という意見には大いに共感した。

    この本を読んで、本の持つとても大きな可能性を知る事が出来た。

  • 今の大学生の中には、絵本を読み聞かせてもらって育ったのに、「絵や写真のある本を見るのは好きだけど、文字だけの本は見る気がしない」という活字離れ傾向が感じられるそうです。
    その原因の一つに、絵本の挿絵のきらびやかさをあげていました。「絵本は小さな総合芸術だ」という思想のもと、大人が楽しめたり、作者の自己表現を目的とした絵本が増えているのでは?絵があまりに鮮明で詳しすぎて、子どもの想像力を奪っているのでは?
    なるほど、そうかもしれません。私自身、絵の美しい物に惹かれます。名作と言われる『どろんこハリー』に惹かれない‥メディア漬けの弊害かもしれません。
    今年から小学校の読み聞かせのボランティアを始めました。少しそのへんを意識しながら、読む本を選んでいきたいと思いました。

    我が子には小さい頃から絵本を読んでいます。今、小学3年生の長女にどんな本を与えていったら良いか思案していました。自分で好きな本を図書館で借りて読んでいますが、まあ、本人が楽しめれば良いのかな?ぐらいに思っていましたが、少し違うのかな?と思わせてくれる本でした。
    「なんでもいいからたくさん」の害‥
    小学校の図書館などで、冊数を競わせる傾向を危惧していました。子どもは冊数をかせぐために、ページ数が少なく絵が多く文字が大きい本を選ぶので、一刻も早く読み終えることだけに夢中になってページの上に目を走らせただけでは想像力は働かず、それまでに読んだことを突き合わせて理解するといった思考力も働かない。そのため、小学校高学年から中学校ころになって、年齢相応に文字の多い本を読もうとすると歯が立たなくなり、本離れにつながる。
    私自身、あまり児童文学を読んできていませんので、娘と一緒に読んでいこうかと思いました。

    最近、「名作アニメ」も成立たないという指摘もされていました。子ども達が次回まで一週間待てない、一回にひとつの事件が起こる読みきり方式ならよいが、これまでの出来事や以前出てきた人物などを覚えておく必要のあるものはついてきてもらえないそうです。「名作アニメ」にさえ子ども達の想像力がついていけないというのは、かなり深刻な事態です。
    私の子どもの頃は、「アルプスの少女ハイジ」「フランダースの犬」「ペリーヌ物語」「赤毛のアン」「小公女セーラ」などのアニメが一年くらいかけて放送され、毎週楽しみでした。そういえば最近、無いですね。

    子どもの読書について考えさせられる本でした。

  • 頷ける内容に富んでいた。単に読書礼賛ではなくて、自尊心を支える文化、そのひとつとしての読書の重要性を基盤として、子どもと本をめぐる諸問題を考察する。特に、文字が読めても本が読めないという問題についての指摘は重要。大学生たちの等身大の報告からの分析は興味深い。また、子どもにとっていい本とは何か、大人が真剣に考え、導くことが必要だという考えには同意。想像力や「書き言葉レベル」の言葉を使う力、メタ認知能力など、まさに生きていくのに必要不可欠な力を育てる読書を楽しむことを子どもへ教えていきたい。

  • 人前で10分ほど話すことになり、再読。
    図書館司書資格取得の際の課題図書でした。
    確かに絵本は簡単に勧めれるけれど、読み物の紹介は本当に難しい。
    でもそれは本文にあるように「遠慮しているつもりでも、手間を惜しんでいただけなのかも」。
    ちょうど先日、ブックトーク研究会で『いい本なのになかなか子どもに読まれない読みもの』というお題で本を持ち寄ったので、グッドタイミングな読了でした。

  •  ノートルダム清心女子大教授の脇明子さんが、子どもの読書について書いた本。

     今の学生さんたちのなかで、書かれた文章を理解してレポート等を書き上げるだけの能力があるにも関わらず、物語の本を一冊読み通すことのできない人がいるそうです。このことについて、児童期によい本と巡りあってこなかったこと、本の質ではなくただ冊数を読ませる学校での読書指導があったのではないかと指摘されています。

     またよい本は、自分で想像力を掻き立てる、物語を自分のなかで描きあげることにより、自分が主人公に同化すると同時に、俯瞰で物語全体を見渡すことができるものだそうです。
     話し言葉のレベルでなく書き言葉とレベルの文章、抽象的な物事を理解し表現する能力は、よい物語を読み自分で物語の世界を想像することによって、伸びてゆくのではないかともいわれています。

     自分の読書を振り返ってもいえることですが、脇さんがあげているような質のよい本に巡りあえていたらよかったなあと感じます。
     今からでも遅くない、例えば「あしながおじさん」「宝島」「くまのテディ・ロビンソン」など、古典的な名作を、ダイジェストでない完訳で読んでみたいです。

  • テレビ中心の生活をしてきた者にとって、ズキッと胸が痛くなる話もたくさん。メディアと関わりすぎた子育ての危険さなど、わかってはいたものの、ビデオやテレビに子守りさせていた自分をつくづく反省。でも、読んでみてよかった。娘になんでもいいから本を読めと言ってきたことが間違いかも知れないことなど、知れてよかった。娘の好きな本を尊重しつつ、これからは、私が感動できた、よい物語を薦める勇気も沸いてきた。絵本の読み聞かせでも、なるべく一人読みへの手助けになるような、物語性のあるものを選んでいきたい。
    本を読むことによる、メタ認知能力、疑似体験、想像力、そういうものを培うことは、確かな生きる力になるにちがいない。
    ついつい子供受けする本や絵本を選んでしまわないように、自分自信も勉強 していかなければ!

  • この本は大学教授である著者が、
    小学校教諭や幼稚園教諭、保育士を目指す学生に本嫌いだったり本の読み方が分からないと言っている人が多い事、彼女たちが将来関わる子どもたちはどうなってしまうのだろうと危惧する気持ちから書かれたものだ。
    自分自身、我が子に沢山本を読んでもらいたいと思っていながらその方向性が間違っていたことが色々あった。

    ▪️絵の綺麗すぎる絵本が増えてきて、
    「絵本を読む」から「絵本を見る」ものになっていないか
    ▪️「字が読める」だけの子どもに、「本の読み方」が分からないまま自分で読ませようとしていないか
    ▪️読む本は多ければ多いほど良いと思っていないか、子どもに思わせていないか
    ▪️小学生時代に良い本に出会えていたり、良い読書体験ができていれば、中学生になり部活などで忙しくなっても読書をする機会が失われないのではないか
    ▪️良い本を紹介したり、本の選び方を伝授しているか
    ▪️「なんでもいいからたくさん」読めましょうというのは、けして子どもの自由の尊重ではなく、大人が本を選び、子どもに紹介し、読めるようになるまで手を貸すという手間を惜しんでいる
    ▪️子どもにとってのいい本は、読む力を育ててくれる本
    ▪️読書の価値は、読まれる内容だけでなく読むという精神活動にある
    ▪️読むという精神活動は、①書き言葉レベルの言葉を使う力、②想像力、③全体を見渡して論理的に考える力を育てる
    ▪️メタ認知能力(自分の頭の中で進行していることを一段上から観察し制御する力)を育てる上で読書が大きな助けになっている

    本を読むのは割と好きだと思っている自分自身の本の読み方も、もう一度見直したい。

    できれば子どもが幼児の時にこの本を読んでいれば良かった…

  • ゲームをしていて思う通りにいかない場合、プレイヤーは壁を殴ったり、時にはゲーム機を壊したりする。でも『宝島』のような本を読んでいて、意に反する展開になったとしても、本を投げたりはしない…なぜか?という問いにハッとさせられた。

    なぜかと言うと①作者に対する信頼感②物語を一段上から見ている、からなんだそうだ。メタ認知力のトレーニングになっている。

  • 「読書は本当に大切か」という問題提起に筆者が向き合った一つの答え。

    「いい本」とは、「ちゃんと読みこなせば、まんがよりもアニメよりもゲームよりもおもしろい」もので「人間や世界について基本的に前向きの姿勢を持つもの」とし、
    「読む」精神活動にて①書き言葉レベルの言葉を使う力 ②想像力 ③全体を見渡して論理的に考える力を育み、思春期を支え、大人になる手助けをする。

    「なんでもいいからたくさん」という指導、「名作を」という強要。
    藤原和博氏の「本を読む人だけが手にするもの」にも指摘あったように、「本の世界に自分自身を投影できるかどうか」が大切なので
    その年頃にあった本を息子たちと一緒に手にして読んでいければと思う。

    内容は非常に深く賛同できるのだが、根拠となる記述が弱いのが残念。

  • 本書は本の解説ではなく、本を読むことに関する本である。

    なぜ読書が大切なのか、子どもに絵本から児童書までをどのように読ませればよいか、そして時代は本を読まなくてもやっていけたひと昔前からデジタル化の進む現代かけてどう変化してきたのか、について丁寧に温かみのある文章で説明してくれる。

    (特に児童の)読書について、この本ほど親身に教えてくれる本は他にない。絵本についても詳しくなれる。

    子どもがいて本とどう関わらせていけばいいかわからない、という方に特におすすめの一冊。

  • ◆きっかけ
    インスタpolkadot_andさんの記事 2017/3/29

  • memo
    「書き言葉レベルの言葉を身につけることが重要なのは、それがものを考える道具になるからでもあります」(p142)
    「読書はメタ認知能力を育てる上で、大きな助けになっているのではないでしょうか。なぜなら、物語を読むということは、主人公や語り手など、自分以外の人間の意識に入りこみつつ、同時にそれを一段上から観察する作業だからです...(中略)...メタ認知能力が大きく花開くのは10歳前後のことであるにしても、それ以前から読書によってその基礎が育っていれば、ずっとうまくいきそうです」(p154-155)

  •  読書がいいということはよく知られていますが、どうしていいのかということは、あまり説明されていない気がします。そういう疑問に、ずばっと答えてくれています。私も息子と娘に本を読んであげなければ…そう思わせてくれた1冊でした。子育て中のお父さん、お母さんにお薦めです。

  • 【読むきっかけ】
    読書はした方が良いということをなんとなく感じていたが、なぜ必要なのかということについて自分の中で明確に答えを持っていなかったため。ヒントになればと思い、手に取った。

    【本を読んで感じた自分の認識】
    著者は大学教授。著者は、本を読まないことは普通のことと学生は思っており、それを嘆かわしいと思っていた。そういった学生が教育の場に就職したとしたら、その子供たちは読書をしないのではないかと危機感を覚えた。また、世間でも子供には読書をさせた方が良いと勧める一方で、なぜかということに答えられる人は少ないのではないかと思い、当本を作成。
    以下要点
    ・昔は大人が今よりもっと身近にいて心豊かな大人の知恵や知識を物語等を通して密接なコミュニケーションのもと子供に教えられていたことから、子供はバランスのとれた教養を得ることができた。

    ・大人と密接なコミュニケーション取ることが子供には重要影響を与え、本でも同様な影響を与えられると思われる。

    ・テレビ等の映像による知識は情報過多で一方通行のやりとり。幼児時代にそればかり見ていると、生きるのに必要なシナプスの形成がバランスが悪くなり、どのような悪影響が出るか分からない。

    ・幼児期初めの絵本は読書へステップを踏むとともに、大人とコミュニケーションをとる道具の一つとしても重要。この際、絵本は絵がシンプルでストーリーが単純だがしっかりしたものが良い。絵が派手すぎると情報過多で絵に気をとられ、文章の理解に気が向かなくなる。

    ・文章を読めるからといって本を読めるわけではない。本を読めるようにするには、良い本を大人が選んで本の読み方を学べるようにすべき。絵が派手すぎるもの、シリーズもの、原作をダイジェスト版にしたものはやはり同様に回避すべき。

    ・子供にとって良い本は、ある程度読みごたえがあって、読む力を育ててくれるもの、ちゃんと読みこなせばゲーム、アニメよりも面白いもの、世界に対して前向きな姿勢なものが良い。

    ・読書力は、書き言葉レベルの言葉を使う力、その場にないもののイメージを思い浮かべる力、全体を見渡して論理的に考える力のこと。

    ・読書はメタ認知能力の発達にも良い影響を与えると考えられる。

    ・想像力を育てるために、細かな絵ではなく、想像膨らませる余地のある挿し絵がある本が児童書には望ましい。(物語が良いの前提)

  • 個人的にはたしかにそうだなと思う部分もあり、今後の気づきにはなったけれど、「お母さんを追いつめる本」にも思えた。

  • 1階閲覧室 019.2||ワ||2

  • 子どもたちに読書がなぜ必要かをひもといていく本
    多様化する社会に対応するために、読書で培われる自尊心が逆境にさらされたときも自分を助けてくれる、本が視野を広げるだけでなく時空を越えた人間理解を可能にしてくれる
    などとてもわかりやすく書いている

  • 自分の中で、電子メディアと活字、本の関係をうまく整理するのに非常に腑に落ちた。
    子どもへ伝えるメッセージが散りばめられており、ひとつの参考となった

  • 勉強用。ためになります。

  • 絵本を読むことがこどもの成長にどう影響するか、どういう本がこどもたちに相応しいか、絵本と映像メディアとの比較などなど。読むことによって『読む力』が育つ本が大事で、それは絵本から本へ受け継がれる。本を読むことで想像力が身に付き、その後の生きる力になる。

  • 児童サービス論の参考図書として借りたもの。参考図書は流し読みすることが多いのだけど、本書は子どもと本の関わりについて大変温かみのある目線で述べられていて、自身の家族との関わり方についても考えさせられた。また子どもに必要と思われる物語の本質について述べられていることが、参考になった。勉強をきっかけによい本に出会えたと思う。

  • 言っていることは、まぁ、そうなんだけど・・・。
    その主張の根拠が結局筆者の経験談に終始してしまっていて、強い説得力がない。
    一般的にいわれている読書のよい点、テレビなどの映像メディアの悪い点をまとめた本、と考えるならいいかもしれない。

  • 読書が好きと最近思うようになり、子どもにも読書が好きになってほしいと思い、絵本とかを読むも、あまり興味をもってもらえず。。

    自分にとってと読書はなぜよいのか、改めて考えるきっかけになった。
    子どもの読む力を育てるにはわかりやすい絵本ではだめ、絵を見るだけの絵本では読む力は育たないなど、目から鱗だった。

    読む力は、想像力と思考力を磨く。
    •ものを考えるとき、心の中で言葉を使う。その言葉の役にも立つ。
    •メタ認知能力(自分の頭の中で進行していることを一段上から観察し、制御する力)を育てる
    •時空を超えた人間理解ができる
    •自分が生きている社会がいかに支えられているかわかる

    子どもには絵本だけじゃなく、読み聞かせを続けていきたい。
    私自身はもっと読書を楽しみたい。

  • 「子どもが本を読むことの大切さは誰もが口にするが、つきつめて考えると、それはなぜなのか、心底から納得できる答えを得るのは案外むずかしい。長年、大学生を教え、「子どもの本の会」を主宰してきた著者が、このテーマに真正面から取り組み、たどりついた成果を、講演のようなやわらかい語り口で説く。」

  • ・本を選ぶときに
    「作者への信頼感が持てる」ことと
    「距離を置いて外からながめながらも、登場人物と一体になれる」ということは、
    児童文学作品の質を見分ける時に、大切なポイントとなる

    ・しばらく時間をあけてからまた読みたいと思いました

  • 三葛館一般 019.2||WA

    和医大図書館ではココ→http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=53989

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著者プロフィール

脇明子

「2018年 『ねこのオーランドー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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