ヨーロッパ・コーリング――地べたからのポリティカル・レポート

  • 岩波書店
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感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000023993

感想・レビュー・書評

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  • バカ売れ中の「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」は瑞々しい少年の目を通じて見たブロークンブリテンの一端を垣間見せてくれる名著だと思います。売れるのも納得。
    しかし本来のブレイディみかこさんは、パンキッシュで歯切れのいい文章と鋭い舌鋒が特徴です。「ぼくは~」はノリのいいお母さん然としている為、理想の母親としてこれからメディアの登場する可能性が高いと思います。
    昔のキレキレの西原理恵子が懐かしい僕としては、みかこさんには棘をまだまだ残して頂きたい。
    この本はその鋭い舌鋒で英国を料理しています。まさにリズムよく畳み掛けるような文章とインテリジェンス。借り物ではない自分言葉で語る力強さが頼もしい。是非日本の事もザクザク書いて頂きたいです。
    英国というと先進国な上にロックを産みだした国で、歴史に名だたるバンドはみんな英国。ブリティッシュロックという響きには僕ら世代の脳髄を痺れさせる何かがあります。
    そんなロックで社会に風穴を開けてきたアンダークラスは、完全に疲弊して新たなヒップな文化を産みだすには全てを失い過ぎたようです。これは日本の未来の姿なのではないかなと思いました。

  • 英国在住で保育士でもある著者の、2014~15年の英国を中心としたヨーロッパの政治についての評論。
    とにかく情報収集の範囲が広く、かつ観察眼のすごい人だ、という印象。
    評論なので、じゃあ英国やEUの政治はどうすべき、という著者の意見が記されていないのが残念。
    ここまで深い洞察のできる人であれば、よりよい英国、EUにするための処方箋が書けるのでは、という期待が読んでいてものすごく膨らんだ。
    もっと言ってしまえば、日本の政治についても(特に外交問題)彼女の評論をぜひ読んでみたい。

  • イギリス在住の著者が、欧州政治の現状(2014~2016年)について書いたエッセイ。初出はYahoo!ニュースに掲載。
    イギリスの中間以下の層は緊縮財政とグローバリズムで疲弊している。その状況を打開してくれるのではないかという期待から、SNP(スコットランド国民党)のスタージョン、イギリス労働党のコービン、スペイン・ポデモス党のイグレシアス等、新しいリーダーに期待が集まった。ちなみにSNPはナショナリズムを思わせる党名でありながら思想としては非常にリベラルなのだそうだ。右と左ではなく、上と下の対立が起こっている。
    たまたま同時に読んだこの本[ https://booklog.jp/item/1/4121024109 ]と通ずる点がいくつかある。「ポピュリズム」で指摘されていた、伝統的な野党が信頼されていないために庶民の声をくみ上げてくれそうな政治家に支持が集まるという構造が、本書のあちこちで後ろに透けて見える。
    また「ポピュリズム」で指摘された、リベラル的価値観がかえってムスリムへの拒否感につながるという話は、本書のハラル肉への抵抗感(p11)とも通じる。映画・演劇界がエリートばかりになり、下層階級にとって閉ざされたものとなっているという本書の指摘(p89)は、「ポピュリズム」でのフランデレン文化批判にも通じる。

    エッセイだし、文体にパンチが利いているから、政治に疎い自分にもとっつきやすく分かりやすい。反面、単純化・短絡化されている部分もあるのだろうと思う。

  • やっぱりみかこさん面白い。

    新聞記事の考察があるけど、いろんな角度から意見ぶつけて最後は秀逸な批判で終わるのが好き。
    もう少し私にイギリス国内の知識があったら、読みやすかったかもしれない。

  • 今や超売れっ子感のある著者なので、図書館も予約待ち。
    先に「子どもたちの階級闘争」が届いたので、そっちを先に読んだのだが、正直に言って、ご自身の体験でない部分(伝聞や新聞などで読んだ部分)についての意見は、やや「短絡的」という印象を受けた。
    論拠などが素人っぽいというか、にわかっぽいというか、左フィルターが強力にかかっている、と感じたので、この本も、そのあたりを警戒しつつ読み始めた。

    でも、「子どもたちの階級闘争」と比べると、こっちはとっちらかった部分がずっと減って、スッキリしており、良かった。(出版年はこっちが先みたいだけど・・・)

    1章は、うーん?と思う部分も多少はあったが、2章も含めて、著者自身の意見はほとんどなく、ほぼデイリー・メイルとガーディアンの記事ウォッチングに終始している。ふだんそういうものは読まないので、おもしろかった。
    どの執筆者たちもはっきりクリアに自分の立場を表明していて感心した。立場をクリアに表明、って当たり前に思えるけど、でも日本の新聞を読んでいると、「ん? 結局この人、どっち?」って思うことが多いから。何も断定せず、あいまいなままに言えちゃう日本語の特性のせいでもあると思うけど・・・
    とにかくニコラ・スタージョンが抜群に頭が切れる、という印象。すごいなぁ。
    日本でスコットランドの独立をめぐる投票を見ていて、最初はバカげた話と思っていたらどんどんリアリティを増していってビックリしたのを覚えているが、その裏にはこの人の力があったのか、と納得した。

    で、読んでいて、熱いだけにやや短絡的な著者の意見が変に入ってないから良いわ~、でも、これ、ただの新聞記事ピックアップだよなぁ、これで「地べたからの政治レポート」ってよく言えるなぁ、そもそも日本語でこれを書く意味はなんなんだろう、なんて意地の悪いことを思っていたら、3章に入るとスタイルが変わり、日本の事情もからめた著者ならではの「政治レポート」になっていて、とてもおもしろかった! 
    特に、ブログ読者の「『一九四五年のスピリット』よりも『薔薇』のほうが日本人には難しいと思います」っていう意見! びっくりした。確かに。
    デモや平和憲法をめぐる考え方への違和感についても、日ごろのモヤモヤが言葉にされた感じでスッキリ。
    「弱者が見えないものにされて、その『消す作業』が誰の犯罪にもされていない」という意見もとても考えさせられる。
    「経済難民は最も重大な世界の変化を示している」という話も、なるほど、と興味深かった。(すべての経済難民をひとまとめすることはできないとは思うけど)
    この3章のおもしろさは、やっぱり1章、2章のニュースピックアップがあったからこそよね、とも思う。

    私もどっちかって言うと左寄りだけど、この人の本を読んでいると、「ああ、右な人はこういう目で左の人を見ているのか~」と分かって新鮮だった。ご主人から「お前はレフト気味だから」と言われた、と著書「ぼくはイエローでホワイトで・・・」に書いてあったけど、いや、レフト気味どころじゃないだろう、ガチだよ、と思う。
    まあ、この著者によると、今はもう左や右じゃない、ってことですが・・・

  • スコットランド独立運動とはこういうことだったのね!とようやく分かった。ニュースをちらちら読むだけでは全く分からなかった背景を丁寧に説明してくれている。これはマネー対スピリットだと一般の人間にも分かるように解説してくれている誌面、他にあっただろうか?
    海外在住ブロガーは数多いれど、これほど充実したポリティカルレポートを読めるのはありがたい。

    それにしても日本もアメリカもイギリスも、格差が進みすぎて「先進国」とは何ぞやという気持ち。

  • 『米と薔薇』の章が良かった。
    「パンと薔薇」の“薔薇”って、苦境や貧困に咲く花のシンボルで「ディグニティ」(尊厳)を表してたのか。もっと華やかなことを表してるのかと思ってた。(“パン”以外の部分の例えば「娯楽」とか。それって「パンとサーカス」のほうか…。)
     
    日本って確かに“米”というより“薔薇”のほうで殺す力が強く働いている感じだよなぁ。“米”のほうで切り落ちたり追い詰められるのも、“薔薇”の部分が大きいっていうか。

  • (後で書きます)

  • やっぱりブレイディさんの本は面白い。これを留学するときに読みたかったと心から思う。

  • イギリスの貧困事情がリアルに描かれている
    地べたからの報告が日本も他人ごとではない事態になっている
    お笑い枠のような存在だったジェレミーコービンの飛躍も今の混沌とするヨーロッパを象徴している

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著者プロフィール

ブレイディ みかこ:ライター、コラムニスト。1965年福岡市生まれ。音楽好きが高じて渡英、96年からブライトン在住。著書に『花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION』『ジンセイハ、オンガクデアル──LIFE IS MUSIC』『オンガクハ、セイジデアル──MUSIC IS POLITICS』(ちくま文庫)、『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)、『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)、『他者の靴を履く』(文藝春秋)、『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ』(岩波現代文庫)、『両手にトカレフ』(ポプラ社)、『リスペクト――R・E・S・P・E・C・T』(筑摩書房)など多数。

「2023年 『ワイルドサイドをほっつき歩け』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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