- Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000024501
作品紹介・あらすじ
歴史の記憶をわけた指導者ふたり、高名なるフランスの枢機卿と今や忘れられたスペインの公伯爵の対決は、覇権への道をかけて全ヨーロッパを揺がした。新大陸経済の影響と宗教戦争の渦中で、両国が孕んだ「近代国家」の生みの苦しみ。この比較史は、17世紀の抗争を「生きられた昨日」として鮮やかに描く。『旧世界と新世界』『スペイン帝国の興亡』で名筆を揮ったエリオットの、語り口は本書にいよいよ冴え、フランス・スペインの今日をもまた読者の眼前に浮かばせる。
感想・レビュー・書評
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17世紀前半、フランスとスペインで首席大臣として国政に携わったリシュリューとオリバーレスを比較検討する研究。おおよそ三十年戦争に重なる時代に生きた二人が、どのような価値観を抱いて政治に携わり、いかなる成功を収め、いかなる失敗を余儀なくされたかが綿密に描き出されている。リシュリューをフランス絶対王政確立の功労者、オリバーレスをスペイン帝国没落の責任者と単純化して捉えがちな従前の研究を批判しつつ、寵臣として出世した二人の地位がいかに国王に依存していたか、二人が「名声」という古典古代以来の伝統的観念に依拠しつつ対外戦争や財政改革に乗り出したこと、二人とも国内の伝統的諸勢力と闘争し、二人共いつ失脚してもおかしくない状況にあった(そしてオリバーレスは実際失脚した)ことなど、いわゆる国家理性論の時代と捉えられてきた時期に政策担当者がいかなる考えを持ち、それをどのように実行したか、17世紀のフランスとスペインの権力機構がどう構築されていたかが非常に分かりやすく記述されている。
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