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本 ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784000025768
感想・レビュー・書評
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(1991.05.22読了)(1991.03.28購入)
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六ヶ所村再処理工場のアクティブ稼働をめぐる人々の姿を描いたドキュメンタリー映画「六ヶ所村ラプソディー」の前史ともいえる鎌田慧さんによるノンフィクション。残念ながら、絶版のようで、入手は難しいようだ。
六ヶ所村は青森県の下北半島の東側に位置する。ここは隣接する三沢市などの人たちからも「鳥も通わぬ村」「青森の満州」などと言われているという。そんな六ヶ所村がいかにして核施設が集中することになったのかを描いていく。
この村は元々、土壌も豊かではなく、満州から帰国した人々が開拓民としてやってきた。しかし、人口は伸びようもない。70年の村の歳入を見ると、村税はわずか5%ほど。低所得者層が約半分を占める。
そんな村に工業化の話が持ち上がる。貧しい人々は開発の話に飛びついた。工業化されれば、出稼ぎに行くこともない。安定した収入が望める。
しかし、やってきたのは石油の備蓄基地だった。しかも、その詳細は明らかにされない。県知事は県民のための開発というが、県は六ヶ所村になんの説明もない。
著者は「この開発の本質を物語っている。計画が明らかにされないのを理由に『計画発表を待ってから態度を決める』とするのは日和見というものであって、開発の俎に載せられてなお無抵抗と同じである。発表されたときは、事態は半ば終わっていよう」と書く。
寺下村長は石油の備蓄基地建設に反対の立場を取った。再選をかけた73年の選挙は惜敗。79票差だった。この選挙では「銭」が飛び交った、という。
上巻は原子力施設が来る前までの話。馴染みのない固有名詞が多いので、登場人物を覚えるのが大変だが、貴重な記録である。
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